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更新:8月13日 12:00インターネット:最新ニュース

ネット規制や閲覧制限は必要か・専門家はこう見た’08夏(3)

 IT PLUS恒例の夏の識者アンケート第3回のテーマは、「ネット規制や閲覧制限は必要か」。2008年に入り、携帯電話向けサイトのフィルタリングを巡る議論がインターネット全体の有害コンテンツ対策や閲覧規制にまで拡大し、青少年ネット規制法が制定された。ネット規制の是非について、連載コラムニストやIT分野を中心とする専門家に聞いた。

 青少年をネットの有害情報から保護しようという規制の動きは昨年末以降、総務相が携帯フィルタリングの原則義務化を業界に要請する一方、自民党の青少年特別委員会が規制法案を検討するなど、各方面から進んだ。民間事業者からは相次いで反対の声が上がったが、結局、先の通常国会で規制法が成立。今後はさらに、青少年にとどまらない有害情報、違法情報への規制も検討されており、政府による検閲行為につながりかねないとの懸念も出ている。

【質問3】 今年上半期に巻き起こった携帯サイトを巡るフィルタリング論争。学校裏サイトや硫化水素自殺など、ネットの規制強化は何か事件が起きるたびに今後も議論を呼ぶことが想定されます。いま以上の有害コンテンツ対策や閲覧制限は必要だと思いますか。必要な場合、政府による法制度の整備、業界による自主規制など、どのような手段が適当でしょうか。(識者名のあいうえお順で掲載、敬称略)

■これまでの質問
【質問1】 ネット時代の著作権、権利者保護か流通優先か
【質問2】 「iPhone」上陸で日本のモバイルは変わるか

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特集:携帯フィルタリングの焦点

インテック・ネットコア代表取締役社長

荒野 高志


弱者保護にもバランスを

 「官製不況」という言葉があるようですが、弱者保護の名のもとにさまざまな規制が広がりつつあり、それが消費を抑え、イノベーションを起こりにくくし、経済を痛めつけています。個人情報保護法、建築基準法改正や一連の消費者向け金融サービスの法改正をはじめとして、ネット規制もその一つだと考えています。

 弱者保護が悪いわけではありませんが、どうもバランスを欠いている気がするのです。国民が、国に自分を守ってもらおうという一方的な気持ちでいるうちは日本は官製不況から構造的に抜けられないでしょう。本件も対策としては教育の充実が根本的かつ重要であると思います。

ジャーナリスト

石川 温


授業で「ネットの使い方」を教えるべき

 まず必要なのは、フィルタリングを実施するよりも、小学校や中学校で授業として「ネットの使い方」を教えることだと思う。今の子どもと親、そして先生たちはネットの知識を知らなすぎるのではないか。

 「裏サイト」に匿名で書き込みをしても、誰が書いたかなどは簡単に把握できてしまうことを授業で教えるだけで、悪意を持った書き込みへの抑止力になるはずだ。

 かつて、NTTドコモのコンテンツ担当者に話を聞いたとき「フィルタリングを実施することで、大人向けのコンテンツを強化できる」と語っていたことがある。フィルタリングによって子どもと大人を明確に分けることで、大人向けのコンテンツを充実化できる、というわけだ。

 業界による自主規制をうまく機能させれば、新たな世界を構築できる可能性がある。

チームラボ社長

猪子寿之


自殺やいじめを本気で減らしたいのか

 自殺の統計データやいじめの統計データとインターネットの普及もしくはケータイの普及に相関関係がないのに、なぜこんな議論をしないといけないのだろう。インターネットやケータイが出現したことで自殺やいじめが増えたという議論は、根本的に自殺やいじめを減らしたいわけではなく、自由な情報へのアクセスという状態が嫌いなので、ネットの利用を制限するツールとして、自殺やいじめの話題を使っているように思える。

  「自殺やいじめを根本的に減らす方法を考える」、もしくは「自殺を考えている人やいじめにあっている人に周りや社会がどうやって気付いてあげるか」という議論なら、有意義だ。それこそ、ケータイやインターネットが有効そうだけれど。

