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更新:11月5日 09:00インターネット:最新ニュース

余白とウェブデザイン 引き算が生み出す美しさ

 先日、米アップルから発売された新型「マックブック」のボディーは、一枚のアルミ板から削り出し作られている。継ぎ目のないデザインは非常に美しく、耐久性などの実用性も兼ね備える。このように不要なものを削ぎ落としていくことの大切さは、ウェブデザインの世界においても共通する。

 ウェブの世界では、ページの枠に物理的な制限がないため、比較的足し算のデザインになりがちだ。次々と要素を付け加えていってしまう。しかし、足し算の欲求を抑えてうまく引き算してデザインすることが必要になる。ウェブデザインでいう引き算で、特に重要なのは余白である。

 余白とはデザインの各要素の間にある、テキストや画像などの要素に占有されていないスペースを指す。このスペースを効果的にデザインに利用することは、装飾や画像など要素を付け加えてインパクトを出していく足し算のデザインとは違ったアプローチだ。

 無駄な要素はできる限り削ぎ落とし、各要素に適切な空間を与えることで要素を引き立たせて、デザインを組み立てていく。一見、余白は無駄なものと思われがちである。しかし、テキストや画像などが隙間なく埋め尽くされたページを想像してみてほしい。各要素がひしめき合ったデザインでは、ユーザーはどこに注目してよいのかわからなくなってしまうのである。

 テキストや画像などの要素が何もないスペースの存在はデザイン上、大きな役割を果たしているのである。ウェブ上でユーザーは大量の文字情報にさらされている。文章量の多いコンテンツを掲載する際には、デザイナーは特に十分な余白をとるように注意している。

 余白が十分に取られていない長文はユーザーがすぐに読み疲れてしまい、内容を十分に理解できなくなってしまうという研究結果も発表されている。余白を十分にとることで、ユーザーがその文章を読むスピードは落ちてしまうのではあるが、理解度は余白を十分にとったデザインの方が向上するようだ。このように、デザイナーは、各要素がよりユーザーに魅力的で見やすくなるように余白を効果的に利用しているのである。

 また、余白は、よりエレガントで高級感のある印象をユーザーに与えることができる。そのため、ファッションブランドやジュエリーなどの高級品市場を眺めると、余白を利用した多くの美しいデザインを見つけることができるだろう。では、実際に余白をうまく利用してデザインされたウェブサイトを2つ紹介しよう。

・ティファニー

http://www.tiffany.com/

 日本でも人気のアメリカを代表するジュエリーブランド、ティファニーのウェブサイトはジュエリー自体の持つ美しさを前面に押し出しつつも、余白を利用しコンテンツとのバランスがうまく保たれている。

・ShaunInman.com
http://www.shauninman.com/

 テネシー州で活動するウェブデザイナーのShaunInman氏のブログは、 無駄な装飾は一切なく、余白をうまく活用したレイアウトになっている。

 アメリカのジャズ・ベーシストであり作曲家でもあるチャールズ・ミンガスは生前、作曲活動についてこう語ったという。

 「簡単なものを複雑にさせることは平凡なことである。しかし、複雑なものを簡単に、それも極端にシンプルなものにすること。それこそがクリエイティビティーである」。

 この言葉は、作曲の世界のみならず、ウェブデザインの世界にも通ずる。まさに不要なものを削ぎ落としていく引き算のデザインを表現するために語られた言葉のようである。

 しかしながら、複雑化された現代社会においては、デザインも多様化してきており、シンプルで美しいものは、既に数多くある。デザイナーはシンプルで美しいものにプラスアルファを感じさせる何かを常に探し求めていかなければいけない。余白はデザインにプラスアルファを与えるエッセンスである。わずか数センチ、時には、たった数ミリの余白でレイアウトのバランスを失ってしまうこともある。デザイナーはこの余白と戦いながら美しいデザインを目指しているのである。

[2008年11月5日]

-筆者紹介-

河内 康和(かわち やすかず)

ウェブデザイナー

略歴

 米国同時多発テロ2日前に渡米。現在、ロサンゼルスでWebデザイナーとして、Logical eXtensionS, Inc.に勤務する傍ら、ブログ「ロサンゼルスで働くウェブデザイナーの日記 DesignWalker」(www.designwalker.com)を運営中。
関連リンク
Logical eXtensionS, Inc.
ロサンゼルスで働くウェブデザイナーの日記 DesignWalker

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