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更新:10月22日 10:03PC&デジタルカメラ:最新ニュース

失敗に学んだ「Windows7」 前評判の高さを持続できるか

 マイクロソフトの新OS「Windows 7」が、22日発売となった。マイクロソフト日本法人の樋口泰行社長が「Windows 7は、過去の反省をもとに、多くのお客様の声を聞き、学んで開発したOS」と語るように、既存OSである「Windows Vista(ビスタ)」での「失敗」をもとに改良を加えたOSだといっていい。(大河原克行)

■発売直後につまづいたビスタ

 07年1月に発売されたビスタは、数多くの新機能を搭載したOSとして「Windows XP」以来6年ぶりに市場に投入された。しかし発売直後から、アップルの音楽管理ソフト「iTunes for Windows」やアドビシステムズのPDF閲覧ソフト「Acrobat Reader」といった主要ソフトウエアが動作しない互換性の問題が明らかになる。結局、それが解決したあともマイナスイメージは残り、長い期間に渡ってユーザーに敬遠される結果を招いた。

 また、ビスタを使うにはパソコンに高いスペックが要求され、そうでないパソコンでは動作が遅くなるという点も、評価を落とすことにつながった。一方で、07〜08年から急速に普及した実売5万円前後の低価格ミニノートパソコンは、低いスペックのパソコンでも快適に動作するXPを採用。ビスタではなく一世代前の旧OSが逆に高い評価を集めるという現象まで起きた。

 マイクロソフトが調査した現時点での国内個人市場におけるパソコンの利用環境を見ても、ビスタ搭載パソコンは1060万台と、個人市場全体の3530万台の30%にしか達していない。樋口社長が語る「反省」とは、こうしたビスタの普及の遅れを指したものだといえる。

マイクロソフト日本法人の樋口泰行社長

■パソコンの性能向上を求めない初のOS

「過去のOSが堅牢性や信頼性、セキュリティーという点で強化を図ったものだとすれば、Windows 7は、速さ、使いやすさ、互換性といった点に配慮して開発したOS。3年前のパソコンでも、Windows 7は快適に動作する」と樋口社長は語る。パソコンのスペック向上を要求しないOSはマイクロソフトとしては初めてであり、Windows 7の目的がOSに求められる基本的な機能の向上にあることを示している。

 互換性の面でも改善が図られている。マイクロソフトの中川哲コマーシャルWindows本部長によると、10月19日時点で周辺機器は50社4141製品、ソフトウエアは163社1622製品がWindows 7で動作するという。「周辺機器およびソフトメーカーの80%以上、つまり現在利用されているほとんどの周辺機器とソフトウエアはWindows 7対応だといっていい。これは、ビスタ発売時の対応製品数に比べて、2.5倍の規模に達する」と強調する。

 この互換性の高さには理由がある。ビスタのソフトウエアとしてのバージョン番号が「6.0」なのに対し、Windows 7はバージョン6.1であり、内部的にはマイナーバージョンアップといえる。これを対外的には7(セブン)という製品名にし、メジャーバージョンアップ製品と位置づけた。言い方を変えれば、ビスタの発売後から積み重ねてきた互換性の改善を、そのまま維持しやすい世代の製品なのだ。

 こうした課題の解決は出足のよさにもつながっている。日本で9月25日に開始したパッケージの予約販売は、「1カ月間でビスタの発売からの2カ月分に当たる販売本数を売り上げた」(樋口社長)という。

■「快適さを口コミで広げる」

 マイクロソフトのマーケティング手法も、これまでのOSからは大きく変化した。

 かつての新OSで徹底的に訴求したのは新機能であり、ビスタ発売の際に使用されたキャッチフレーズも「新世代プレミアム」と、やはり新機能によって実現する新たな利用環境をアピールするものだった。

