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更新:9月24日 09:58インターネット:最新ニュース

中国「WindowsXP」海賊版の作者摘発で飛び交う憶測

 8月中旬、中国で最も名の知られたWindowsXPの改造版フリーソフト「番茄花園」の作者が告発され、つい先日逮捕された。「完成度の高い」海賊版として特に個人PCユーザーに深く浸透していただけに、摘発のタイミングや背景などを巡ってさまざまな憶測を生んでいる。(中国IT最前線)

■正規版より普及率高い「番茄花園」

 海賊版ソフトが氾濫している中国でも、大きな割合を占めるのがWindows OSだ。そして数多くのWindows改造版の「ブランド」のなかでも番茄花園は絶大な人気を誇っていた。WindowsXPのテーマやデスクトップ、ボタンを改造してユーザー認証をなくし、あまり使われない機能を削除することにより容量も軽くしている。

 無料でダウンロードできるうえ性能も悪くないといわれる番茄花園版WindowsXPは、何万円もする正規版のWindowsを購入したくない学生など若いPCユーザーにとって格好の代替品だ。ある調査では少なくとも1000万台以上のPCに番茄花園がインストールされているとされる。

 今回の逮捕を受けて大手ポータルサイトの新浪網が行ったオンライン調査(9月21日時点)では、2割以上のユーザーが番茄花園を使っているという。正規版Windows(12%)を大きく上回り断然トップだ。そして、作者が逮捕された後も8割のユーザーが番茄花園を支持すると答えるなど、海賊版の普及ぶりが浮き彫りになる結果となった。

 番茄花園のダウンロードサイトには「あくまでもテストバージョンであり、24時間以内に削除してください。もし継続してご利用になる場合は正規版を買い求めてください」とのただし書きもあり、おおっぴらに流通を煽っていたわけではなかった。しかし使い勝手の良さからダウンロードした業者がCD-ROMに焼き直して販売したり、番茄花園をプリインストールしたPCを販売するショップまで登場している。れっきとした海賊版ながら、その普及はすさまじいものがある。

■不満の矛先はマイクロソフトに

 今回の反響の大きさが普通の海賊版摘発事件を超えているのは、こうした浸透ぶりだけが理由ではない。対象がマイクロソフトだからであり、Windowsだからである。番茄花園の作者の行為はもちろん許されるものではないが、中国では告発したのはマイクロソフトではないかと、かえって不満の矛先がマイクロソフトに向かっている。

 マイクロソフトに批判的な人々は、番茄花園のダウンロードサイトは2003年に開設されたが、マイクロソフトはこれまであえて放置してきたのではないかと指摘する。海賊版でもよいからWindowsを普及させ、市場を押さえようとした、と見ているのだ。

 今回の告発のタイミングは、今年8月に中国が施行した独占禁止法に関連するという声もある。中国が独禁法を導入するにあたり、マイクロソフトが最初の調査対象になるとの観測はこれまで繰り返し出ていた。マイクロソフトは世界各国であったように中国でも標的にされることを恐れ、告発によって海賊版に焦点を当てることで独占状態にないことをアピールしようとしているのではないか、との見立てである。

 さらには、WindowsXPからビスタへの移行を進めたいマイクロソフトが、XPの海賊版作者を“用なし”として見捨てたのだ、といううがった見方すらある。マイクロソフトが支持されるどころかユーザーの反感を買っている背景には、こうした中国内の屈折した感情もあるようだ。

■独占禁止法と海賊版問題

米ワシントン州のマイクロソフト本社〔AP Photo〕

 マイクロソフトは欧米各国で独禁法による調査や制裁をたびたび受けてきたが、中国は法整備の遅れもあり無風地帯だった。しかし今後は風向きが変わるとあって、海賊版問題に絡んだ前哨戦がすでに繰り広げられている。

 マイクロソフトやアドビシステムズなど大手ソフト企業が加盟しているソフトウエア著作権保護団体のBSAは、中国のパソコンソフトウエア市場の海賊版率が2006年で82%という数字を発表した。ところが中国側は真っ向から反論している。

 中国の調査機関である「インターネット実験室」は、2007年の中国ソフトウエア市場の売り上げ金額に基づいた独自の調査により、中国の海賊版市場シェアは20%と主張している。その理由は、個人ユーザー向けの海賊版率は69%と高いが、金額ベースで大部分を占める法人市場はほとんど正規版であり、全体の海賊版の割合を押し下げている、というものだ。市場の状況把握の時点からすでに食い違っており、中国でも今後マイクロソフトを巡る中国政府の駆け引きが激しくなることは間違いなさそうだ。

 中国政府はソフトウエアの海賊版問題に力を入れ始めており、少しずつ改善されつつある。だが、その道のりは平坦ではないといわざるを得ない。もちろん、法の未整備や流通市場の混乱、ユーザーの意識など、中国国内の要因は様々ある。しかし一方で、マイクロソフトをはじめとする欧米企業が世界一律の価格設定を押し通してきたことや、海賊版への対策が不十分だったことなどの要因もあるだろう。現時点では海賊版の横行は欧米企業よりもむしろ、国内メーカーへの打撃がはるかに大きいことも問題だ。

■国産ソフトに力を入れる中国政府

 中国の国情に合った海賊版の撲滅策として一番の近道は、自国が著作権を持つソフトや標準を作ることかもしれない。中国政府や中国企業が作る独自のソフトであれば、価格を下げられるため海賊版の出回る余地を減らせる。中国政府の取り締まりもこれまで以上に強化されるはずだからだ。

 最近、政府も中国製ソフトの普及に本腰に入れ始めた。中国製のオフィスやセキュリティーソフトなどは、すでにマイクロソフトなどの欧米製品を代替できるレベルにきており、ソフト国産化の尖兵に育っている。OSについては多少難しいが、Linuxなどのオープンソースを活用した開発を奨励する動きも活発だ。今回の件もあって、IT専門家のなかからは、中学校から実施しているWindowsを利用したコンピューター教育の体制を改め、Linuxに移行すべきだという過激な意見も出たほどだ。

 マイクロソフトに代表される欧米系ソフトの海賊版問題と独占問題は、図らずもコインの表と裏のような関係になっている。欧米系ソフトのシェアが低下すれば、海賊版問題にメスを入れる余地が自ずと広がると考えることもできるからだ。中国当局が独占禁止法をどのように運用していくかがまずは注目される。

-筆者紹介-

肖 宇生(しょう うせい)

日本総合研究所 総合研究部門 主任研究員

略歴

 1991年中国の大学を中退、来日。92年大阪大学経済学部に入学、96年卒業後に金融機関を経て99年一橋大学大学院経済学研究科に入学、修士号を取得。2001年大手電機メーカーで中国向けの携帯ビジネスに携わる。2003年に野村総合研究所に入社し、中国に進出する日系企業を対象にしたコンサルティング業務に従事。日興アントファクトリーに移り、海外市場向けのベンチャーキャピタル投資に携わった後、2009年に日本総合研究所に入社、中国市場における経営コンサルティングサービスを担当。

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