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更新:11月18日 11:40インターネット:最新ニュース

1つの市場を形成しはじめたブログというコンテンツ

 有名人のブログが多いことで知られる国内のブログサービスが、2009年9月期に四半期ベースで初めて黒字転換したという。日本で本格的にブログがサービスとして提供され始めてから約6年。CGM(利用者発信型メディア)の典型とされるブログだが、ソーシャルメディアとしてネットや携帯電話の利用者にすっかり定着し、収益事業としても独り立ちしつつある。(今川拓郎)

 当初は、ブログ自体は無料で広告主から掲載料を徴収する広告モデルが大半だったが、近年では有料サービスや商品などをリンクして紹介する「アフィリエイト」の収益モデルが普及してきた。いったい、ブログの市場規模はどの程度と考えればよいのだろうか。

■ブログの市場規模をどう測るか

 総務省情報通信政策研究所は、09年7月に「ブログ・SNSの経済効果の推計」を公表した。ブログ・SNSの市場規模について、表1に示すとおり5つの市場に分類したうえで、一定の前提のもとに推計を行っている。

 

表1 ブログ市場の分類
【出典】「ブログの実態に関する調査研究報告書」(総務省情報通信政策研究所)
市場の分類ブログ市場(ブログ事業者や登録者が、ブログ活動から直接得る収益の総額)ブログ誘発市場(他の事業が間接的に得る収益の総額)
(1)ブログサービス市場有料版ブログサービス提供によるブログ事業者の売り上げ
(2)ブログ広告市場ブログを媒体とした純広告、コンテンツマッチ広告、口コミ広告によるブログ事業者の売り上げ
(3)ブログEC市場アフィリエイト経由で商品・サービスが購入されることによるブログ事業者・ブログ登録者の収益(成果報酬分のみ)アフィリエイトによる商品・サービスの売り上げ(左記のブログ市場分を除く)
(4)ブログ出版市場ブログコンテンツの出版によりブログ登録者が得る収益(印税分のみ)ブログコンテンツの出版による書籍の売り上げ(左記のブログ市場分を除く)
(5)ブログソフトウエア市場ブログソフトウエア・ASPの販売額

 (1)の「ブログサービス市場」は、ブログを有料で提供することによる収入である。(2)〜(4)の「ブログ広告市場」「ブログEC市場」「ブログ出版市場」はそれぞれ、ブログを通じて得られる広告収入、ネット購入に導くことによる成果報酬、出版につながった場合の印税収入である。(5)の「ブログソフトウエア市場」は、ブログ関連のソフトウエアを提供することによる収入である。また、右欄の「ブログ誘発市場」は、ブログを通じてブログ以外の市場で誘発される収入を示しており、「ブログEC市場」と「ブログ出版市場」の商品・サービス・書籍のみが該当するものとした。

 推計方法の概要は、次のとおりである。まず、大手10サービスを抽出し、公表値や事業者アンケートなどによりブログ登録者数及びページビュー数を集計。「ブログサービス」「ブログ広告」「ブログEC」のそれぞれについて、独自の推計式を作成して大手10サービスの収益を求めた。さらに、その他の54サービスを抽出し、登録者数又はページビュー数を用いて収益を比例的に割り当て、大手10サービスの収益と合計することで、計64ブログサービスの「ブログサービス市場」「ブログ広告市場」「ブログEC市場」の規模を求めた。

 一方、「ブログ出版市場」については、08年度に出版されたブログ書籍をネット通販サイト「Amazon.co.jp」からリストアップし、推定販売部数を乗じて市場規模を推計した。また、「ブログソフトウエア市場」は、ホームページやイントラネットへブログを導入する企業数をインターネット白書などから推定し、ライセンス価格を乗じて市場規模を推計した。

■ブログの市場規模は約160億円

図1 2008年度のブログ市場規模(推計)
【出典】「ブログの実態に関する調査研究報告書」(総務省情報通信政策研究所)

 以上の方法に基づく市場規模の推計結果は、図1のとおりである。08年度のブログ市場規模は約160億円。誘発市場(約1800億円)とあわせて、ブログ関連市場は約1960億円と試算された。ブログ市場の内訳は、「ブログEC市場」が約43%、「ブログ広告市場」が約42%と、両者で大半を占め、「ブログサービス市場」は1.7%にとどまった。ブログの特性を生かしたアフィリエイト機能や口コミ広告などが経済効果をもたらしている。

 なお、ブログ市場規模の推計のもとになった09年1月時点のブログ登録者数の推計値は約2700万人、ページビュー数は約200億回である。ネットレイティングスによれば、09年6月のページビューランキング上位10社のページビュー数合計値は約320億回となっており、今年に入ってからのブログのページビュー数の伸びも考えれば、この市場規模はやや過小評価とみるべきかもしれない。

■規模拡大で求められるガバナンス

 一方、総務省情報通信政策研究所では、日本のコンテンツ市場全体の市場規模の推計も行っている。07年の市場規模は約11.4兆円(前年比0.3%減)となり、05年以降、市場全体は横ばいとなっている。

 ただし、市場内では2つの構造変化が生じている。第一の変化は、映像化である。本推計では、コンテンツをテキスト系・音声系・映像系に分けて計測しているが、テキスト系(2.4%減)・音声系(3.2%減)のコンテンツは、新聞・雑誌・書籍・音楽CDなどの販売減により減少。一方、映像系(2.1%増)のコンテンツは、テレビ番組の二次利用増などにより増加した。

 第二の変化は、ネット配信である。パソコンや携帯電話を利用したネットワーク経由のコンテンツ流通は急速な拡大(11.5%増)を続け、1兆円近い規模にまで成長している。

 実は、この調査は02年から開始していることもあって、テレビ・映画・ビデオ・音楽・新聞・雑誌・書籍などのソフトが、放送・インターネット・パッケージ販売・劇場などのメディアを通じて流通する実態を把握しており、ブログのようなCGMコンテンツは含まれていない。

 今回推計したブログ(約160億円)や、同時に推計したSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス、約499億円)の市場規模は、両者あわせても約660億円で、コンテンツ市場全体の0.6%程度にとどまるが、動画投稿サイト、価格比較サイト、掲示板などの代表的なCGMコンテンツも加えればかなりの市場規模に達する(図2を参照)。コンテンツ市場全体は拡大を続けていると評価できるようになる。

 インターネットや携帯電話の普及で、いわゆる「口コミ」も立派にビジネスとして成り立つようになってきた。電通が「日本の広告費」の調査結果を毎年公表しているが、ここにもCGM広告がいずれ登場するだろう。

 しかし、規模拡大とともに影響力が高まれば、おのずと情報発信主体の自覚と責任が求められるようになる。米国(連邦取引委員会)や日本(WOMマーケティング協議会)でブログ広告のガイドライン策定の動きも広がるなか、「ネット空間は私道ではなく公道である」という認識のもと、ルールやマナーの強化が必要となるだろう。

【本稿は筆者の個人的な見解であり、所属する組織を代表するものではありません。】

[2009年11月18日]

-筆者紹介-

今川 拓郎(いまがわ たくお)

総務省 情報流通行政局 企画官

略歴

 1990年東京大大学院修了、同年郵政省入省。97年米ハーバード大経済学博士。
大阪大大学院助教授、総務省情報通信経済室長等を経て現職。東京大公共政策大学院
非常勤講師等を兼務。専門は情報経済学、産業組織論、都市経済学等。“Economic
Analysis of Telecommunications, Technology, and Cities in Japan”(Taga
Press)等、著書・論文多数。静岡県出身。

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