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更新:3月14日 10:30インターネット:最新ニュース

劣勢に立つコンテンツ業界を救う手はあるか・MCF岸原事務局長に聞く

 総務省主導で導入に動き出した未成年者向けの携帯フィルタリング。ユーザーの閲覧自由を奪う、コンテンツ産業の振興を阻害するといった意見はあるものの、「ネット・携帯の闇から子供たちを守れ」という声に押されて議論が賛否に単純化されている感がある。また、フィルタリングや有害コンテンツ対応に関わる人々の思惑が複雑に絡み合っていることも理解を難しくしている。(ガ島流ネット社会学)

 そこで、キーパーソンにインタビューすることで、何が起きているかを浮かび上がらせたいと思う。1回目は、携帯コンテンツ事業者の業界団体であり、サイトの健全性を判断する第三者機関の設立も呼びかけているモバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)の岸原孝昌事務局長のインタビューをお届けする。

■劣勢に立つサービス業界

岸原孝昌事務局長

 「フィルタリングは魔法の杖ではない。利用履歴の確認という方法もある。問題は、未成年者を守るための対策がフィルタリングしかないと思い込み、どのようなものかわからないがフィルタリングを入れてくれという状況になっていること」「業界としてフィルタリングそのものに反対ではないが、まず悪意を持っている人たちを排除するべき」「学校裏サイトが問題といわれるが、裏サイトがなくなったらいじめがなくなるなんてないでしょう」

 東京・JR恵比寿駅から徒歩5分ほどの場所にあるMCFの会議室で岸原氏はフィルタリングをめぐる議論について熱心に語ってくれた。

 MCFに代表されるサービス事業者は守勢に立たされており、建設的な議論のためにていねいに説明しても、マスメディアには単純に「フィルタリング反対」と分類されてしまうこともあるという。MCFは、最終的にユーザーがそれぞれの利用実態に合わせてフィルタリングレベルを選択できるよう、キャリアなどに求めている。

■コンテンツ事業者の意見を集約

 フィルタリング議論の中心となっているMCFだが、そもそもどのような団体なのだろうか。

 加入企業は、ディー・エヌ・エーや魔法のiらんど、ドワンゴといった携帯向けサービス事業者だけでなく、グーグル、アマゾンといった外資系ネット企業、携帯キャリアのNTTドコモやKDDI、伊藤忠商事など約300社。1996年にインターネット家電の普及とコンテンツの育成を目的として設立された「イージーインターネット協会」が母体で、1999年にiモードサービス開始時にセミナーを行ったのがきっかけで「フォーラム」が立ち上がった。

 ビジネスの交流を深める「場」から、業界団体として意見集約をするようになったのは第三世代携帯の登場時から。以後、迷惑メール対策、出会い系サイト規制、統計の発表なども行っている。そもそも、業界の意見を集約させて何かをやろうと始まったわけではないので、いまでも産業振興の側面が強い。フィルタリング問題に関しては、同じ会員でもキャリアとコンテンツ事業者でスタンスが異なるが、MCFはコンテンツ事業者の立場を代表して発言している。

■キャリア以外のフィルタリングという選択肢

 フィルタリングには、閲覧を公式サイトなど特定のサイトに限定する「ホワイトリスト」方式と有害情報サイトを遮断する「ブラックリスト」方式があるが、どちらも問題があるというのがMCFの見解だ。

 ホワイトリストでは、公式サイト以外のいわゆる勝手サイトが利用できなくなる。ブラックリストは、フィルタリング会社が作ったアダルト、ブログ、コミュニティーサイトといったカテゴリーリストを利用してキャリアがフィルターをかける。サイトが本当に有害か健全かに関わらずカテゴリー単位で一律に制限してしまうため、モバゲーのようにユーザーが支持している人気サイトもアクセスできなくなってしまう。

ブラックリスト方式の携帯フィルタリングのしくみ。フィルタリング会社はサイトを分類したリストを提供。どのカテゴリーを制限するかは携帯キャリアが決める<フィルタリング技術を提供するネットスターの資料より>

