更新:2005年6月1日 11:05PC&デジタルカメラ:連載・コラム
デジカメ新製品レビュー【新製品レビュー】キヤノン「PowerShot S2 IS」――光学12倍ズーム搭載のデジタルカメラ
キヤノンは、手ぶれ補正機能付きの光学12倍ズームレンズを搭載した有効500万画素のデジタルカメラ「PowerShot(パワーショット) S2 IS」を6月2日に発売する。04年3月に発売した320万画素の光学10倍モデル「同 S1 IS」の後継となる。オープン価格だが、店頭実勢では6万円前後となる見込み。
■焦点距離432ミリまでの光学12倍ズーム 運動会や動物園などで遠くの被写体を大写しするには10倍を超えるズーム機能が必要だ。「S2 IS」の35ミリフィルムカメラ換算の焦点距離は36―432ミリの光学12倍で、従来機「S1 IS」が38―380ミリだったのとくらべると、ズーム機能が強化されている。 デジタル一眼レフと異なり、レンズ交換なしに広角から超望遠までの焦点距離をカバーする使い勝手の良さが特徴だ。例えば、デジタル一眼レフ「EOS Kiss Digital N」で36―432ミリをカバーするには、標準レンズのほか70―300ミリなどの望遠ズームが必要になってしまう。 小型デジタルカメラはズーム倍率が3倍程度の機種が多い。そのため、被写体まで距離があると迫力のある写真を撮るのは難しい。そのような点に物足りなさを感じているなら、高倍率ズーム機への乗り換えをお勧めしたい。旅行や学校行事でオールマイティーな1台として活躍してくれるはずだ。
■夏ボーナス商戦には光学12倍ズーム機が勢揃い 今夏のボーナス商戦には各社から光学12倍ズーム機が出揃った。「S2 IS」のライバルとなるのは、松下電器産業「LUMIX(ルミックス) DMC-FZ5」「同 DMC-FZ20」、コニカミノルタフォトイメージング「DiMAGE(ディマージュ) Z5」、ソニーの「Cyber-shot(サイバーショット) DSC-H1」の4機種だ。 12倍化で先行した松下とコニカミノルタを追い、キヤノンとソニーも光学12倍の新機種を投入。高倍率ズーム機は、ユーザーが特にスペックを重視する傾向があるため、光学12倍を下回ると販売上不利になるという計算もあるようだ。 競合する「FZ5」「FZ20」「H1」の焦点距離は36―432ミリで、「S2 IS」と全く変わらない。「Z5」の焦点距離は35―420ミリで、わずかだが異なっている。 レンズの開放絞り値は、「S2 IS」がF2.7―F3.5であるのに対し、「FZ5」がF2.8―F3.3、「FZ20」が全域F2.8、「Z5」がF2.8―F4.5、「H1」がF2.8―F3.7となっている。「S2 IS」は望遠側でもまずまずの明るさ。シャッター速度が極端には遅くならない。
■ズーム速度と静粛性が売り物 「S2 IS」の最大の特徴は、ズーム動作の速さと静粛性だ。超音波モーターの採用による正確かつ高速なレンズ駆動が売り物で、広角端から望遠端まで約1秒でズーム動作が完了する。 サッカーの試合を撮る時は広角側でフィールド全体を撮ったり、一気にズームして選手を大きく撮ったり、素早く構図を変えたい。そういった撮影をする時に、シャッターチャンスを逃してしまう失敗を減らせる。 ズームレバーを曲げる角度を浅くすると、ズーム速度はゆっくりになり、構図を微調整しやすくなる。ズーム速度の調整には多少の慣れが必要だ。
■動画は撮影中のズーム操作が可能 「S2 IS」は、動画を撮影している最中もズーム操作が可能。動画中に画角を変えたい場合も、撮影を止める必要がない。最大画面サイズはVGA(640×480ピクセル)で、秒30フレームの高画質撮影に対応している。 例えば子供の発表会を撮影する時など、舞台全体も撮りたいが、我が子も大きく写したいことがある。松下電器「FZ20」「FZ5」のように、動画中のズーム操作ができない機種では、いったん撮影を中断する必要があり、何かと不便だ。 撮影中のズーム操作は、静粛性に優れた超音波モーターを採用した「S2 IS」ならではの特徴といえる。