更新:6月18日 10:05モバイル:最新ニュース
フルタッチ携帯になじめない日本ユーザーの「ガラパゴス」現象
シンガポールで6月16日に開幕したアジア最大級の通信関連イベント「Communic Asia 2009」を現地からリポートする。ノキアやソニー・エリクソンといった欧州系大手は出展していないが、韓国サムスン電子やLGエレクトロニクス、中国ZTEやファーウェイといったアジア企業が大きなブースを構えている。(石川温のケータイ業界事情) なかでも、気合いが入っているのがサムスン電子だ。 展示会前日の15日には、シンガポールのチャンギ国際空港近くにある別のコンベンションセンターを借り切り、アジアのメディアなどを集めて大規模な発表会を開催した。ドバイとロンドンでも同じ日に発表会を開いており、まさにグローバルな展開だ。 サムスン電子は昨年、タッチパネルを搭載した携帯電話「OMNIA」を世界に先駆けてシンガポールで発売した。アジア市場ではシンガポールを重視していることがうかがえる。 ■携帯電話もCPU性能で選ぶ時代?
15日にサムスンが発表した新製品「Jet」は3.1インチのWVGA有機ELディスプレーを搭載したフルタッチパネル端末だ。今回から新たに「TOUCH WIZ 2.0 UI」と呼ばれるユーザーインターフェースを採用し、片手で画像やウェブページを拡大縮小できるようにした。 CPUは駆動周波数が800MHzと高速な自社製チップ。プラットフォームも同じく独自の「SHP(Samsung Handset Platform)」で、キビキビと動く快適な操作性を実現している。 この発表会では800MHzというスペックを前面に押し出していた。6月8日にアップルが米サンフランシスコで開催した開発者向けイベント「WWDC」で発表した「iPhone 3G S」も、処理速度の向上を売りの一つとしている。 また、6月20日に日本で発売になるNTTドコモの「T-01A」(東芝製)も、CPUの駆動周波数が1GHzの米クアルコム製チップセット「スナップドラゴン」を世界で初めて採用したことで注目されている。 スマートフォンの訴求ポイントとして処理速度を押し出すメーカーが増えてきた。もはや携帯電話もCPUのクロック数で選ぶ時代が来たのかもしれない。 ■「TOUCH WIZ」にみるサムスンのブランド戦略 Jetはマイクロソフトの携帯用OS「Windows Mobile」ではなく独自プラットフォームだが、マイクロソフトの「Exchangeサーバー」に対応するなどビジネス用途で使える仕様になっている。ただ、3.1インチ画面のコンパクトな設計で映像処理にも力を入れるなど、スマートフォン市場だけでなく音声端末として使う一般ユーザーもターゲットにしているようだ。
Jetの日本展開について、サムスン電子のMongsik Cho東アジアセールス&マーケティング担当上級副社長は「採用してくれるかはキャリアの意向次第」と話した。 一方、サムスン電子は今回から、Windows Mobileを搭載する正統派スマートフォンの製品群を「OMNIAファミリー」として位置付けし直した(日本は除く)。3.7インチの大画面ハイスペックモデルである「OMNIA II」、カナダRIMの「ブラックベリー」や台湾HTCの製品の対抗馬となりそうなキーボード搭載タイプの「OMNIA PRO」、スマートフォンの入門機的な位置付けとなる「OMNIA LITE」がそのファミリーとなっている。 その半面、今年2月にスペイン・バルセロナで開催されたイベント「MWC」でお披露目していた「OMNIA HD」は、シンビアンOSを搭載しているため「i8910 HD」と名称を変更している。 「Jet」と「i8910HD」、それに「OMNIAファミリー」のタッチパネル機種は、プラットフォームによってそれぞれブランド名が異なるものの、「TOUCH WIZ」のユーザーインターフェースで見た目や操作性は同じとなっている。「TOUCH WIZ」がサムスン電子を代表する1つのブランドになろうとしているのだ。 ■透明なテンキーが圧巻のLGエレクトロニクス 一方、同じ韓国のLGは派手な新製品こそなかったが、こちらもタッチユーザーインターフェースを前面に押し出した記者会見を開いた。
LGでは操作体系に「Sクラスユーザーインターフェース」という名称を付けているが、現地で特に注目を集めたのはやはり、クリスタルタッチパッドを搭載した「GD900 クリスタル」だった。 本体をスライドさせると、透明なテンキー部分が現れる。向こう側が透けて見えるこのキーパッドで数字が打てること自体が驚きなのだが、さらにこの部分がパソコンのタッチパッドのように機能するのだから圧巻だ。 透明な部分を指でこすればウェブページや画像をスクロールできる。2本の指をパッドに当てて開けば画像が拡大する。テンキーの上で大きく「A」といったアルファベットを手書きするとショートカットが働き、特定の機能が起動するようにもなっている。文字を入力したければ、パッド上で手書きすればいい。 デザインと操作性を見事に融合させたかたちで、携帯を進化させたといっていい。 サムスン、LGもアップルのiPhoneと同様に、画面上で指を横にスライドさせることで複数の画面を切り替えるユーザーインターフェースを採用している。携帯電話の狭い画面を効率的に使う努力が垣間見える。 ■独自の進化を遂げたのは携帯ではなく日本人 シンガポールに来て改めて感じたのは、iPhoneが先駆者となったタッチユーザーインターフェースが確実に世界に広がっているということだ。日本でもシャープや富士通、NECが懸命にタッチパネルの操作性を追求しており、新製品が出るたびに進化している。 しかし、日本ではユーザー側がフルタッチパネルの機器を敬遠する傾向が強く(iPhoneユーザーの一部を除く)、日本で製品を投入するからにはどうしてもテンキーも載せざるを得ない状況にある。 日本ではメールの利用が多いだけに、「文字入力はテンキー」という使い方が求められる。世界がフルタッチパネル化の流れを加速していくなか、日本メーカーはテンキーを併用するユーザーインターフェースの呪縛から逃れられないのだ。ユーザーの利便性を考えれば、テンキーは必須ともいえる仕様になっている。 昨今、日本の携帯業界は「ガラパゴス」と言われているが、技術やサービスの面ではガラパゴスではないだろう。むしろ、日本が世界をリードしている状況であり、確実に世界が日本を追いかけている。 しかし、ユーザーの「使い方」においてはガラパゴスになってしまっているのかもしれない。10年以上もテンキーでメールを打ち続けてきたことで、日本人は「テンキーで文字を打つ」という独自の進化を遂げ、逆に世界のトレンドであるタッチパネルに適応できなくなってしまったのだ。 メール文化によって生態系が世界とは異なってしまったのかもしれない。日本でフルタッチパネルのケータイが一般に広く受け入れられる日は来るのだろうか。 [2009年6月18日] ● 関連リンク● 記事一覧
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