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更新:9月4日 17:59インターネット:最新ニュース

「ぼろい」インターネットを守れるか――慶大村井教授とキャリア3社らがNGN巡り議論

 インターネットがあらゆる産業のインフラとなるための課題は何か――。日本経済新聞社は4日、「次世代ネットワークの展望」と題して世界情報通信サミット・ミッドイヤーフォーラムを東京・大手町で開催した。電話、テレビから医療、教育まで様々なサービスを安心・安全に提供するIP(インターネット・プロトコル)網を目指す次世代ネットワーク(NGN)に通信各社はしのぎを削っているが、顧客の囲い込みやインターネットの自由が失われるのではとの課題も指摘され始めた。慶大環境情報学部教授の村井純氏は「インターネットは(NGNに比べ)『ぼろい』。しかし、誰もが参加できる創造的社会の基盤としてのインターネットは維持すべき」と問題提起。キャリアや行政、ユーザーなど様々な立場から発言が相次いだ。

 議論は大手通信キャリアのNTT、KDDI、日本テレコムの3社からのパネリストに加え、有識者の立場で村井氏、慶大環境情報学部教授の国領二郎氏が参加。行政から総務省の担当者、ISP(インターネット接続事業者)を代表して日本インターネットプロバイダー協会の担当者が議論に加わった。司会役はインテック・ネットコア社長で、日本経済新聞社のIT分野の識者コミュニティー、日経デジタルコアで「ネット社会アーキテクチャー研究会」の主査も努める荒野高志氏、日経デジタルコア・坪田知己代表幹事が努めた。

「ユーザーも含めてみんなで議論すべきテーマ」と村井教授

 一般的にNGNとは、「ベストエフォート」といわれる従来型のインターネットと違い、利用料がかかる代わりにセキュリティーやサービス品質を高めて、様々なサービスのインフラとして信頼性を保障するサービスを指す。通話料収入の減少に歯止めがかからない固定電話と、定額制の浸透などで収益が伸び悩む携帯電話に代わる新たな収入源として通信各社が構築に力を入れているが、一方で「ネットの創造的文化がなくなる」「(世界一安いといわれてきた)利用料が高くなる」「キャリアが自社グループのコンテンツやサービスを優先する垂直統合モデルが広がる」などのマイナス面を指摘する声も出ている。

 村井氏は冒頭、「インターネットと放送、電話はそれぞれビジネスモデルや哲学が異なる」と指摘。「ウェブ2.0」の流れなどで個人の情報が自由に共有できるネット社会の方向に対して「(きちんとネットを管理する)NGNが別の方向に向かったり、逆行するのではないか」と懸念を示した。

 村井氏はNGNが必要とされてきた背景として、「インターネットが品質を保証できないこと」「過剰な価格競争でネットの『ただ乗り論』が台頭してきたこと」「緊急通信が難しいこと」など「インターネットは『ぼろい』」ということを挙げた。一方で、従来はインターネットでは不可能といわれていた映像配信やマルチキャストなどもいまではできるようになっていると強調。NGNではないインターネットも魅力ある形で提供すべきとして「そこは俺たちもがんばらねば」と「自由なインターネット」の進化への決意を語った。

 NGNへの取り組み状況について、NTT次世代ネットワーク推進室担当部長の雄川一彦氏は「従来の電話とIPの『いいとこ取り』」を目指すと主張。固定と移動通信の融合である「FMC」でのNGNを目指し、今年12月にもNGNの実証実験を始める予定だと述べた。KDDI技術渉外室企画調査部長の三澤康巨氏は「既存のインターネットとは共存する」としたうえでNGN上で電話やテレビ、携帯を融合させる戦略を披露。日本テレコム専務執行役員CTOの弓削哲也氏は「NTTは構想を打ち上げるばかりで実現されることが少ない」と批判し、ソフトバンクグループ全体として様々なメニューをそろえたいと訴えた。

 議論のなかで慶大教授の国領氏は「民間企業の新サービスに横から口出しすべきではないが」と前置きしつつも、公平な競争環境を保つために「インフラ部分の開放ルールを議論し、アプリケーションで競争しやすい状況を早く作るべき」と呼びかけた。総務省総合通信基盤局電気通信技術システム課長の渡辺克也氏は「NGNのサービスイメージが出来上がっていないのでは」と述べ、NGNと従来のインターネットが相互に連携する形が望ましいとした。NGNが日本の独自規格になって国際的に孤立するのではとの指摘に村井氏は「マーケットにゆだねるのが基本。国際標準を待つより日本から標準を生み出すべき」と産業界にエールを送った。

 会場からのキャリアへの質問には、各社の回答のニュアンスが微妙に分かれる場面もあった。「キャリア各社はいままで以上に垂直統合モデルを提供するのか」との質問に、NTTは「回線への接続条件は他社と一緒。垂直統合モデルではない」、KDDIは「垂直統合は当然やる。しかし自社サービスを優先すればマーケットから締め出されるだろう」、日本テレコムは「ルール上はオープンでも事実上参入しにくいことがある。垂直統合型サービスもやるが他社への条件は平等にする」と述べた。

 NGNは3キャリアとも別々のものか、同じインフラを違うサービスとして提供するのかという質問には、NTTだけが「いまは1つにするという答えは出せない。ネットの品質が違うので、相互接続の条件が問題になるだろう」と述べたが、KDDI、日本テレコムは「インフラは同じにすべき」と回答。NGNの基盤を共通インフラととらえ、その上の付加価値の部分で競争したいと述べた。

[2006年9月4日/IT PLUS]

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