レンズの動作音が大きく、その音が記録されてしまう機種では、それが理由で動画撮影中のズームを行えない仕様にしているモデルが多かったからだ。 静かな室内ではズーム操作時のレンズの動く音を多少拾ってしまうが、屋外や人の話し声がする場所なら、他の音にまぎれてしまうレベルだ。むしろ気になったのは、ズーム速度が比較的早い点。動画ではもう少しゆっくりズームするモードもある方がよいのではないかと感じた。 動画の1回の撮影での最大記録容量は1GBまで。1GBのカードを使うと、最大画質で約8分間の動画を連続して撮影できる。圧縮率の設定は変えられないので、長時間連続して撮りたい場合は、サイズをQVGA(320×240ピクセル)にするか、画質を秒15フレームに落とすことになる。 他社機では、コニカミノルタ「Z5」がVGA対応で、動画中のズーム操作も可能で肩を並べている。ソニー「H1」は動画の最大サイズがVGAだが、動画中のズーム操作ができない。松下電器「FZ20」、同「FZ5」は最大サイズがQVGA(320×240ピクセル)と小さい。
■動画専用の撮影ボタン 「S2 IS」では、動画と写真の垣根が一段と低くなった。「S1 IS」と同様、シャッターボタンとは別に動画専用の撮影ボタンが設けられているが、使い勝手が大きく改善されたのである。モードダイヤルの位置にかかわらず、動画ボタンを押すだけで動画の撮影を始められる。 「S1 IS」はせっかく動画専用ボタンがあるのに、まずモードダイヤルを動画に切り替え、それから動画ボタンを押す必要があり、操作が煩雑だった。 さらに動画の撮影中に、この一瞬だけは写真で残したいと思った瞬間にシャッターを押せば、静止画を記録することもできる。動画中にシャッターを切ると、映像は一瞬ブラックアウトし、シャッター音も録音される。 これまでは動画を、あくまでも'おまけ的な機能'と位置づけるデジタルカメラが少なくなかったが、「S2 IS」のような本格的な動画機能を備えたカメラでは、動画ボタンとシャッターボタンを2つ用意することが必要不可欠となっていくのだろう。 他社機では、三洋電機の「DMX-C5」やソニーの「DSC-M1」のように、動画機能を前面に打ち出したモデルは、静止画ボタンと動画ボタンが独立していて、モード切り替えの必要がない。
■AF枠を移動できるのが便利 オートフォーカスの測距点となるAF枠を画面中央だけでなく、上下左右にスライドできる「アクティブフレームコントロール」はなかなか便利だ。構図上のピントを合わせたい場所にAF枠を移動すれば、同じ構図で続けて何枚も撮影できる。 画面中央でピントを合わせてからカメラの向きを変えるという方法とくらべ、撮影のたびにフォーカスロックを繰り返す必要がない。夜景撮影のようにカメラを三脚に固定した場合も、AF枠を移動できるのでカメラを動かさずに済むのだ。
■液晶モニターが可動式 従来機「S1 IS」で1.5型だった液晶モニターは1.8型になったが、コンパクトタイプのデジタルカメラの液晶モニターが2.5型となっているのとくらべると相変わらず小さい。しかし、角度を自由に調整できる構造は、他社の12倍ズーム機を1歩リードしている。 例えばテーマパークで人垣の後ろからキャラクターショーの様子を撮影したい時、手を伸ばしてカメラ位置を高くすることがある。そんな時でも、液晶モニターを下に向けられるので、構図を確認しながら撮影できるのだ。 運動会で父兄席の後ろの方になってしまった場合や、人気のレッサーパンダの展示場所が大混雑している場合など、やむを得ずカメラを前の人の頭より高い位置に上げて撮影することは少なくない。手ぶれしやすい体勢ではあるが、どうあっても撮りたい時に、液晶モニターの角度を変えられるのは心強い。 可動式のモニターは低い位置での撮影にも都合が良い。ペットや花を見上げるような構図で撮影することが可能だ。さらに、モニターの液晶面を内側にして格納することもできる、旅行カバンに入れた時などに誤って液晶面を傷付けてしまうおそれが少ない。 他社機では、ソニー「H1」が2.5型、コニカミノルタ「Z5」が2.0型、松下電器「FZ20」が2.0型、同「FZ5」が1.8型となっているが、いずれも液晶モニターの向きを変えることはできない。
