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更新:6月4日 12:35モバイル:最新ニュース

「派生モデル」と気づかせない個性 シャープ携帯の強さ

 国内の携帯電話販売数が前年の3割減となるなど、メーカーにとって厳しい状態が続いている。そんななか、意欲的に新機種の開発を続けるのが業界トップのシャープだ。今夏商戦でも、自社デバイスと組み合わせて特色をはっきり出した斬新なモデルをそろえた。(石川温のケータイ業界事情)

 今年4月にシャープ通信システム事業本部の本部長に就任した大畠昌巳氏は「2009年度はシェア30%に挑戦し、販売台数で1230万台をめざす」と意気込みを語る。2008年度の国内出荷シェアは23%(MM総研調べ)。国内トップの座を4年連続で占めるが、販売が低迷するなかで一段と攻勢をかけようとしている。

■目玉は10メガカメラとソーラーケータイ

 シャープは今夏商戦で、3キャリアに向けて12機種を投入する。目玉となるのが、1000万画素(10メガピクセル)CCDのデジタルカメラを搭載した「AQUOS SHOT」(NTTドコモとソフトバンクモバイル向け)と、太陽光で充電が可能な「ソーラーフォン」だ(auとソフトバンクモバイル向け。ソフトバンクモバイル向けは「ソーラーハイブリッド」という名称)。

 AQUOS SHOTでは、自社デバイスである10メガピクセルCCDに、動く被写体に自動的にピントを合わせたり追尾したりする「チェイスフォーカス」「コンティニュアスAF」機能を備える。シーン認識や笑顔フォーカスシャッターも大幅に進化させ、「光学ズームがないところ以外は本格デジカメをキャッチアップしていると思う」(同社)という自信作に仕上げている。

 ソフトバンクモバイル向けの「AQUOS SHOT 933SH」では、タッチパネルのユーザーインターフェースをゼロから作り上げるなど、ハードだけでなく操作性の向上にも力を注いだ。

「サイクロイド」方式をとった今春モデルの「932SH」

■サイクロイドにこだわらず

 端末の開閉スタイルでもシャープは挑戦を続けている。ハイエンドのデジカメケータイと位置づけられる今回のAQUOS SHOTは、液晶画面が外側に向く回転2軸の「スイベル」スタイルを採用した。しかしこれ以外にも、例えばソフトバンクモバイル向けでは、フルタッチの「スライド」スタイルである「931SH」、液晶部分が90度回転する「サイクロイド」スタイルの「932SH」と、3つの形状を用意して3本柱で勝負している。

 通常、メーカーはヒット商品が出ると、その形状にこだわってしまう傾向が強い。しかし、シャープはかつてヒットした「サイクロイド」に固執することなく、フルタッチのスライドやスイベルなどの異なる形状をフラッグシップモデルに柔軟に取り入れている。

 「スイベルのAQUOS SHOTはタッチパネルのユーザーインターフェースを入れることでカメラ機能をより高めた。スライドはタッチによるインターネット利用、サイクロイドはワンセグなどの動画というように、形状に応じて個性を変えている」(開発担当者)。フラッグシップモデルでも商戦期ごとに違ったスタイルを訴求して、目新しさをアピールしているのだ。

■メモリ液晶もソーラーも派生モデル

 最近は、1つのベースモデルから兄弟機種を派生させてラインアップを増やすという開発方法を、各メーカーが採用している。多くの場合、外観を変えることで「男性向け」「女性向け」といった味付けを加えるのだが、今回のシャープは、それが兄弟機種と分からないくらいコンセプト段階から明確に違いを出している。

 ソフトバンクモバイル向けモデルでは、実は「934SH」「935SH」「936SH」の3モデルが同じベースだ。

 934SHは、背面に新開発の「メモリ液晶」を搭載したモデル。3インチの大型サブディスプレーは、携帯のサブ画面として使われることの多い有機ELディスプレーに比べて500分の1の低消費電力を実現したという。充電切れを心配せず、様々な情報を常時表示できるのが売りだ。

