更新:10月16日 10:44インターネット:最新ニュース
時間を手に入れた「ツイッター」がもたらすパラダイムシフト
ミニブログ「Twitter(ツイッター)」への注目度が高まっている。ツイッター本の発売も相次ぎ、マスメディアで紹介されることも増えてきた。ツイッターの魅力はさまざまに語られるが、その1つに時間の共有体験がある。ネットは時間と場所を超えるのが特徴とされるが、それは時間と場所という要素が欠落していた裏返しでもある。ツイッターをはじめとするリアルタイムウェブは、同じ時間を共有した体験を生むことで、その壁を越えようとしている。(藤代裕之) ツイッターのユーザーは今年に入って急伸している。ネットレイティングスによると、1月に20万人だったのが4月に52万人、8月には200万人を突破した。『ツイッター 140文字が世界を変える』『仕事で使える!「Twitter」超入門』など関連書籍の発売が相次ぎ、イベントやセミナーも開かれている。 ブログやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などの普及過程を見ても、アーリーアダプターに評価され、一部有名人が話題に→関連書籍の発売→マスメディアが注目、と進む。「セカンドライフ」のような尻すぼみの例もあるが、ツイッターが爆発前のポジションにあるのは間違いない。 IDとユーザー数の違いはあるが、SNSの「mixi(ミクシィ)」の場合はサービス開始1年で75万IDを獲得し、その後1年で一気に500万IDまで増やした。ツイッターも、この先どこまでユーザーが増えるのかが見ものだ。 ■コンテクストをベースとするサービス ツイッターの特徴でまず語られるのが140文字しか書き込めない点だ。ネットは紙や電波と違って物理的制約がないため、普通に考えれば、ユーザーが文章、写真、動画とよりリッチなコンテンツをアップできるようにサービスを設計する方向に行くが、逆転の発想で作られている。 「好きなように書いてください」と言われると困ってしまい、自由過ぎるより制限があるほうが書き込みやすいという人もいる。俳句や短歌のように決められたフォーマットに合わせて情報発信を工夫する楽しみもある。 もう1つは緩やかなつながりだ。ミクシィであればマイミク申請をして「許可」されなければリンクできないが、ツイッターでは特定の人のつぶやきを受け取る「フォロー」の設定は片方向でかまわない。ミクシィにある足跡(誰が日記にアクセスしたか分かる機能)もなく、コミュニケーションを過度に強要される仕組みになっていない。面白いことをつぶやくユーザーがいれば気軽にフォローし、つまらないと思えばフォローを外すことができる。 これは、SNSは人間関係をベースにし、ツイッターはコンテクスト(文脈)をベースにしているサービスであることによる違いだ。ツイッターが出たからSNSやブログが衰退するという主張もあるようだが、ユーザーはそれぞれのメディアを使い分けていくようになる(ただ、時間は有限なので競争は激化する)。1日分のつぶやきをブログにアーカイブして「今日のまとめコメント」を書くユーザーがいるように、ストックとフローとして使い分ける方法も1つの例だ。
■意外性を生み出す「RT」 フォローしたユーザーのつぶやきが見える一覧画面の「タイムライン(TL)」は、インターフェースとしてはRSSリーダーと同じだが、RSSリーダーが「読みに行く」ものであるのに対して「流れていくのを眺める」という印象が強く感じられる。ユーザーは過去のつぶやきをさかのぼって見たりしない。また、TLはユーザーが自分で編集できる。お気に入りのアーティストの曲を選んで聴くような「マイメディア」であり、流し読みも可能な「ながらメディア」でもある。 ツイッターには「Retweet(RT)」と呼ばれるつぶやきの引用があり、これがTLに「意外性」を生み出し、ユーザーの関心低下を防いでいる。自分が選ぶだけではフォローの範囲が限られマンネリ化しがちだが、RTでつぶやきが流通することでこれまで知らなかった発信者を発見したり、気に入ればフォローリストに加えたりできる。 この意外性はこれまでのネットが苦手としてきたところだ。ネットはプル型メディアと長く言われてきたが、検索エンジンにしてもキーワードを入れなければ使うことができない。リテラシーがある程度高い人でないと、自分の発想以上のものをプル型メディアで発見するのは難しい。RTは自分の興味を拡張してくれる。 TLで勝手に情報を流してくれるツイッターは、発信できるプッシュメディアでもあり、この面ではこれまでネットに弱かった新聞社が健闘している。国内のフォロー数を見ても、朝日新聞が3位(15万6680)、毎日新聞が4位(14万6228)と上位に食い込んでいる。ネットへの展開が積極的になってきたという状況に加え、プッシュ型という特徴が従来のマスメディアと親和性があるからだろう。 6位のヤフーショッピング(12万1629)は「ファッションカテゴリで、15時までランチタイムバーゲン」とつぶやいたりする。これは、テレビショッピングと似ている。速報であれ、タイムセールであれ「時間軸」がポイントだ。 ■過去のメディアと何が違うか それではツイッターは新しいマスメディアなのだろうか。これまでのマスメディアと決定的に違うのは、プッシュされてくる情報の中に自分が能動的に情報を発信して加えることができる点だ。それによって、メディアがインフレーションしていき、ますます貴重になっていく時間を共有しているという感覚が生み出されている。 録画機材の発達や生活リズムの多様化で、人々はマスメディアのプッシュに同時性を感じられなくなってきている(テレビドラマが翌日に会社や学校で話題になることが少ないように)。プルも能動的だけに同時性が薄い。 ブログでは体験の共有(追体験として)はできるが、時間を共有するのが難しかった。もはや、メディアで同時性を感じるためには、情報のプッシュに加えて、そこにアクションを起こすことができる、つまりインタラクティブなコミュニケーションを感じさせることが必要となっている。 似たようなものとして、動画共有サイト「ニコニコ動画」の生放送、先の衆院選で日本テレビが試したデータ放送を使ったコメント表示、「ドラゴンクエスト9」などで利用されている「ニンテンドーDS」の「すれちがい通信」機能などがある。ツイッターも含め、機能やインターフェースが不十分ではあるかもしれないが、プッシュとプルの双方をカバーしようとしている。 ■新しいパラダイムの入り口 モバイル機器に搭載されたGPS(全地球測位システム)の利用がより進めば、ネットは時間に加えて場所もカバーできるようになる。ツイッターやリアルタイム検索といったリアルタイムウェブを語る際、リアルタイム性ばかりが注目されるが、重要なのは、「プッシュとプル」「時間と場所」「過去と現在」を同時に、または組み合わせて扱えるメディアであることだ。 そのようなメディアはこれまで存在しなかった。時間と場所が加わった膨大なデータを活用し、新たなサービスが生み出されてくるだろう。ツイッターはリアルタイムウェブという新しいパラダイムの入り口に過ぎない。 [2009年10月16日] ● 関連記事● 関連リンク● 記事一覧
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