更新:8月24日 10:30インターネット:最新ニュース
YouTubeはニコニコの露払い・ひろゆき氏に聞く
「YouTubeには権利者の『切り崩し』をぜひやってほしい」。動画投稿サイト「ニコニコ動画」を監修する、ニワンゴ取締役で2ちゃんねる管理人の西村博之氏は、YouTubeの日本語版開始についての期待をこう語る。動画関連サービスの持つ可能性や、問題が指摘されている著作権対策、厳しくなるネットの規制についてどう受け止めているのか。ひろゆき氏の考えを聞いた。 ■YouTubeの展開「見守りたい」 ――ニコニコ動画のアクセスが伸びています 昨年末にサービスを始めて、いまは1日5000万ページビュー、ユーザーは200万人ぐらいでしょうか。一応説明しておきますと、投稿される動画そのものがYouTubeなどと比べて面白いというわけではありませんが、動画のシーンにコメントを付け合うことができるのが特長です。
テレビを見ながら家族や友人とおしゃべりをするとき、実はテレビ番組自体はどうでもよくて、会話そのものを楽しんでいますよね。その感覚に近いんです。 YouTubeでも作品を見た人がコメントを(動画枠の下に)付けられますが、作品全体への感想しか書けないから、つまらない作品にはコメントが付かないか、「つまんない」で終わり。でもニコニコ動画では、シーンごとの感想を書き込めるので、「つまんない」では終わらない。投稿する側にとっても、つまらない作品でもリアクションがあるので、うれしいんじゃないでしょうか。 ――YouTubeも日本語版をスタートしました。日本語でのサービスという意味ではライバルですが、どう見ていますか ライバルとは思ってないですね。いまはまだ「動画をネットで見ると面白いね」と思う人が増えてきて、ユーザーの裾野が広がっている段階です。どちらかのユーザーが増えればどちらかが減るという状況ではありません。ニコニコ動画の映像がYouTubeに「輸出」されるといったことも起きています。お互いにいい影響を与えていると、勝手ながらわれわれは思っています。 ――日本でもYouTubeのパートナーになるメディア企業が現れています
スカパー(スカイパーフェクト・コミュニケーションズ)やMXテレビ(東京メトロポリタンテレビジョン)などと組んでいますね。YouTubeにはこういった形で権利者の「切り崩し」をぜひやっていただきたい。コンテンツ企業がYouTubeに出してメリットがあるということがわかれば、いずれニコニコ動画にも出してくれるかもしれません。そういう意味でありがたく見守っています。 いまはまだ番組の宣伝のような映像がメーンのようですが、そのうち面白いコンテンツが出てくるんじゃないでしょうか。ニコニコ動画でも参院選で民主党とタイアップしました。 ――YouTubeが秋にも導入するといわれる「フィンガープリント」という権利処理技術はどう評価していますか 見たことはありませんが、理論的にはわかります。ただ、コンテンツの権利を誰が持っているのかを確認することは難しいので、かなり限定的な効果しかないでしょう。コンテンツオーナーが権利を主張するにはまず守りたいコンテンツを権利者が登録する必要があるので、かなり手間がかかりそうですよね。 同じ音楽でも楽器やテンポが違うものもありますし、旋律の似た別の曲もありますが、それらをきちんと区別できるのでしょうか。かなり難しいでしょうね。どうも実装が見えません。技術の程度にもよりますが。 ただ、もしこういった技術が効果があると権利者から判断されれば――うちも真似します。逆に、せっかくコストをかけて技術を開発したのに権利者から評価されなかった場合は、うちは同じようなものを作る必要がないことが証明されるわけです。いずれにしても見守っています。 ■動画のビジネスモデルは成り立つか
――YouTubeとは人気の動画の傾向が違いますね アニメやゲーム関連の動画が多く、しかもいくつかのアニメ映像を組み合わせてマッシュアップして作品にしたものが目立ちます。テレビの映像そのままというものはむしろ少ないですね。他人のコンテンツを組み合わせて別のものを作る「改変」が当たり前という文化を感じます。こういったコンテンツはYouTubeにはあまり出てきません。 2ちゃんねるによく登場する「アスキーアート」も、改良していろんな人が使うので、もともとの作者が誰なのかわからないことが多い。コミケ(アニメ同人誌のマーケット)と似た、日本特有の文化かもしれません。 ――ニコニコ動画動画のビジネスモデルは? 