更新:5月1日 13:00モバイル:最新ニュース
「守り」に入ったソフトバンクと「攻め」のドコモ
携帯電話各社の2009年3月期決算が出そろった。端末販売の落ち込みなどにより売上高は減少したが、本業の儲けを示す営業利益はいずれも拡大し、KDDI、ソフトバンクは過去最高益を更新した。(石川温のケータイ業界事情) ■不況下で見せたインフラ事業の底力 外需の落ち込みにより苦戦する製造業を尻目に、収益面で堅調さを見せた携帯電話各社。NTTドコモが売上高4兆4479億円で営業利益が8309億円。KDDIは売上高3兆4975億円、営業利益は4432億円。ソフトバンクは売上高が2兆6730億円、営業利益が3591億円となった。世界不況のさなかだが、景気の影響を受けにくいインフラ事業の底力を改めて示したかたちだ。 いずれも端末の売り上げが前の期に比べて2〜3割程度落ち、売上高が減少に転じているが、それに伴う販売奨励金が減ったために利益が伸びた。 この傾向はしばらく続くと見られるが、いずれは割賦販売制度が一巡して、販売奨励金の削減効果も薄れると見られている。なぜなら割賦販売制度と引き換えに導入した基本料金の割引制度が将来的に重荷になっていくからだ。 実際、NTTドコモは2010年3月期の予想として、基本料金の売り上げ減少分を1840億円、うちバリュープランの影響を1300億円と見積もっている。一方でパケット収入の増加は520億円しかない。そのため、販売奨励金やネットワークコストの削減によって、前期並みの利益を確保しようとしている。 ■ソフトバンクが「守り」に 今回、3社の決算会見を見て感じたのは、ソフトバンクが「守り」に入る一方で、NTTドコモに「攻め」の姿勢が見られたことだ。 孫社長は「収穫期に入った」と明言し、「今期は増収増益の見込み」「3年間でフリーキャッシュフローを1兆円前後確保」「14年度には純有利子負債をゼロに」と公約。純有利子負債をゼロにするまで、大規模な投資は行わないとまで宣言した。 しかも、これまで株主総会で株主から何度となく要求され、頑なに拒んできた「増配」についても、10年3月期に2.5円増配して5円とし、将来のさらなる増配を約束した。 ソフトバンクはボーダフォンの買収により携帯電話事業を手に入れ、中国でもオークションやオンラインショッピング事業を成功に導きつつあるなど、いずれの事業も種まきの時期から刈り取りの段階に進んでいる。 孫社長は「これまでのソフトバンクは借金をして荒っぽい経営というイメージだった。その残存イメージをこれからは変えていく。借金経営からキャッシュフロー経営になっていく」と経営体質の転換を再三、アピールしていた。
■誰も予想しなかったドコモの料金見直し 一方、ここにきて攻めの姿勢を明確に見せだしたのがNTTドコモだ。山田隆持社長体制になって1年弱。「お客様満足度の向上」を目標に掲げてきたが、決算発表に合わせて4月28日に、誰も予想しなかった「料金見直し」を発表した。 パケット料金プラン「パケ・ホーダイダブル」は、これまで1029円から4410円までの2段階の定額制だったが、この下限を1029円から490円に値下げする(5月1日から実施、スマートフォンに適用される「Biz・ホーダイダブル」も同様)。NTTドコモとしては、2008年12月現在で契約率36%にとどまるパケ・ホーダイユーザーを何としても増やしたいのだろう。 従量制プランのユーザーは、このご時勢で毎月「いかにパケットを使わないか」に苦心している。たとえば、「パケットパック10」(昨年末で新規受付は終了)は月額1050円まで無料で、その後はパケット単価が1パケット0.105円。しかし、パケ・ホーダイダブルであれば、とりあえず最低料金が半額以下になる。それなら契約してもいいという気になるはずだ。 ただし、定額制プランに入ってしまうと、つい安心して動画コンテンツなども視聴してしまうもの。結果として、毎月の請求額は上限の4410円に近づいていくことになる。 ■ドコモ山田社長「弾込めの時期」 NTTドコモは今夏モデルからiモードコンテンツの画面の一部で動画を再生する「インラインFlash」を導入する。定額制と動画コンテンツの充実という両輪でパケットARPU(1人当たりの月額利用料)の向上を狙っていく。 昨年から今年にかけて、NTTドコモはインドの通信会社やテレビ通販会社に出資したり、イオングループと新会社を立ち上げたりと、モバイルとシナジーのありそうな事業領域に積極的に進出している。13年3月期には営業利益9000億円以上を目指しており、山田社長は今期をそのための「弾を込める時期」と位置づける。 ユーザーの満足度を向上させ「囲い込む」ことで収益の基盤を安定させつつ、料金の見直しで他社との体力勝負に持ち込む。さらに成長しそうな分野への投資を惜しまないのが、攻めに転じたいまのNTTドコモの姿だ。
■KDDIが選んだネットワーク戦略 今回の決算会見では、今後のネットワーク戦略についても各社の方向性が見えてきた。特にKDDIは、12年のLTE導入前に、現行システムのEV-DO Rev.Aをマルチキャリア化して通信速度をさらに引き上げることを明らかにした。EV-DO Rev.Aのマルチキャリア化はKDDIだけでなく、他国のCDMA2000陣営でも導入が検討されているという。 LTEまでのつなぎとして現行システムを活用し、世界的に機材を調達することでコスト面での競争力を確保するという考えである。 日本でCDMA2000を採用したKDDIは、同じCDMA2000でも世界とは異なる周波数の使い方をしており、独自に端末などを調達しなくてはならない。そのため、コストがかさんでいる状態だ。 国際動向や端末の汎用性、将来の発展性を考えれば、LTEをすぐにでも導入したい。しかし、LTEの初期段階で導入するとなると、ネットワーク機器の調達コストも割高になる。初期投資額が下がる時期まで導入を先送りにすると、他社との競争力が落ちかねない。そこで、1つの答えとして出てきたのが、EV-DO Rev.Aのマルチキャリア化だったのだろう。 ■LTE導入で駆け引き 一方、W-CDMA/HSDPA陣営は、スムーズなロードマップを描いている。 NTTドコモは現行のHSDPA(下り7.2Mbps、上り384kbps)を、今年6月にHSPA(HSUPA)化する計画だ。これにより、上りの速度は5.7Mbpsにアップする。その後、2010年にLTEを導入する予定だ。世界のトップを切るのではなく、あくまで「先頭集団」としてのスタートを狙っている。 ソフトバンクモバイルは「2〜3年以内には(LTEを)始めたい」(孫社長)という。「急いで導入しても、W―CDMAの時のドコモのように失敗する。初期段階では、ネットワーク機器は高額で品質も悪い。LTE対応端末が出揃うのを待ってからでも遅くない。それまではHSPA+(下り28Mbps、上り11Mbps)を段階的に導入していく」と明言した。 世界では、LTEの導入を積極的に表明するキャリアがある一方で、まずはHSPAの発展型としてHSPA+を採用して様子を見ようというキャリアも存在する。 孫社長は「NTTドコモの動向よりも世界的な流れを見てLTE導入のタイミングを判断したい」と語っている。これから数年は、各社とも国内と海外の動向をにらみつつ、LTEをどのように導入していくかが経営の課題となっていきそうだ。 [2009年5月1日] ● 関連記事● 関連リンク● 記事一覧
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