■記録媒体をSDメモリーカードに変更 従来機「S1 IS」は、記録媒体がコンパクトフラッシュカード(CF)だったが、「S2 IS」はSDメモリーカード(SD)に変更された。かつては、CFの方が容量当たり単価が安かったが、現在はSDとの価格差が縮まりつつある。 SDは容量2GBの製品も発売されてはいるが、店頭では1GBタイプまでが主流だ。一方、CFは1GB超の2GB、4GB、6GBといった製品があり、動画や大量撮影に向いている。 ■被写体によってはピントが合いにくいことも 高倍率ズーム機でもうひとつ重要なポイントはオートフォーカスの速度だ。ひと昔前のデジタルカメラは特に望遠側でピントを合わせるのに時間がかかったものだが、「S2 IS」はAF補助光もあるため、それなりに短時間でピントが決まる。 ただ、動物のように毛の色が単調でコントラストの低い被写体やAF補助光が届かない距離の被写体では、ピント合わせがスムーズに決まらないこともあった。通常はピントが合うとAF枠が緑色になるが、ピントが合いにくいことを示す黄色になってしまう。 AF枠が黄色い場合でもそのまま撮影することはできるが、ピントを外す確率が高いので、シャッターボタンを半押しし直すことになる。この点は煩わしく感じた。
■手ぶれ補正機能は効果的だが過信は禁物 一般にシャッター速度が焦点距離分の1秒より遅くなると手ぶれが発生する確率が高まる。例えば、焦点距離が300ミリならば、シャッター速度が300分の1秒より早い方が良い。「S2 IS」は手ぶれ補正機構を搭載しているので、焦点距離が300ミリの場合、シャッター速度が125分の1秒程度でも、ぶれずに撮影することが可能だった。 ただし過信は禁物だ。やはり高倍率ズーム撮影では手ぶれに気をつける必要がある。手すりや壁に体を預けたり、一脚を活用したり、カメラを持つ手や体全体の揺れを抑える工夫をする方がぶれの少ない写真を撮れるのは言うまでもない。
■スーパーマクロ撮影ではカメラの影に注意が必要 マクロの撮影距離は10センチから50センチまで。スーパーマクロに切り替えれば、広角端で被写体に0センチから10センチの範囲に近づける。ただ、スーパーマクロでは、ズーム位置が広角端に固定されてしまう。10センチ以内に近づくと、被写体にカメラの影が出てしまうので、花の撮影などではマクロを使うことが多かった。 「S2 IS」は、デジタル一眼レフとくらべて撮像素子が小さく、被写界深度(手前と奥でピントが合う範囲)が深い。あまり絞らなくても、被写界深度が深い写真を撮ることは可能だ。逆にレンズのボケを生かした作品を撮りたいなら、やはりデジタル一眼レフとマクロレンズを組み合わせる方が美しいボケを得やすいだろう。
■約1.4秒の高速起動 起動時間は約1.4秒で高倍率ズーム機のわりには早い。ストッパーを押しながらモードレバーを傾けると、電源が入り、撮影可能な状態になる。 他社機では、コニカミノルタの「Z5」が約1.9秒、ソニー「H1」が約2.1秒、松下電器「FZ5」が約3秒、同「FZ20」が約5秒となっている。 普及型デジタル一眼レフであるキヤノン「EOS Kiss Digital N」やニコン「D70s」が約0.2秒で起動するのとくらべると、もたつきは感じるが、特にストレスを感じるほどではなかった。
■感度を上げるとノイズが増える ISO感度の設定は、自動のほか、50、100、200、400の4段階に設定できる。感度400では、画像が相当粗くなるので、画質にこだわるならISO感度200までにとどめた方がよいだろう。 体育館など暗めの室内で動く被写体を撮影する場合、被写体ぶれを防ぐためにISO感度を上げてシャッター速度を稼ぎたいものだが、感度200でぶれないシャッター速度を得るのは難しい。 暗めの場所で望遠撮影をするなら、やはり感度を800に上げても画質劣化が少ない「EOS Kiss Digital」のようなデジタル一眼レフと、望遠レンズを組み合わせる方がよいだろう。
