更新:9月20日 12:40モバイル:最新ニュース
「2枠に4陣営」2.5GHz免許争奪戦のパズルを解く
次世代の高速無線通信であるモバイルWiMAXや次世代PHSに割り当てる予定の2.5GHz帯周波数の獲得に向けた動きが慌ただしくなってきた。18日、KDDIはモバイルWiMAX事業企画会社「ワイヤレスブロードバンド企画株式会社」に出資する計6社の顔ぶれを発表。他の陣営の姿も浮かび上がってきた。(石川温のケータイ業界事情) 2.5GHz帯の免許を申請する会社には、「既存の3G事業者は3分の1以上、出資してはいけない」というルールが設けられている。このためKDDIは、インテル、東日本旅客鉄道、京セラ、大和証券、三菱東京UFJ銀行というパートナーを集めた。さらに、国際ローミングの可能性を模索するため、米スプリント・ネクステルとも提携することを明らかにした。 ■メンツをかけるKDDI KDDIの小野寺正社長は「きちっとやる気がある会社が、きちんと資本を出さないと、立ち上がりが遅れる。KDDIとして、あのようなフォーメーションで会社を作った。これまでも人とお金を使ってきている。まさしく本気だ」と、意気込みを語る。 2.5GHz帯に用意されている枠は2つのみ。そこに、次世代PHSを実現したいとするウィルコム、NTTドコモから190億円の出資を受けるADSLのアッカ・ネットワークス、ソフトバンクとイー・アクセス連合などが、獲得に向けて手を挙げようとしている段階だ。
KDDIとしては2003年からモバイルWiMAX技術に着目し、国際標準化を目指す世界的な組織であるWiMAXフォーラムにはボードメンバーとして参加。2006年には大阪市内で実証実験を展開するなど、他キャリアよりも積極的にモバイルWiMAXに取り組んできた。それだけに、2.5GHz帯は是が非でも欲しい周波数。KDDIにとって、メンツをかけた争奪戦でもある。 鼻息の荒いKDDIに対し、他キャリアは意外なほど冷静だ。 NTTドコモは「うちはアッカ・ネットワークスに出資している関係に過ぎない。記者会見をするとしたら、アッカ・ネットワークス単独になるのではないか」と話す。リーダーシップを取り、鉄道、半導体、金融などの会社をまとめたKDDIとは対照的だ。 他の陣営も「当初は免許申請初日である9月10日に出そうと思ったが、結局は、こっそり出すことにした」といい、目立たぬように手続きを済ませるようになったという。 ■新規参入組2社は本業優先? モバイルWiMAXは以前から、Wi-Fi以上に広い範囲、移動中でも使えるワイヤレスブロードバンド網ということで高い注目を浴びていた。さらに、インテルが対応チップを手がけることにより、Wi-Fi同様に急速に普及していくと予想されることもあって、期待値は一段と高まった。 アメリカでは、ベライゾン・ワイヤレスに苦戦を強いられているスプリント・ネクステルが起死回生の切り札とばかりに、モバイルWiMAXの採用を決定。韓国、台湾などのアジアでも採用が決まりつつある。 これに対し日本では、総務省が決定した「3分の1ルール」により、キャリアだけでなく様々な企業を巻き込んだ争奪戦が繰り広げられようとしているのが特徴だ。 アッカ・NTTドコモ陣営はTBS、三井物産などとも交渉しているようだし、ソフトバンクとイー・アクセス連合は、ニフティやNECビッグローブ、ソネットエンタテインメント、ゴールドマン・サックスなどと連合を組むと報じられた。 ただし、各社がどこまで本気で2.5GHzの周波数と獲得しようとしているかは不透明だ。 NTTドコモは自社で第3世代よりさらに高速な3.9G、ならびに4Gの研究開発を行っており、必ずしもモバイルWiMAXをメインのサービスにしようとは考えてない。あくまで、「アッカ・ネットワークスが主役」というように、NTTドコモにとってモバイルWiMAXは最優先事項ではないのだ。
ソフトバンクモバイルは、携帯電話事業を軌道に乗せるのに精一杯の状態。ようやく4万6000局を建設したとはいえ、まだまだエリア構築は完璧ではない。モバイルWiMAXよりも、既存のW−CDMA網を充実させるのが先決だろう。 イー・アクセスにしても、イー・モバイルのサービスがようやく大都市圏で始まったばかり。これから全国にエリアを広げる必要があり、ましてや大都市圏でも地下街といった場所はほとんどエリア化されていない。来年春からの音声通話サービスに向けて、さらなるエリア構築が求められる。 「モバイルWiMAXのエリアを本気で構築しようと思ったら、携帯電話の2〜3倍の基地局が必要になる。それだけのコストを負担するのは相当、大変なはず」(モバイルWiMAX事情に詳しいメーカー関係者)。 新規参入組の2社に、全く異なる通信方式であるモバイルWiMAXを手がける余裕はあまりないはずだ。 ■ソフトバンクの本音 ソフトバンクとイー・アクセス連合の場合、パートナーとして呼び込んだのはニフティやビッグローブといったISP(インタネット・サービス・プロバイダー)だ。同業者で仲間を組みISPの顧客基盤を生かそうということだろうが、共同でモバイルWiMAX事業を始めれば他社との差別化が難しくなるだろう。同じネットワークであるならば、価格競争もできず、サービスの違いを見せることも困難だ。 ソフトバンクモバイルであれば、他社と同じ技術であるモバイルWiMAXに注力するよりも、現在計画中のフェムトセルを立ち上げるほうが、よっぽどNTTドコモやKDDIを攻めるうえでキラーサービスになり得る。
フェムトセルとは超小型基地局のことで、ソフトバンクモバイルでは、家庭に普及しているADSLの「ヤフーBB」にフェムトセルを接続。携帯電話のトラフィックをヤフーBBに逃がそうとしている。これにより、ホワイトプランで現在は制限時間を設けているユーザー間の無料通話を、制限時間なしの完全24時間対応にしようとしているようだ。 ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長は「800MHz帯を持つNTTドコモやKDDIに比べて、うちに割り当てられている周波数は少なく競争上、不利。だからこそ、2.5GHzをソフトバンクモバイルに与えるべき」と再三、訴えている。 しかし、同社が本当に欲しいのは2.5GHzよりも800MHz帯のはず。2011年以降、アナログ地上波テレビが休止して空いた周波数帯を携帯電話事業者に再割り当てする際に、周波数をもらえたほうがずっとメリットがあるはずだ。 とりあえず、「2.5GHzが欲しい!」と訴えておくが、あえて今回は2.5GHz帯は他社に与え、2011年以降になって「2.5GHzは他社が持っていったのだから、アナログ跡地はうちに与えろ」とアピールする可能性は充分に考えられる。 来年春から音声通話サービスを開始するイー・モバイルも、考えはソフトバンクモバイルに近いはずだ。 つまり、KDDIを除くほとんどのキャリアは、「KDDIに2.5GHz枠を取られると悔しいので手を挙げておく。申請しておけば後々に有利になる」というのが本音なのではないだろうか。
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