 だが、Windows 7のキャッチフレーズは、「あなたとパソコンに、シンプルな毎日を」。ウェブサイト(http://www.microsoft.com/japan/windows/possibilities/feature/whytoupgradew7.aspx)ではさらにキーワードとして3つを挙げているが、1番目はわかりやすい操作を示す「できること、簡単に」、2番目は快適な動作と信頼性を示す「やりたいこと、軽快に」。そして最後の「新しいこと、目の前に」で初めて、Windwos 7によって実現するタッチ機能やセンサー機能を紹介している。

 藤本恭史コンシューマーWidnows本部長は「まずは市場全体の12%を占めるハイエンドユーザーにWindows 7は快適に利用できるという良さを理解してもらい、そこから口コミで一般ユーザーに評判を伝搬してもらう」という普及戦略を描く。Windows 7で新しいことを始めようという提案につなげていくのは半年後以降という目算を立てている。

 ビスタでは、ハイエンドユーザーから互換性問題が指摘されたことで発売直後からつまづきをみせた。だがWindows 7では、この経験を逆手にとって良い評判を口から口へと伝える戦略を打ち出している。そのために、まずは新機能ではなく快適に動作して互換性にも問題がない点に焦点を絞ったわけだ。

 実際、マイクロソフトはWindows 7発売までに数々のプロモーションを展開してきたが、新機能を訴求することはほとんどなかった。

マイクロソフトによる市場見通しのプレゼンテーション

■法人市場では163社が早期採用を表明

 Windows 7の普及戦略において、もう1つ重要なのは企業への導入である。

 企業向けのボリュームライセンスは、10月22日の一般販売に先立ち、9月1日から販売を開始している。マイクロソフトの発表によると、Windows 7を今後半年以内に導入するとした早期採用表明企業は163社で、ビスタ発売時の18社に比べて一ケタ多い企業数となっている。

 マイクロソフトの予測では10年末までに日本国内で1000万本のWindows 7が導入され、国内の大企業の60%は3年以内にWindows 7の導入展開を図るという。法人向けでは、セキュリティーと制御の強化、パソコン管理の合理化などの利点を挙げ、「IT管理者と開発者の力を最大限引き出すことができるOS」(中川本部長)とアピールしている。

 国内企業では約3451万台のパソコンが利用されている。マイクロソフトはこのうち1820万台はそのままWindows 7に移行が可能と見ており、まずはこれらの市場が移行のターゲットとなってくるだろう。

■XP利用企業の動向を左右するカギは

 だが、早期採用表明企業の163社を見ると、その多くはビスタを導入済みか、ビスタ導入に向けた検証を行っていた企業で占められている。移行のハードルが低いこれらの企業は、操作環境にほとんど変化がなく、効率性や生産性、コストメリットなどを享受しやすい立場にあるといえる。

 その点では、XP搭載パソコンを活用している企業への移行提案が最大の課題だが、そちらはむしろこれからだといえる。

 マイクロソフト日本法人の加治佐俊一CTO(最高技術責任者)は、「企業が新OSに移行するには検証の時間が必要で、長期戦となるのは明らか」と前置きしつつ、「企業にWindows 7導入を前向きに検討してもらう前提として、まずは個人市場において高い評価を得る必要がある。個人市場で発売後の評価がどうなるかが、そのまま企業におけるWindows 7の導入機運に影響するだろう」とみている。

 そうであれば、22日に始まったWindows 7の一般販売の成り行きが法人市場の動向まで大きく左右するのは間違いない。

 ビスタも発売前までは評判がよかった。それはWindows 7も同じだ。年末にかけてWindows 7の評価がどうなるかによって、企業への導入速度は大きく変わることになる。

[2009年10月22日]

-筆者紹介-

大河原 克行(おおかわら かつゆき)

フリーランスジャーナリスト

略歴

 1965年生まれ。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、約20年にわたって、IT産業、デジタル家電市場を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、ビジネス誌、パソコン誌、ウェブ媒体などで活躍。日経トレンディネットの「大河原克行のこれは“にゅーす”です」の連載をはじめ、 nikkeiBPnetの「ビジネス・フォアフロント」(以上、日経BP社)、PCWatchの「大河原克行のパソコン業界東奔西走」(ImpressWatch)などの連載を担当。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社)などがある。東京都出身

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