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更新:3月31日 10:00インターネット:最新ニュース

日本のインフラ「総合評価で世界一」――安さ・速さ、普及にどうつなぐ・ネット時評

 「ICTの競争力、日本14位に上昇」――「ダボス会議」の主催者、世界経済フォーラム(WEF)が2007年3月末に発表したICT(情報通信技術)分野の競争力ランキングによれば、日本は世界122カ国・地域中14位となっている。前年の16位からやや上昇したが、トップ10には依然として程遠い。(今川拓郎・総務省 総合通信基盤局 企画官)

新技術は対象外のWEFランキング

 このランキングは、「ネットワーク化準備度指数」という指数に基づくもの。ICTの「環境(市場、政治・規制、インフラ)」「準備態勢(個人、企業、政府)」「活用度(個人、企業、政府)」の3つの要素(合計9の指標群)からなる合計67の指標を総合した競争力指数のランキングとなっている。

 3つの要素ごとの日本の順位は、環境が12位、準備態勢が8位、活用度が20位。インフラ整備から利活用促進に比重が移っている日本で、「活用度」の順位が低いのは納得できる。企業の活用度1位に対し、政府の活用度が35位で足を引っ張った。電子政府・電子自治体の取り組みを抜本強化する必要がある。しかし、世界最高水準のブロードバンド環境といわれる日本が、「環境」の順位も低いのは不可解だ。

 実は、この指標の作成にあたっては、第3世代携帯電話や光ファイバーなどの新技術に関するデータは対象外となっている。WEF事務局によれば、調査対象国・地域の約3分の2以上からデータが得られることが指標として採用する条件。新技術の普及の実態はデータが入手しにくく、この条件に合致しない。だがそれでは先端技術よりもやや陳腐化した技術に有利に働いてしまうのではないか。積極的に新技術に関するデータを採用し、データの得られない国・地域は推計値やゼロで代用するなど、評価の実効性を高める工夫が必要となる。

新技術も含めた総合評価では日韓が双璧

 このような欠点を改善し、より実態を反映した評価を行うために、総務省では情報通信基盤に関する国際比較評価レポートを作成した。ブロードバンドの料金や速度が世界一、ということのみで日本の情報通信基盤が世界最高水準である、と考えてしまいがちであるが、真の意味での比較を行うためには、さまざまな分野のデータをバランスよく利用し、包括的かつ客観的な評価を行うことが重要だ。もちろん、新技術のデータも含めるべきである。

 このような観点から、次のとおり、情報通信基盤に関する6分野12項目の指標を採用した。なお、データは、恣意性等を排除するため、国際機関等が既に公表している数値をそのまま利用した。

1)利用料金:電話基本料金※、ブロードバンド料金(速度あたり)※
2)高速性:(ブロードバンド利用に占める)光ファイバー比率、ブロードバンド速度(下り)
3)安全性:安全なサーバー数(人口あたり)、ボット感染PC台数(ブロードバンド人口あたり)※
4)モバイル度:(携帯電話利用に占める)第3世代携帯電話比率、携帯電話普及率(人口あたり)
5)普及度:インターネット普及率(人口あたり)、ブロードバンド普及率(人口あたり)
6)社会基盤性:インターネットホスト数(人口あたり)、ICT投資割合(対GDP比)(※印の項目は、数値が低い方が高評価となるため逆数を使用)

 新技術に関する指標として、光ファイバー比率、第3世代携帯電話比率、ボット感染PC台数を採用した。評価方法としては、まず各指標を偏差値化し、全指標の偏差値平均により総合評価の国際ランキングを作成するとともに、各国・地域別にレーダーチャートを提示し、個別の評価を行った。なお、新技術に関するデータ利用の制約もあり、評価対象は情報通信基盤が比較的よく整備されている23カ国を、北米、欧州、アジア・太平洋から選定した。

 その結果、図1に示す国際ランキングが得られた。総合評価では、日本が23カ国・地域中1位、韓国がきん差で2位となった。日韓と3位以下との間には大きな開きがある。上位10カ国は、フィンランド・スウェーデン等の北欧勢、香港・シンガポール等のアジア勢、米国となった。WEFのランキング等と比べても、上位陣の顔ぶれは類似しており、違和感はない。

<図1>情報通信基盤に関する国際ランキング(偏差値平均)

社会的な普及や社会基盤としての優先度に課題

 次に、日本の情報通信基盤の状況を詳しく評価するため、図2に示すレーダーチャートを作成した。

<図2>日本の各指標のレーダーチャート

 日本は、ブロードバンド料金、光ファイバー比率、ブロードバンド速度、ボット感染PC台数の4指標で1位となり、第3世代携帯電話比率で2位、電話基本料金で4位となった。料金と速度に加え、新技術に関する指標では、まさに世界最高水準である。

 一方、普及率や社会基盤性に関する指標では、全般的に低調な結果となった。もっとも、データにやや難点もある。例えば、携帯電話普及率では、プリペイド携帯電話の容認やSIMカードのロック解除といった要因もあり、人口普及率が100%を超える国が少なくない。また、インターネット普及率では、パソコンからの利用者のみを対象とし、携帯電話からの利用者は含まれていない。国際機関等が公表しているデータをそのまま利用するのではなく、適切な補正を行えば日本の順位は多少上がるだろう。しかし、そのような点を割り引いても、普及率や社会基盤性の点で日本が課題を抱えていることには変わりがない。

 安くて速く、新技術も取り入れたブロードバンド環境でありながら、それが社会的な普及や社会基盤としての充実に必ずしもつながっていない現実をどう評価すべきだろうか。普及に関しては、コンテンツの魅力不足や、高齢者等にも優しく使いやすいサービスになっていないなどの点が指摘されるかもしれない。社会基盤に関しては、課題山積みの日本政府内でのICT政策の優先度が不十分であるといった点も指摘されるだろう。このような課題も踏まえ、地域間における情報格差の解消や情報化の進展を踏まえた社会資本整備における資源配分の見直しなどを進め、情報通信基盤の価値を高めて日本の競争力強化につなげていく努力が求められる。

【参考】
「日本のICTインフラに関する国際比較評価レポート」の公表
※なお、総務省にて開催している「ICT成長力懇談会」において、本レポートに続き、ICT利活用や利用環境整備の状況に関する評価レポートも作成・公表していく予定となっている。

このコラムは日経デジタルコアによって企画・編集されています。
ご意見・問い合わせは同事務局あてにお願いします。

-筆者紹介-

今川 拓郎(いまがわ たくお)

総務省 情報流通行政局 企画官

略歴

 1990年東京大大学院修了、同年郵政省入省。97年米ハーバード大経済学博士。
大阪大大学院助教授、総務省情報通信経済室長等を経て現職。東京大公共政策大学院
非常勤講師等を兼務。専門は情報経済学、産業組織論、都市経済学等。“Economic
Analysis of Telecommunications, Technology, and Cities in Japan”(Taga
Press)等、著書・論文多数。静岡県出身。

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