■秒2.4コマで途切れることなく連写できる 連写は、秒1.5コマの通常連写モードと秒2.4コマの高速連写モードがある。松下電器の高速タイプのSDで試してみたところ、最大サイズ(2592×1944ピクセル)で圧縮率が「ファイン」なら、高速連写でもカード容量がいっぱいになるまで途切れることなく撮影することができた。 圧縮率が低く画質が高い「スーパファイン」の場合は、被写体によっても異なるが、およそ十数枚を連写したあたりから、SDへの書き込み待ちが発生し、連写間隔が少し伸びるようになった。 実際のところ、望遠撮影は手ぶれを起こしやすいため、同じ構図で連写して何枚も撮っておく方が、ぶれていないカットを得やすい。 他社機では、松下電器「FZ5」が秒3コマで連続7コマまで、コニカミノルタ「Z5」が秒2.2コマで連続6コマまでとなっている。
■ボディーはかさばらないがずしりと重い サイズは、幅113.0ミリ、高さ78.0ミリ、奥行き75.5ミリで、本体重量が約405gだ。電池4本とSDを含めて約501gになる。体積はそれほどかさばっていないのだがずしりと重く、高密度実装で中身が詰まっている感じだ。 他社機では、松下電器「FZ5」が電池とSDを含めても約326gと軽い。単3電池を4本使うコニカミノルタ「Z5」は約436gとなり、やはり専用充電池モデルの方が、重量的には有利なようだ。 「S1 IS」はストロボは自動でポップアップする方式だったが、「S2 IS」は手動で持ち上げる方式に変わった。手動の方がストロボを光らせるかどうかを自分でコントロールしやすい。
■ニッケル水素充電池の追加購入がおすすめ 電源には単3形電池4本を使う。CIPA(カメラ映像機器工業会)規格の電池寿命(カタログ値)は、アルカリ乾電池の場合は約130枚、ニッケル水素電池の場合は、約550枚だという。 実際に試してみたところ、フラッシュを使わない場合は、松下電器のアルカリ電池で300〜500枚程度、三洋電機のニッケル水素電池「I-C3 Ni-MH 2300」で1500枚〜2000枚程度の撮影が可能だった。ズームやAF補助光を多用すると、電池の消耗が早いようだ。 電池寿命を気にせずに長時間撮影したいなら、アルカリ乾電池を使うのではなく、本体と併せてニッケル水素充電池を購入することをおすすめしたい。キヤノンの充電器セット「CBK4-200」は店頭価格が6000円前後だ。 他社機では、電源にはリチウムイオン充電池を使用した松下電器「FZ5」の電池寿命が約300枚、コニカミノルタ「Z5」がアルカリ電池で約240枚、ソニー「H1」が付属のニッケル水素充電池で約290枚となっている。
■ショートカットボタン 背面のショートカットボタンには、記録画素数、動画記録サイズ/フレームレート、ISO感度、ホワイトバランス、色効果、手ぶれ補正、マイカラー、AEロック、AFロック、ディスプレーオフのいずれか1つのショートカットを割り当てられる。 ホワイトバランスや手ぶれ補正のモードを頻繁に切り替えるユーザーは、最も頻繁に使う機能を登録してしまうと便利だろう。ただ、露出補正やオートブラケットなどもショートカットに割り当てられると、いっそう使いやすくなるのではないかと感じた。
■まとめ ズーム機能を強化した「S2 IS」は、家族向けの1台として幅広く使えるカメラだ。夏休みの旅行や秋の運動会も視野に入れてデジタルカメラを選びたい人には自信を持っておすすめできる。静止画だけでなく、スナップ感覚で撮る動画の楽しみも教えてくれる。 これまで3倍ズーム機を使ってきたユーザーも、買い替えや追加購入を検討するなら、12倍超のズーム機を選んでみてはどうだろうか。今までとは違った画角で撮影できる魅力にとりつかれるはずだ。 [2005年6月1日/IT PLUS] ● 記事一覧
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