情報セキュリティ大学院大学教授 兼 横浜市CIO補佐監

内田 勝也


「バイクの三ナイ運動」と同じ

 必要とは思わない。有害コンテンツ対策や閲覧制限をすれば問題が解決するという考えでは昔の「バイクの三ナイ運動」と同じで、何等問題を解決しない。

 一部の保護者達にはフィルタリングを行えば全て解決するといった考えがあり、問題が矮小化されている。

 本来、子供と保護者が向き合う機会として捉えるとか、子供と先生で議論を行う機会にするといったことが求められるはずだが、単に「臭いものに蓋」になっている。

デジタルメディア コンサルタント

江口 靖二


今以上には必要なし

 私も人の親であるが、今以上には必要なし。リアル社会と比較して危険なものがネット上に潜んでいるとは思えない。

中央大学大学院戦略経営研究科助教

折田 明子


構造的な理解が必要

 誰が主体となって取り組むにせよ、匿名性に起因する問題や有害コンテンツ問題については、対立軸ではなく構造的な理解が必要だと思います。実名とそれ以外の名前のコミュニケーションは、情報交換の文脈を使い分けたり、情報の名寄せや関連付けによるプライバシー侵害を防ぐためにも、必要なことと考えます。

 「プロフ」で実名を隠したものの、詳細な個人の嗜好を書き込んだり、ブログやクチコミサイトなど複数サイトで同じ仮名を使い続けることは、本人を特定する手がかりを発信し続けることにつながります。一方でサイトでは高い匿名性を保ちつつも、クレジットカードや口座情報で本人確認が取れるのならば、事件性のある情報発信に対する抑止力も期待できるでしょう。

 このような構造的な理解を徹底することが、有害情報や誹謗中傷の対策としての第一歩ではないでしょうか。具体的には、サービス事業者による判断基準がユーザに示されることを期待したいと思います。

経済評論家、公認会計士

勝間 和代


ある程度の規制と同時にリテラシー教育を

 雑誌と同様にある程度の規制は必要ですが、同時に学校や家庭でのリテラシー教育が重要でしょう。過度な検閲に至らないような歯止めは必要です。

富士通経営執行役 米州副総代表

加藤 幹之


法律と自主規制は使い分けを

 法律による規制は少ないほうが良い。規制が技術や製品開発の妨げになることも多いからだ。しかし、一定の規制がないと、新しい技術や製品自体も社会では受け入れられなくなってしまう。

 要するに、法律と自主規制は択一関係にあるのではなく、場合によって使い分けていくべきもの。

 過去の日本の常識では法律で規制されるような分野でも、インターネットの世界では業界団体による自主規制が大きな役割を果たしている場合がある。インターネットそのものがそうだし、日本では例えば「プロバイダ責任制限法」に関する各種ガイドラインがその一つ。

 こういった「ソフトロー」を上手に使っていくことが、インターネットのような柔軟性が必要な分野では非常に重要だと思える。

早稲田大学大学院国際情報通信研究科客員助教授

境 真良


フィルタリングサービスはポータルの逆バージョン

 強制的かつ画一的な閲覧制限は必要ない。ただし、フィルタリングサービスそのものはもっと伸びてよい。そもそもフィルタリングはポータルの逆バージョンともいうべきサービスであって、それは消費者によって選ばれて進化するものである。業界はこうしたサービスを消費者がシームレスに利用できるよう、フィルタリングサービス向けのAPIを規格化し、開放するなどの措置を講ずるべきではないか。

芸団協実演家著作隣接権センター(CPRA)運営委員

椎名 和夫


規制論議は当然のなりゆき

ネットの良さは、有益、有害を問わず、さまざま雑多な情報にいともたやすくアクセスできることであったと思いますが、それが大衆化した今、何らかの規制をすべきであるとの議論が起きてくるのは、好むと好まざるとにかかわらず、当然のなりゆきだと思います。

日興アントファクトリー海外投資グループ・プリンシパル

肖 宇生


法制度の整備に真剣に取り組むべき

 いまのネットはあらゆる情報が氾濫している。当然ながら有害コンテンツもたくさんある。無法地帯になっているネットをいま以上に規制する必要があると思う。

 ただし、ユーザーを完全に特定できないフィルタリングなどの閲覧制限には限界がある。有害コンテンツそのものへの対策が必要ではないか。

 方法論としては業界による自主規制があるが、それだけでは有効とは思えない。政府が法制度の整備などに真剣に取り組まないといけないだろう。もちろん、有害コンテンツの定義を慎重に行わないとほかのところで混乱が起きる可能性があるが。

 民主主義の侵害など「大義名分」のある反発も出てくると思うが、このまま放置すると未成年だけではなく、成人にも非常に大きな悪影響を与えるだろう。


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