 「有機ELディスプレーは、画面が小さい、ボタンを押さないと時刻などを確認できない、といった不満がユーザーから聞こえていた。そのニーズに応えるのがメモリ液晶だった」(開発担当者)

 メモリ液晶はミルキーホワイトとミラー調の2色で文字や画像を表示する。時刻やカレンダー、メールやニュースを表示するだけでなく、紫外線の強さを把握できる「UVチェック」機能なども備える。また、表示が消えて鏡のようになる「エチケットミラー」というモードもあり、身だしなみのチェックにも使える。

 バックライトを備えておらず、暗いところではやや見にくいのが弱点だが、サブ液晶という脇役にスポットを当てることで、他のモデルとの違いをはっきり打ち出した。

 一方、高級感ある仕上げを特徴にしたのが935SH。アルミボディーをアルマイト染色することで、塗装では実現できない上質な印象となっている。フラッグシップモデルに位置づけてもいいくらいの質感だ。

「936SH」を披露する孫正義社長=5月19日

■技術力とユーザーニーズ対応

 さらに936SHは、ソーラーパネルを搭載した。au向けの「ソーラーフォン SH002」は6月4日発売で、936SHは今のところ8月末の発売を予定している。時刻や雲の状況など日照条件によって異なるが、シャープでは約10分の充電で1分の通話もしくは2時間の待ち受けが可能とうたっている。

 電卓のように蛍光灯では充電できず、あくまで補助的な充電手段に過ぎないが、ユーザーの充電に対する不満は高い。分かりやすい訴求ポイントとなるため、店頭での受けはよさそうだ。

 ソーラー充電モデルは、シャープのデバイス技術力を示す戦略商品として位置づけられている。これに対し、メモリ液晶は技術力よりもどちらかといえば、ユーザーニーズを汲み上げた商品となる。だからこそ、ベースが同じ派生モデルであっても、全く違った印象に仕上がっていくのだ。

■ローエンドも多様化

 だが、市場の動向を俯瞰すると、ユーザーが必ずしもハイエンドモデルばかりを選ぶという状況ではなくなっている。販売方法の変化で端末価格が上昇したイメージも影響し、ユーザーが安価なモデルを選ぶようになり、中級クラスからローエンドのボリュームが増えているのだ。

 実際、業界内では「パナソニックの『830P』がバカ売れしている」という声をよく聞く。830Pは最初から納入台数を数十万台レベルに設定し、調達価格を低く抑える戦略に基づいたモデルだ。

 実はシャープも、このミッド・ローエンド向けでしっかりと商品ラインアップを組んでいる。

 例えばソフトバンクモバイル向けの「832SH」は、「830SH」の後継機種にあたるスタンダードモデル。830SHは、812SHの流れを汲んでいるから、実に2年近く売れ続けたシリーズといえる。830SHは液晶が2.4インチ、カメラが2メガピクセルであったから、いまのトレンドスペックにはやや物足りない。そのため、832SHでは3インチ、3.2メガのカメラに強化した。

 また、「GENT」の名称で知られる「831SHs」はワンセグに対応させた。ディズニーモバイルの新製品「DM004SH」も実は831SHがベースモデルとなっている。これらの製品は長期間販売を継続することで、数を稼いでいく役割を負っている。

 自社の最先端デバイスをいち早く載せたハイエンド路線、派生モデルと感じさせない商品ラインアップ、そして安さを求めるユーザーを取り込むロングセラーシリーズ。これらを幅広く展開できるのがシャープの強さの秘訣なのだ。

[2009年6月4日]

-筆者紹介-

石川 温(いしかわ つつむ)

 

略歴

 日経ホーム出版社に入社し、月刊誌「日経Trendy」編集記者に。ケータイ業界を中心にヒット商品、クルマ、ホテルなどを担当。2003年にジャーナリストとして独立した後、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広くケータイに関する記事を執筆。テレビなどにも多数出演。近著に「グーグルvsアップル ケータイ世界大戦 AndroidとiPhoneはどこまで常識を破壊するのか」(技術評論社)、「ケータイ業界52人が語る「戦略」の裏側」(毎日コミュニケーションズ)がある。

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