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更新:2006年6月9日 11:40インターネット:連載・コラム

グーグル覇権に挑む

グーグル覇権に挑む(3)「日の丸検索エンジン」始動なるか

 今年度の政府のIT関連政策には「検索エンジン」の文字があちこちにちりばめられることになりそうだ。IT戦略本部がまとめた「重点計画―2006(案)」には「次世代の高度情報検索技術の開発」が初めて盛り込まれた。自民党の議員による「情報産業振興議員連盟」の研究会でも、「次世代情報基盤の俯瞰図」の中にセキュリティーと並んで「検索・トラッキング」が重点課題として取り上げられている。背景には昨年末に経済産業省が立ち上げた、国産検索エンジンの開発を目指す研究会の議論の盛り上がりがある。

■検索プラットフォームを共通化

 研究会の名称は「ITによる『情報大航海時代』の情報利用を考える研究会」。家電メーカーをはじめ、通信、放送事業者、大学など約30社・団体が参加する。「検索エンジンにも、コンピューターのOS(基本ソフト)における『リナックス』のようなオープンソースの仕組みが必要ではないか」との発想から、来年度に正式なコンソーシアムを立ち上げるべく準備が進んでいる。グーグルのビジネスモデルが社会的にも注目を集め、フランスでも「グーグル対抗軸」として国産検索エンジン開発が進むなか、議論には追い風が吹き始めているという。

 経済産業省でこの研究会を立ち上げた情報経済企画調整官の八尋俊英氏は「いまがチャンスだ」と意気込む。「グーグルが得意なのはテキスト検索。映像やICタグで取得したセンサー情報など、まだまだデータベース化されていないものが多い」として、検索領域や利用端末を日本の得意とする映像や家電分野に広げた、独自の「大規模・高速検索プラットフォーム」の立ち上げを目指す。

 検索エンジンは検索結果をすばやく表示するために、世界中の膨大なウェブサイトから情報を集めてデータベースに蓄積し、解析している。グーグルの強味はこの強靭なインフラの力とそれを管理する技術にある。ポータルサイトなど検索サービスを提供してきた多くの企業はこの部分のコスト増に耐え切れず、ビジネスの根幹をグーグルに任せるようになったというのが実情だ。1社ではあきらめざるを得なかった検索のプラットフォームをオープンソースで作って共有し、それぞれの企業はその上のアプリケーションのレベルで競争しようというのがコンソーシアムの狙いだ。

 八尋氏は日本の検索関連技術は「まだ世界と戦えるレベルにある」と太鼓判を押す。データベース構築からアプリケーションまで一貫した検索サービスを提供する日本企業は姿を消した。しかし検索技術者は家電メーカーや大学などに点在しているという。八尋氏は「何年か後に『グーグル(の脅威)には対応できたね』と言われるようにしたい」と話す。検索エンジンがパソコンのOSのように事実上1社に集約されるような事態になる前に手を打ちたいとの意地がのぞく。

■既に始まっている「テキスト以外」の検索競争

 現在は準備段階として課題の抽出と重点分野の洗い出しを行っている。単純なキーワード検索ではなく、ユーザーの意図を汲み取って「本当に知りたいこと」を選んで示したり、テレビ画面などパソコン以外の端末を想定した、文字入力不要のインターフェースなどの利用シーンを想定。音声認識やメタデータの自動生成など必要となる関連技術への取り組みを議論していく。

 ただ、グーグルなど検索大手も文章から動画、音声へと検索対象を広げるという戦略は同じ。家電メーカーなどでこの分野を長年手がけてきた技術者が活躍の場を求めてヤフーやグーグルに転職しているという状況もある。

 グーグル日本法人の村上憲郎社長は国のプロジェクトに対し、「日本のコンピューターサイエンスの人材の底上げにつながる」と評価。国費を投入するのであれば人材も含めて「成果はありがたく頂戴したい」(村上氏)と余裕を見せる。

 「検索エンジンの重要性を見直そう」という議論はまだ緒についたばかり。家電メーカーなどはコンソーシアムへの参加を検討中だが、国の政策としての重要性と各社のビジネス上の判断が合致するとは限らない。一度はあきらめた検索サービスを、メディアの融合という大きなビジネスの変革期にどのようにとらえるのかで、日本企業の対応が決まってきそうだ。

(2006年6月9日/IT PLUS 重森泰平)

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