 「いくらフィルタリングを厳しくしても青少年が携帯サイトを通じてコミュニケーションしたいという需要はある。厳しくすると禁酒法のようにアングラなところに行くしかなくなる。法律を守る人ばかりじゃない」として、MCFではキャリアが決める通信レイヤーでのフィルタリングだけでなく、コンテンツレイヤーでのフィルタリングという選択肢を作るため第三者機関の設立に動いている。

 現在、準備委員会(座長は堀部政男一橋大学名誉教授、座長代理は中村伊知哉慶応大学教授、オブザーバーとして総務省担当者も入る)による議論が続いており、3月末までの設立を目指している。運営はMCFとは切り離し、将来的にはMCFは産業育成、第三者機関は認証機関とすみ分ける方向だ。

 第三者機関は、サイトの審査、定期的なチェック、教育プログラムの開発の3つを担う。気になる、サイトの審査はどのようなものになるのか。

 「サイトにあるコンテンツの健全性・有害性そのものを判断するのではなく、監視制度、教育などサイトを健全化させる仕組みがあるか、取り組みが行われているかどうかを判断することになる。ISOやプライバシーマークと似た仕組みと考えてもらえれば分かりやすいのではないか」

 携帯電話のユーザーIDを利用した年齢の確認、悪質なユーザーへのコミュニティーサイトからの締め出しなども検討している。

 「インターネットはいままでリテラシーが高い一部の人が使っていたのでリアルの世界より安全だった。ネットでは、歩いていて車にはねられるといった身体に関わる危険はほとんどなかった。ネットワークを遮断すればよかった」「しかし、いまでは影響力も大きくなり、そうはいかなくなっている。第三者機関ではユーザーへの教育プログラムも作っていく。我々だけでできることは限りがあるので、学校や親にも協力してもらわないといけない。皆でやっていく必要がある」

■がんばる人が認められる社会に

 MCFは第三者機関の設立に動き、健全化の仕組みを持ったサイトと悪質なサイトを区別しようとしているが、「携帯事業者は儲けすぎている」といった批判があることも事実だ。インターネットは社会のインフラとなり、特に携帯は若年層に広く利用されている。そのためマスメディアを中心に、厳しい目が注がれている。

 「これまでは携帯事業者はユーザーだけを向いていればよかったが、いまは世の中で負の部分に光があたっている。そのときは社会全体に注意を向ける必要がある。運営を透明にしていくべきだ」。総務省の委員会、マスメディアへの資料提供だけでなく政治家へのロビー活動の必要性も感じている。「業界から政治家に働きかけるというとイメージが悪いが、インターネット業界の要望や取り組みを分かる言葉で伝えていかなければならない。理解してくれる議員もいる」という。

 第三者機関を作ってサイトの審査も行う。そうなっても課題は残る。岸原氏が気にしていたのは「責任を押し付けあう」社会状況だ。

 「仕組みを作って、一生懸命頑張ってケアしていても、何か起きるとすべて悪いという話になる。携帯フィルタリングに関していえば、父兄は学校に、学校は携帯キャリアに、さらに事業者が悪いと責任を押し付けあっている。それでは真面目に対応するインセンティブが働かない。頑張っている人たちが認められる世の中になってほしい」。

-筆者紹介-

藤代 裕之(ふじしろ ひろゆき)

ブロガー@ガ島通信

略歴

 1973年徳島県生まれ。立教大学21世紀社会デザイン研究科修了。広島大学文学部哲学科卒業後、徳島新聞社に入社。社会部で司法・警察、地方部で地方自治などを取材。文化部では、中高生向け紙面のリニューアルを担当し「若者の新聞離れ」対策に取り組む。徳島大学付属病院医療情報部助手を経て、マイネット・ジャパンアドバイザーなど。
2004年9月にブログ「ガ島通信」をスタート。メディアやジャーナリズムに関する議論から身辺雑記まで、幅広い内容を発信中。「ブログ・ジャーナリズム」(野良舎)、「メディア・イノベーションの衝撃」(日本評論社)。北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)サイエンスライティング担当。

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