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更新:5月26日 13:50モバイル:最新ニュース

ソフトバンクの独走阻止へ音声定額プラン 携帯夏商戦KDDI編

 KDDIが携帯電話の夏商戦モデルとサービスを発表した。注目は新しい料金プラン。ついに24時間音声定額サービスを投入し、ソフトバンクモバイルの独走阻止に動き出した。(石川温のケータイ業界事情)

■午後9時から深夜1時も無料に

 KDDIは25日、月額390円でau相手の通話料金が24時間無料になる「指定通話定額」を8月に開始すると発表した。通話先は3カ所に限定されるものの、ソフトバンクモバイルが対象外としている午後9時から深夜1時を含む24時間で無料を実現する。

 「ユーザーが最も通話したい時間帯を無料にした。この時間帯の平均通話時間は5分で、月に10分以上通話すれば他社よりもお得になる」(高橋誠・取締役執行役員常務コンシューマ商品統括本部長)。

 実際、「指定通話定額」は既存のプランに月額390円のオプションを組み合わせるかたちで加入する。既存のプランにはもともと無料通話分が含まれており、たとえば、プランSSシンプルであれば月額980円で1050円分の無料通話がある。だから、他社宛の通話はこの無料通話分でまかない、よくかける相手がauであれば月額390円で収めるという使い方ができるのだ。

 長電話をしたい若者を中心に、インパクトの大きいサービスに仕上がっている。

■値下げ競争の引き金に?

 ようやくauが重い腰を上げて投入した音声定額プラン。同社幹部によれば「かなり前々から準備していた。価格設定は980円も考えていたが、社長の鶴の一声で390円に決まった」という。

 実は、音声定額導入のきっかけはNTTドコモが4月28日に発表した「パケ・ホーダイの下限490円に値下げ」にあったようだ。

 auとしては、パケット通信プラン「ダブル定額ライト」を他社に対抗して値下げしても、後追いしただけとなりインパクトはない。そこで月額390円の「ダブル定額スーパーライト」を投入するのに加え、前々から密かに準備しておいた「指定通話定額」の発表をぶつけてきたわけだ。

 今後、値下げ競争が再び起こることは十分にあり得るだろう。「定額」がもはや標準になる日も近いかもしれない。

タッチパネル液晶で電子書籍を読みやすくした「biblio(ビブリオ)」(東芝製)

■個性派そろえた夏モデル

 一方、端末のラインアップはどうかというと、かなり個性的なモデルを揃えたといえるだろう。

 東芝製のブックケータイ「biblio」を筆頭に、シャープ製の太陽光発電ケータイ「ソーラーフォン SH002」、同じくシャープ製のスポーツ対応端末「Sportio water beat」、日立製作所製のハイビジョンムービーカムケータイ「Mobile Hi-Vision CAM Wooo」といった具合だ。

 auの得意技ともいえるのが、自社サービスとの連携だ。biblioを投入しつつ、電子書籍サービスを強化し、また「au Smart Sports」というサービスにゴルフやフィットネスを追加しながらSportioの2号機を用意してきた。

 Sportioは昨年、東芝が初号機を発売したが、泣かず飛ばずの状態に陥り、瞬く間に新規一括1円端末と化した。しかし、今回は開発元がシャープとなり、初号機にはなかったワンセグを搭載し、フェリカ、防水にも対応させた。スペック的に他に見劣りしない仕様に生まれ変わっている。

 「2号機を開発していた際、初号機よりも本体サイズが1ミリ大きくなり、小野寺正社長からダメ出しをくらった」(KDDI関係者)というほど、気合いの入ったモデルになっている。

太陽光パネルで充電できる「ソーラーフォン SH002」(シャープ製)

 会見で高橋氏が「うちが名実ともに世界初」と強調したソーラーフォンも、auがかなり先行して開発してきた。先にソフトバンクモバイルに正式発表された背景はいろいろとあったようで、高橋氏もかなりご立腹の様子だった。

 ただ、auが6月上旬に発売するのに対し、ソフトバンクモバイルは8月下旬とかなり先の予定である。発表会で披露した端末も、auはすでに稼働しているのに対し、ソフトバンクモバイルはほとんど「モック」というレベルでしかなかった。

■「計13機種」は現実的な戦略

 今回、auは法人向けモデル「E06SH」、「iida」ブランドの「草間彌生モデル」「misora」などを含めて夏商戦ラインアップを「13機種」と説明している。それでも他社に比べれば少ないが、小野寺社長は「外観を変えただけで1機種と数えても意味がない」と言い切っていた。

 auの端末販売台数は、2007年度の1582万台が2008年度には1081万台と急激に落ち込んでいる。それを考えれば、ラインアップを絞るというのは至極現実的な戦略だろう。複数のKDDI関係者によれば「実際、共通プラットフォームであるKCP+がなければ、いくつかのメーカーは撤退していたかもしれない」と実状を語る。

 導入初期の完成度が低く「au急落の元凶」とも言われたKCP+だが、共通プラットフォームとしての「開発負担の軽減化」という役割は充分に果たしているようだ。

■KCP+の弱点と進化

 ただ、KCP+には「同時進行による開発」が難しいという弱点があり、やはりそれが響いている。

 KCP+では、あるメーカー1社が先行開発したものをその後、全メーカーが共通で利用するという開発の流れになっている。そのため、全メーカーが一斉に新機能を載せる、ということができない。

 例えば、タッチパネルのユーザーインターフェースは、シャープが開発担当になっている。今回Sportio向けに開発したユーザーインターフェースは次期商戦以降、他メーカーで採用されるというわけだ。

 春商戦向けにカシオ計算機がタッチパネルモデルを投入したが、あれはカシオの独自仕様で開発したもので、KCP+の共通仕様にならない。

 今回の夏モデルでは、東芝の「biblio」と「T002」、日立の「Wooo」の外部メモリーがMicroSDだけでなくmicroSDHCにも対応したが、こちらは東芝が開発担当になっている。では、日立はなぜ同時採用できたかといえば、「Woooはハイビジョン録画が売りのため、日立が独自にmicroSDHC対応にした」(KDDI関係者)のだという。今後は東芝が開発した仕様が全メーカーで採用されていくようだ。

 各メーカーが開発を分担することで、KCP+は開発コストを抑えつつ進化を遂げていくが、ラインアップ全体としては新機能の導入に時間がかかってしまう。

■正当進化は秋冬モデル、起死回生なるか

 今回のauの夏商戦のラインアップを俯瞰すると、いずれも個性的ではあるが、万人受けする王道ともいえる機種があまり見当たらない。「今回は際だった路線に振った。正当進化モデルは秋冬モデルになる」(KDDI関係者)という。

 ドコモとソフトバンクモバイルが類似した品ぞろえになるなか、キャリア主導でラインアップを作り込んできたau。音声定額という新たな武器を手に、起死回生を狙っていくことになる。

[2009年5月26日]

-筆者紹介-

石川 温(いしかわ つつむ)

 

略歴

 日経ホーム出版社に入社し、月刊誌「日経Trendy」編集記者に。ケータイ業界を中心にヒット商品、クルマ、ホテルなどを担当。2003年にジャーナリストとして独立した後、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広くケータイに関する記事を執筆。テレビなどにも多数出演。近著に「グーグルvsアップル ケータイ世界大戦 AndroidとiPhoneはどこまで常識を破壊するのか」(技術評論社)、「ケータイ業界52人が語る「戦略」の裏側」(毎日コミュニケーションズ)がある。

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