更新:2009年3月11日 13:25インターネット:連載・コラム
中国IT最前線(肖 宇生)中国独自規格の3G開始 最大手チャイナモバイルの試練
中国の3G免許が今年初めに交付され、世界中をヤキモキさせた中国3G時代がようやく幕を開いた。再編を終えた3大キャリアはそれぞれ3Gに照準を合わせた市場戦略を急いでいる。なかでも、中国独自規格「TD-SCDMA」を背負う最大手チャイナモバイルの3G立ち上げに世界のモバイル業界が注目している。 ■アキレス腱の端末開発をてこ入れ 4億6000万人のユーザーを抱え財務上も他の2社を圧倒するチャイナモバイルだが、3Gにおける今一番の急所は端末数の乏しさだ。 先日、チャイナモバイルは中国東北部の最大都市である瀋陽市で、広州、シンセン、上海に続きTD-SCDMAのサービスを正式にスタートした。チャイナモバイルの3G専用番号である188(中国では非常に縁起のいい数字)への関心度が高いためか指定されている販売店に人だかりができたが、結局初日の店頭契約数は381人にとどまった。予約も入れれば1万人を超えているが、それでも出足はあまり芳しくないようだ。 やはり対応機種の少なさが響いている。瀋陽でも9モデルしかなく、しかもほとんど国産メーカーだ。未だに市販できる機種は30〜40モデルしかないと言われ、豊富な端末を揃えているWCDMAとCDMA2000陣営との差は明らかだ。 2G時代に中国市場で圧倒的な強さを誇っていた外資系メーカーは徐々にTD-SCDMA陣営に近づきながらも、総じて様子見のスタンスを崩していない。チャイナモバイルも指をくわえているわけではなく、頻繁にノキアやサムソン、そしてソニー・エリクソンなどのメジャーと接触している。つい最近も、専用基金を立ち上げてメーカーの開発費用の一部を肩代わりする開発促進策に乗り出した。 それでもノキアのTD-SCDMA1号機の発売時期は今年後半になる見込みで、外資のなかでは積極的だったサムソンとLGもまだいくつのモデルを出せるかが明確になっていない。年内目標100モデルと宣言しているチャイナモバイルだが、その達成は開発力のある外資系メーカーをどこまで取り込めるかにかかっている。 ■グーグルと手を組んでiPhoneに対抗
当初注目されていた「iPhone」に関するチャイナモバイルとアップルの交渉は、1年間半の歳月を費やしたものの、物別れに終わったようだ。最近はWCDMA方式のチャイナユニコムがアップルと急接近しているといわれ、チャイナユニコムの3Gの目玉端末として中国に上陸する可能性がある。 一方、チャイナモバイルはグーグルとの関係強化に動いている。2007年に結ばれた協力契約が先日延長され、主にモバイル検索などのアプリケーション開発に力を入れている。さらに、グーグルの携帯プラットフォーム「Android(アンドロイド)」を採用した端末が今年半ばごろにチャイナモバイルから発売されるとの観測も出ている。 チャイナモバイルとアップルの交渉が頓挫したのは、チャイナモバイルがアップルのビジネスモデルに反発したのが一因だが、その象徴でもある「App Store」に似たサービスをチャイナモバイル自身が進めている。そのサービスが「Mobile Mall」だ。 これこそチャイナモバイルの3Gビジネスのコアである。このサービスでネットに強みがあるグーグルの協力が得られれば「鬼に金棒」といえる。アップルまで敵に回すチャイナモバイルの強気もここにある。3Gの普及もこのプラットフォームがどれだけ魅力のあるアプリケーションを生み出せるかにかかっている。 ■ユーザー囲い込みへ割引競争 中国のモバイル業界は2Gと3Gが相当長い期間並存するとみられており、各キャリアにとっては、3Gの新規ユーザー開拓と同時に2Gユーザーの引き止めも重要な課題だ。現時点で実質的に3Gサービスをスタートしたのはチャイナモバイルだけだが、各社とも近い将来の3Gサービス開始を見据えてユーザーの囲い込みに躍起になっている。 CDMA2000の免許を持つチャイナテレコムは先日、自社のユーザーに対して3カ月間限定でネット接続を無料にする販促キャンペーンを打ち出した。これに対しチャイナモバイルは3Gユーザー向けに毎月100元(約1500円)の定額パッケージを検討するとともに、2Gユーザーの通話時の地域間ローミング費用を引き下げるなどの手で応戦しようとしている。 さらに、日本でも流行っている低価格ミニノートパソコンとのセット販売にも乗り出そうとしている。TD-SCDMA方式のデータ通信カードを搭載するようパソコンメーカーに働きかけ、その半オーダーメード製のパソコンに対し1台あたり1000元(約1万5000円)の補助金を出すという。TD-SCDMAのデータ通信製品に対する補助金だけでも今年は100億元(約1500億円)に上る見込みだ。 ■4Gに向け布石打つチャイナモバイル 3Gの立ち上げを急ぐチャイナモバイルだが、実はその目線はすでに4Gに向いている。3Gの設備メーカーには基本的にソフトのアップグレートだけで4G規格である「LTE-TDD」に移行できるようにリクエストし、3G投資の半分くらいは4Gへの投資でもあると言われている。2010年の上海万博期間中にも4Gの実験網を設立する予定だ。 また、世界での発言力を高めるために海外でも活発に活動している。特に、NTTドコモやボーダフォン、T-MobileやOrangeなど世界主要キャリア7社で立ち上げた次世代通信ネットワークの策定組織「NGMN(Next Generation Mobile Networks)」において、主導権を発揮できれば最大のユーザーを抱えるチャイナモバイルの重みもぐっとあがるだろう。 チャイナモバイルは2008年に、「WiiSE(WirelessInternet/IPServiceEnvironment)」「OMS(オープンソースのモバイルOS)」「M2M」など9つの重点プロジェクトを発表した。開発は今まで国内中心だったが、海外の技術を取り込むためにシリコンバレーに新しい研究開発拠点も設立する見込みだ。そこには3Gへの巨額投資で世界のメーカーを引きつけながら4Gへ向けて発言力を高め、最終的にLTE-FDDとLTE-TDDという4Gの2つの方式を融合させて世界の主流キャリアの座を占めようとする戦略が見え隠れしている。その挑戦がどこまでシナリオ通りに進むのか、3G1年目の成否が注目される。 [2009年3月11日] ● 関連リンク● 記事一覧
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