更新:3月24日 10:30インターネット:最新ニュース
おすすめのススメ 成功するレコメンドとは
近年、国内外でウェブサイトにおける「レコメンデーション(あるいはレコメンド)」が、注目されている。代表的なのはアマゾンにあるような購買履歴に応じて「これを買っている人はこれも買っています」と、オススメの商品やコンテンツを表示するサービスだ。レコメンデーションを活用するにあたって、気を付けておきたいポイントや活用例を紹介しよう。 ■「自らのサイトに自らの広告を張る」という行為 レコメンデーションの目的は、購買履歴の例で考えると、「誰がいつ何を買ったのか」というような数少ないコンテキストから最適な情報を提示し、ユーザーの能動的なアクション(ついで買い促進、コンテンツへの誘導、回遊率アップなど)を引き出すことにある。その目的からすれば、実はネット広告とほぼ同じである。 ネット広告がサイト外部からのトラフィック流入増加あるいは集客を目的とするのに対し、レコメンデーションはサイト内部でのトラフィック流出防止、滞在時間の延長、囲い込みに一役買うことを目的としている。つまり、レコメンデーションとは「自らのサイトに自らの広告を張る」という行為と言えなくもない。そしてレコメンデーションのほうが、他のサイトの制約に依存することなく思ったような効果を導きやすいというのが現状だ。 ちなみに、どちらもサイトをまたがったネットワーク化の動きが進んでいる。広告ではアドネットワークがあり、レコメンデーションでも自社サイト内に必ずしも閉じないで提携サイト同士を繋ぎ、クロスサイトでのレコメンデーションを提供するサービスが出ている。 ■認知と満足度 レコメンデーションの一般的な効果 レコメンデーションはその広告効果として、ページビュー(トラフィック)の増加、商品購入や資料請求などの最終成果の向上、滞在時間延長、そして在庫回転率やサイトの認知向上など、様々な指標の向上が期待できる。そこで業種の異なる4つのECサイトに、レコメンデーションを導入した前後での指標向上の例を図1、図2に示す。
このように導入前と導入後ではページビューも滞在時間も増加している。興味深いのは、滞在時間の伸びが大きいことだ。ユーザーに、1回の訪問でより多くの商品を見てもらうことに成功し、さらに長くサイトに滞在してもらえるようになった。これは「興味あるいは注意を払うほど立ち止まる(サイトに滞在する)」という傾向と、商品への情報探索コストが低下した(見つけやすくなった)ことによる満足度の向上との相乗効果とも考えられる。 ■ヘッドかテールか ぽすれんの場合 「レコメンデーションはロングテールの敵?」というようなテーマの研究を拝読したことがある。これは「協調フィルタリング」と呼ばれる一般的なレコメンデーションアルゴリズムの一特徴(売れ筋商品ばかりがレコメンドされる)についての話で、課題の一つかもしれない。 しかし、ヘッド(少数の売れ筋商品)ばかりをオススメするか、テール(多数の売れない商品)にも脚光を浴びさせるかは、アルゴリズムやシステムにより決まるのではなく、サイトの業態や商材の性質によって、決めるべきだろう。 売れ筋をもっと売ろうとするなら、よくある売り上げランキングと同じことであり、商品力があって有名な商品なら黙っていても売れていく。レコメンデーションがランキングと異なるのは、ユーザーをよりよく知って機会損失を減らそうというアプローチである。あらゆるコンテキストからユーザーを知る努力は、リアル店舗における販売員のオススメに至るプロセスと変わらない。 DVDレンタルサービス「ぽすれん」のレコメンデーションは、「XXX の1巻」を借りたら「XXXの2巻」といった関係性から見れば当然の結果やヘッドに属する新作DVDを提案するよくあるレコメンデーションではなく、ユーザーの嗜好に合わせてテールに属するDVDを提案できるしかけになっている。一般的な購買履歴の軸でユーザーを評価していないためだ。 例えば往年の映画「ネバーエンディングストーリー」を見た人には、「インディ・ジョーンズ」や「クレムリン」などファンタジーやアドベンチャーに関連する商品を抽出して、テールに属するDVDのさらなる拡販を狙っている。「〜を買った人はこれも買っている」ではなく「〜に興味があるあなたにオススメ」というやり方なのである(図3)。 この手法は複雑ネットワーク理論に基づいたもので、購買履歴だけでなく某大な閲覧履歴、クリック回数など、あらゆる行動のネットワークから類似コミュニティーを抽出し、これをレコメンデーションに応用している。共通する言葉やキーワードでレコメンデーションのリストを抽出する方法とは異なり、検索エンジンやタグのようなテキスト解析では実現しにくいコンテキストの領域である。
