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更新:9月19日 11:11インターネット:最新ニュース

ヤフーやYouTubeとも連携・自民総裁選で進むネット利用の効果と限界

 自民党が総裁選でインターネットを積極的に活用している。党のホームページが総裁選の特別ページに切り替わり、「政策論争12日間」という文字の大きなバナーと5人の候補者の顔写真が並ぶ。候補者データやスケジュールだけでなく、街頭演説のニュースや動画、さらには「応援メッセージ・質問募集!」といったユーザー参加型の企画まで用意されている。(ガ島流ネット社会学)

■進む自民党のネット対応

 刺客、ワンフレーズ――。小泉政権時代は「劇場政治」「メディア政治」と呼ばれ、テレビが政治のあり方を左右する「テレポリティクス」が注目された。テレポリティクスは、1960年にニクソン対ケネディで行われたアメリカ大統領選挙で生まれた言葉で、最近では、ワイドショーでの報道が政治に影響を与える状況を立教大学助教の逢坂巌氏が「みのポリティクス」と呼ぶなど、テレビの影響力は依然として大きなものがある。

総裁選の特別ページに切り替わった自民党のウェブサイト

 一方、インターネットについては2005年の郵政解散時に、自民党がブロガー・メルマガ主催者懇談会を開くなど注目されたものの、公職選挙法の壁があり選挙期間中の情報発信が難しいこと、政権が保守寄りに変わっていったこと、などから政治活動との距離は遠ざかっているように見えた。

 しかしながら、昨年の総裁選で自民党のネットへの取り組みが一時的なものではないことが明らかになった。党のホームページでは、共同記者会見、所見発表演説会での発言の記録、演説の動画、ユーザーによる応援フラッシュの募集も行われた。政党内の選挙であれば、公選法の縛りから抜けられるのも、自民党がネット利用を進めた理由のひとつだ。

 特に、会見の全文テキストが公開されたことは、当時の福田康夫・麻生太郎両候補の考えを知るうえで大きく役立った。マスメディアは、紙幅の制限もあり会見の全文を掲載することはなく、時として一部を抜き出してセンセーショナルに報道することもあるため、政策や人柄を判断するうえで貴重なソースになった。なぜ、自民党はネットに積極的に取り組んでいるのだろうか。

■検定や動画投稿も活用する今回の総裁選

 まず、自民党のホームページで現在どのような取り組みが行われているのか見てみたい。特徴は、既存のサイトとの連携を積極的に行っていることだ。ヤフーの「Yahoo!みんなの検定」の仕組みを利用した「自民党総裁選2008検定」を用意し、総裁選に関する基礎知識を学べるようにした。「候補者目撃情報 わたしは●●候補を見た!」「応援メッセージ・質問募集!」といった企画は、動画共有サイトのYouTubeやニコニコ動画への投稿を自民党がホームページで紹介して、ネットユーザーが総裁選に「参加」できるようになっている。既に人気のあるサイトと連携することで参加のハードルを下げ、ネットでの盛り上がりを演出する努力が伺える。

 党の青年局主催の公開討論会はYouTubeの自民党チャンネルに公開されており、いつでも視聴できる。討論会で各候補は自身の選んだ曲によって登場していた。石原伸晃氏は「太陽にほえろ!」のテーマ、小池百合子氏はマドンナ、麻生太郎氏は小田和正、石破茂氏は映画「エアフォース・ワン」のテーマ、与謝野馨氏はラヴェルの「ボレロ」と、「らしさ」が見える演出もメディア戦略の一環である。残念なことに、どことなく会場の反応は「滑り気味」でもあったが――。

YouTubeの自民党チャンネルに掲載された党の青年局主催の公開討論会

「Yahoo!みんなの検定」に設置した「自民党総裁選2008検定」

■ネット活用の真意はどこに

 このように政治がネットを活用する理由の一つは、マスメディアなどの「フィルター」を通さずに直接情報が伝えられることにあるだろう。1972年に佐藤栄作元首相が引退する際に、記者会見で「私は新聞記者には語りたくない、私はテレビを通して直接国民に語りたい」と新聞記者を追い出したように、政治は常に新たなメディアを利用して世論をコントロールしようと試みる。もう一つ重要なのはネットから「疑似選挙」を盛り上げることで、民意の反映「感」を醸成して支持率を上げていくためだろう。

 実際、前回の総裁選では41%だった内閣支持率が59%にまで回復している。前回の総裁選後に野党が「民意を受けていない政権」という批判を行ったが不発に終わったのも当然だった。今回も、5候補が立候補して選挙になったことで、テレビ各局のニュース番組で討論などが行われている。一見5候補が論争して自民党内が対立しているように見えるが、注目が高まり党全体としてプラスになっている。選挙なしで小沢一郎氏を党首に選んだ民主党は、メディア戦略としてはマイナスでしかない。

 ただ、これらの取り組みの一方で、総裁選の盛り上がりはイマイチに見える。これが「メディア戦略」の限界だろう。小泉政権下のテレポリティクスでは、党の広報を担当した世耕弘成参議院議員やPR会社の活躍がクローズアップされ、一部のマスメディアや評論家は「政党のメディア戦略に国民が踊らされた」と批判した。しかし、メディア戦略によって何もかもがうまくいくことなどない。それは、マーケティング力があればどんなものでも売れるという議論同様に無理がある。最終的にはメディアは媒介する「装置」に過ぎない。

 今回どことなく反応が鈍いのは、5人の総裁選候補者の姿勢が有権者に透けて見えているからだろう。受け手は直感的に本質を見抜く場合もある。ネットを利用した「擬似選挙」が成功したかどうかは、総裁選後の内閣支持率で結果が出るだろう。

-筆者紹介-

藤代 裕之(ふじしろ ひろゆき)

ブロガー@ガ島通信

略歴

 1973年徳島県生まれ。立教大学21世紀社会デザイン研究科修了。広島大学文学部哲学科卒業後、徳島新聞社に入社。社会部で司法・警察、地方部で地方自治などを取材。文化部では、中高生向け紙面のリニューアルを担当し「若者の新聞離れ」対策に取り組む。徳島大学付属病院医療情報部助手を経て、マイネット・ジャパンアドバイザーなど。
2004年9月にブログ「ガ島通信」をスタート。メディアやジャーナリズムに関する議論から身辺雑記まで、幅広い内容を発信中。「ブログ・ジャーナリズム」(野良舎)、「メディア・イノベーションの衝撃」(日本評論社)。北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)サイエンスライティング担当。

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