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更新:5月26日 10:45インターネット:最新ニュース

ダビング10「複雑骨折」・経産省は何をしているのか

 地上デジタル放送番組の複製制限を現行の1回から10回に緩和する「ダビング10」は6月2日開始予定だが、その延期はほぼ確実で、いつまで延期されるかも不明のようである。その背景として、私的録音録画補償金を巡る家電メーカーと権利者団体(コンテンツ側)の対立が指摘されているが、それは正しくない。様々な利害関係者の思惑が交錯し、事態は「複雑骨折」の様相を呈している。(岸博幸の「メディア業界」改造計画)

■複雑骨折に至る経緯

 複雑骨折という表現した理由を理解してもらうためにも、まずこの問題に関する経緯と現状を簡単に説明しよう。

 地上デジタル放送番組の複製に関する現在のルールは「コピーワンス」である。これは、家電メーカーと放送事業者で決めたルールであるが、利便性などの面でデジタル時代にふさわしくないのではという指摘があり、さらには技術的なトラブルが続発したことから、総務省の検討委員会でその見直しが検討された。その結果「ダビング10(コピー9回+ムーブ1回)」という形で関係者が合意し、6月2日という開始日が設定されたのである。

文化審議会著作権分科会では、私的録音録画補償金制度についての文化庁案が提示された=5月8日

 文化庁の文化審議会著作権分科会では、私的録音録画補償金の対象の見直しを検討している。今月その場で文化庁が、補償金の対象外であるデジタル録音・録画機器の普及を踏まえ、携帯音楽プレーヤーやハードディスク(HD)内蔵型DVD録画機などを対象に加える案を提示したところ、家電メーカーが「補償金の対象が(パソコンなど)汎用機にまで拡大しかねない」と猛反発し、文化庁案を拒否する方向にあるらしい。

 権利者団体にとって、補償金の対象拡大とダビング10はセットである。私的利用で複製できる回数が増えると、コンテンツを創る側の所得機会に影響が生じるからである。しかし、家電メーカーの反発で5月29日開催予定の同審議会で決定できない可能性が高くなっており、その延長でダビング10も6月2日から実施できなくなった、と言われている。

■根拠のないJEITAの理論

 このように書くと、一部報道にあるように「権利者側が補償金を増やせと強欲な要求をするから、ダビング10を始められない」と解釈されかねないが、それは正しくない。

 違法ダウンロードの氾濫から明らかなように、デジタル技術の普及でコンテンツを創る側の所得機会には大きな影響が出ている。それを補償するのが私的録音録画補償金であり、個人的にはベストの対応策とは思わないが、現状ではほかに代替策がない以上、対象機器の拡大はやむを得ないと考えている。日本で私的録音録画補償金として徴収されている金額が欧州のいくつかの国と比べると非常に少ないことを考えても、無茶な要求とは思えない。

 ちなみに、家電メーカーの業界団体である電子情報技術産業協会(JEITA)は概ね「技術的な権利保護と契約でコンテンツ側が自ら防御できるのだから、私的録音録画補償金は廃止すべき」と主張していた。しかしこの主張は、デジタルの普及に対応するための社会的コストをすべて消費者に転嫁し、家電メーカーはその負担から外れようと意図したものであり、無責任もはなはだしい。

 そして重要なのは、コンテンツを創る側は補償金の対象を汎用機機にまで拡大しようという意図は持っていないことだ。つまり、私的録音録画補償金の対象拡大に反対するJEITA側の論理には根拠がないのである。

■意見が割れる家電メーカー

 それでは、家電メーカーが私的録音録画補償金を廃止に追い込みたいから、ダビング10も自ら延期しようとしているのであろうか。これも正しくない。

 複数の筋からの情報によれば、数社の家電メーカーは、補償金の対象拡大について権利者側と合意して予定どおりダビング10を始めたい意向という。これに対し一部の家電メーカーは、対応機器の生産が間に合わないなどの事情もあって、ダビング10の開始を1カ月遅らせたいようである。

 要は、ダビング10開始直前のいまになって、JEITAのなかで意見が割れているようなのである。そうした家電業界内のお家事情を覆い隠して、権利者側に責任を転嫁してダビング10の開始を遅らせようとしているならば、言語道断である。

次ページ:■所管業界のルールを勝手に決められた経産省

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