更新:11月10日 10:45インターネット:最新ニュース
SNSを社員間コミュニケーションに使ってみた【リポート】
若者を中心に急拡大するSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を社内コミュニケーションのツールとして使えないか――。そんな取り組みが企業の間で広がりつつある。顔を合わせたことのない社員にまでネットワークを広げ、それを「可視化」することのできる社内SNSへの期待と課題を、富士通グループでの筆者自身の体験をふまえて紹介する。(富士通総研 経済研究所主任研究員・浜屋敏) 企業や特定のグループ内で社員間のコミュニケーションを促すツールとして、グループウエアや社内ブログを導入する企業は多い。SNSの普及を受け、イントラネット上のSNS、すなわち「イントラSNS」を導入する企業がここにきて増えつつある。 たとえば、NTT東日本は2005年秋から社内SNS「Sati(サティ)」をスタート。役職や立場を超えて率直な議論ができるようになったり、地方の営業担当者が本社の技術担当者とリアルタイムに情報交換したりするなどの効果があったという。 コールセンター運営などを手がけるベンチャー企業のバーチャレクスでは、社内SNS「Tiari(チアリ)」を導入。離れた事務所に勤務する社員同士や中途入社の新入社員でも、円滑にコミュニケーションできるツールとして利用しているという。 ■リポートを共同で完成 筆者が勤務する富士通グループ内にもイントラSNSがあり、その中で複数のメンバーが1つのリポートを共同でレビューして完成させるというプロジェクトを試してみた。その結果、イントラSNSのメリットや課題、効果的な利用方法などについていくつかのヒントを得ることができた。 具体的には、まず筆者がほぼ書き終えた段階の研究リポート「ブログ・SNSの創発的特性と組織へのインパクト」の概要をイントラSNSの日記に書き込んで、SNS上でレビューをお願いするとともに、リポートそのものも添付した。 これに対し、グループ内からいくつかのコメントをもらい、その後はSNS内に専用のコミュニティーを作った。そこでさらに本格的な議論を重ね、その議論の内容をリポートに反映させてメンバーで共有するようにしていった。 最終的にコミュニティーへの参加者は25人になり、リポートの最終版はほぼ2カ月後に完成した。議論に加わったのは全員富士通グループの社員ではあるが、その多くは、それまで著者とは顔を合わせたことのないイントラSNSメンバーであった。 SNSで寄せられた意見のなかには、筆者が想定できなかった視点からのものもあり、新たな知見を加えることができた。議論を反映してリポートの品質が高まったことは間違いない。また、リポートには直接反映できなかったものの、今後新しい研究テーマとして取り上げるに値するような話題についても議論が広がった。この試みで得られた社内の人的ネットワークは、今後の業務にも生かすことができるという手ごたえがあった。 ■ミクシィや社内ブログではできなかったこと
こういった試みは、イントラSNSでなければこれほどうまく進まなかったと考えている。ミクシィ(mixi)など社外の一般的なSNS上では、いくら閉じたコミュニティーを作ったとしても、セキュリティーの問題から業務に関連の高い協働作業を行なうことはできない。 社内の電子掲示板(BBS)であれば社外秘のコミュニケーションもできる。しかし、一般的に社内BBSは一方的な業務関連の通知に使われることが多く、自由な議論という双方向の利用には敷居が高い。また、職場ごとに閉じたBBSにアクセスするのは日常的に顔を合わせることの多い同僚であり、寄せられるコメントも事前に想定できるものに限定されがちだ。 多様なコメントを集めるためには、イントラネット内に公開される社内ブログの方がよいとの考えもある。しかし、社内とはいえ誰がアクセスしているか把握できず、執筆中のリポートのファイルをそのまま公開することはためらわれる。 BBSやブログに比べ、イントラSNSは登録が必要な閉じたネットワークだ。メンバーの情報発信意欲が高く多様なコメントを得ることができると同時に、アクセス履歴を把握しやすいために安心してファイルを公開できるという側面があった。 ■「弱いきずな」がもたらすSNSのメリット 今回の試みを支えたのは、アクセスをある程度コントロールできるネットワークと、人間関係の可視化というイントラSNSの特徴から生まれる信頼感だったと言える。学術的にも、社会ネットワーク理論では「弱い紐帯(つながり)の強さ」として、家族や毎日顔を合わせる同じ職場の仲間のような強いネットワーク(強い紐帯)よりも、ちょっとした知り合いや「知人の知人」のような弱いネットワーク(弱い紐帯)の重要性が指摘されてきた。今回の試みも、同じ企業グループの社員という価値観を共有するメンバーの間で、「弱い紐帯の強さ」が生まれやすいイントラSNSでこそ成功したのではないだろうか。 イントラSNSは気軽に情報発信できる点が特長だ。社員に自由に資料を掲載してもらい、簡単にコメントを付け合うことができる。コミュニケーションによって成果物の質が高まり、社員の間で知識共有が進み、新しい知識が創造されるということも十分に考えられる。 イントラSNSが組織内の知識の共有や創造を促すツールとして使えるのではないかということは、ハーバード・ビジネス・スクールの准教授アンドリュー・マカフィーが主張している”Enterprise 2.0”("Enterprise 2.0: The Dawn of Emergent Collaboration", MIT Sloan Management Review, Spring 2006)という考え方でも裏付けることができる。マカフィー教授は自分のブログで、Enterprise 2.0を「企業内、企業間、企業とパートナー・顧客の間で創発的なソーシャル・ソフトウエア・プラットフォームを活用すること」と定義している。このプラットフォームとは、管理者が事前に特定できない自由な情報発信が可能で、情報のやり取りが可視化されるソフトウエア環境を意味しており、イントラSNSもその条件を満たしている。 ■仕事以外の書き込みもOK?効果測定が課題 ● 関連リンク● 記事一覧
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