■主役か脇役か Last.fmの場合 ECサイトにおいてレコメンデーションは売り上げを拡大するための脇役である。しかし、音楽サイト「Last.fm」は音楽のレコメンデーションに特化し、レコメンデーション自体が主役になってコンテンツを作り上げる先駆的サイトとして注目される。 専用アプリケーションをパソコンにインストールすると、音楽プレーヤー上での楽曲聴取履歴を蓄積してくれる。そこから「このアーティストをよく聴いているユーザー」「このアルバムをよく聴いているユーザー」「この曲をよく聴いているユーザー」といった情報が次々にレコメンデーションされる。 中でも、特筆したいのが、「あなたにオススメの曲ストリーミング連続再生機能」である。これをBGMに使えば、半自動的に好きと思われる音楽を聴き続けられる。またオススメとして再生された曲に評価を与えられる点も、「自分がコントロールしている感」を生み、より能動的にレコメンデーションを使ってもらうことに繋がる。これらに加え、APIによって種々の情報を第三者が利用することもできる。このように、レコメンデーション自体を主役とした活用方法も十分にあり、今後も、そのようなサービスやポータルサイトの増加が見込まれるだろう。
■価値か信用か レコメンデーションが向いているサイトとはどんなものだろうか。実のところ、レコメンデーションの効果は一定ではない。そこで再び「自らのサイトに自らの広告を張る」ことを思い出してほしい。つまり自分のサイトに埋もれている良質なコンテンツがない場合、レコメンデーションは不向きとなる。それは外部からの流入に頼るだけで、ユーザーがすぐに興味をなくして帰ってしまうようなサイトである。このイメージを図5に示す。
前述のとおり、レコメンデーションは認知と満足度を増大させるので、信用向上に効果的である。サイトの価値(横軸)が高ければたくさんの人が訪れ、信用(縦軸)が高ければ何回も訪れてくれる。できたばかりの小規模なサイトなど、どちらも弱い場合は、広告やSEO、口コミなどを用いて、まずは集客努力を優先するほうがよい。 よく知らないサイトでよく知らない商品やコンテンツがオススメされてもユーザーは反応しない。一方、信用も価値もある大規模サイトの場合は、一般的なレコメンデーションやネット広告は通過点でしかなく、専用エンジンの開発などさらなる質の改良や、別の囲い込み対策が求められるだろう。 ■自然か人工か サイト構築という観点からのレコメンデーションは、実は価値を最大化する最適な導線(リンク)の設計と同義といえる。ウェブサイトは製作側の意図によってトップダウン型の導線を、いわば人工的に構築している。また、検索エンジンはキーワードに基づいて俯瞰した立場でコンテンツへの導線を作る仕組みだ。これに対して、レコメンデーションはユーザーの履歴を使ってボトムアップ型の導線を提供する。つまりユーザーの自然な行動から最適化を図るのである(図6)。
行動は目標に対して個人が持っている価値と期待の変数である。つまり、他人の価値と期待が自分と近しいほど、他人の行動は自分にとっても効用が高い可能性を持つのだ。 レコメンデーションが作り出した導線は、担当者の作るオススメよりも精度が悪いこともあるが、運営者が100以上のページごとにオススメを作るのはコスト的に非現実的である。しかも、同じ広告やコンテンツというのは遅かれ早かれ飽きられるので更新し続けなければならない。なにより一人の担当者では発見できない体験が、群衆の自然な導線によってもたらされる場合もある。 ただし、頻繁に手入れしすぎて、つまりサイト構成が変わりすぎてユーザーが混乱し、レコメンデーションの反応が悪くなることも経験上、判明している。このように人工的なウェブサイトに自然が現れるのは妙な気もするが、一部のローカルルール(アダルト規制等)を除き、やはり自然にはあまり手を入れるべきではない。 このウェブ上に現れた自然には、まだまだ未知の領域が多く残されており、興味は尽きない。今回のコラムではECサイトの例を中心に説明したが、レコメンデーション技術がもっと活かせる可能性がどこかに潜んでいるかもしれない。サイト運営者が、そういった純粋な好奇心からレコメンデーションを利用することで、マーケティングへの新たな応用方法が生まれる可能性もあるだろう。 [2009年3月24日] ● 記事一覧
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