当面の収入は月額525円の有料会員からの会費と広告です。有料会員は混雑時も動画がとぎれにくいというサービスで、6月から始めて5万4000人を超えました。予想より多いですね。 公式の有料動画配信も今年中には始めたいと考えています。投稿された動画だけでなく、動画コンテンツを買うなり作るなりして集めて配信するというものです。 ただ広告については、バナー広告はあっても、動画の広告はそんなに期待できないんじゃないかと思っています。広告を出す側の費用対効果が見えないからです。 バナー広告は画像なので仮に1万円で作れるとしても、映像は100万円単位になります。企業イメージにかかわるので、あまりクオリティーの低い動画は作れない。ところがコストをかけたからといってアクセスが100倍になるわけではありません。 掲載する媒体側も、サーバーのコストに見合った広告収入増が見込めるわけではありません。YouTubeの広告もうまくいっているようには見えませんし。まだ動画の広告市場は出来上がっていないですよね。 ■マッシュアップ依存の功罪
――2月にはYouTubeにアクセスを遮断され、自社のサーバーに切り替えました 開始当初のサービスは、YouTubeの動画にニコニコ動画がコメントを重ねるという形態でした。でもYouTubeに切られるのは時間の問題でした。YouTubeには少しユーザーが流れるかもしれませんが、ニコニコ動画にYouTubeの広告が表示されるわけでもなく、彼らにとってメリットがないのにアクセスだけは増えてしまうからです。 わりとドタバタしましたが、すぐに自前のサーバーに乗り換えられました。動画配信といっても、サーバーは画像やテキストのものとそんなに変わらない。サイズが大きいだけですから。 ただインフラとしてはギガを超える単位でデータを扱えるルーターや、動画を扱うためのCPUなどの調達が大変でした。そういったインフラの運営ノウハウを蓄積するために時間がかかりました。 ――外部のインフラに頼ったマッシュアップには限界を感じた? ヤフーが提供する検索APIも1日のアクセス回数に制限があります。APIを公開してマッシュアップを提供しているところも、その企業にとって自分のライバルになったりシステムへの負荷が一定以上高まるのはだめよ、というわけです。 ニコニコ動画がYouTubeに切られた何日か前には、YouTubeで「最も見られた動画」の上位8つくらいを日本からニコニコ動画を経由して見たであろう日本のコンテンツがずっと占めていましたから。英語圏の人たちは何が起きているのかさっぱりわからなかったでしょうね。 APIも結局個人で遊んでいるときはいいのですが、サービスを大きくしようとするときに頼れるかというとあまりに不安定だということを実感しました。 グーグルが表計算やワードなどのビジネスソフトを無料で提供していますが、これらも同様に、ビジネスで本当に使っていいのかと思います。データをすべてグーグル側に置いておいて、いきなり遮断されたらどうするのかということはあまり言われていませんよね。首根っこをつかまれたままというか。 ――YouTubeには連絡をしたのに返事がなかったとか 遮断されたあとに「日本での展開におけるパートナーになりたい」という趣旨のメールを送ったのですが返事はありませんでした。日本に進出するなら足がかりとしてニコニコ動画を買い取ってくれればいいなと期待もしていたのですが。。。 ――動画運営のノウハウはどこにあったのですか 2ちゃんねるにはもともとテレビを見ながらコメントを書き込むための「実況」スレがあって、いまのニコニコ動画とは相性が良かったんです。以前から動画に直接コメントするといったアイデアはあったんですが、インフラにお金がかかるからやらなかっただけです。自社サーバーに切り替えてやはり何億円とかかりましたから。 ――いまは夜中などかなりサーバーが重たいですね まだまだ発展途上です。サーバーを増やしても今度はラックが足りないとか、電源が足りないとか(笑)。10ギガを超えるルーターって手に入らないんで、米国から空輸したりとか。動画のサービスをしている他社はどうやっているのか不思議です。それほどトラフィックがないのかもしれませんね。 次ページ:著作権保護のコストを誰が負担するか << 前のページへ 1 [ 2 ] [ 3 ] 次のページへ >> ● 関連記事● 記事一覧
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