更新:4月27日 11:40デジタル家電&エンタメ:最新ニュース
液晶の「3悪」はどこまで克服されたか 麻倉式テレビ最新事情(上)
ここにきて、ディスプレー業界にも世界不況によるマイナスの影響が出ている。私がとても残念に思っているのは、FED(電界放出型ディスプレー)が登場することなく、会社清算という形になってしまったことだ。(麻倉怜士のニュースEYE) ■未来を切り開くディスプレーだが・・・ 私はかねてから、FEDは有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)と並んで未来を切り開くディスプレーの代表選手だと思っていた。ブラウン管(CRT)のよさと、画素型ディスプレーのよさを非常にうまくミックスしたところに技術があり、将来的にはマスターモニターを中心としたハイエンドの業務用市場での展開が期待されていた。 昨年、日本画質学会が開いたマスターモニターの勉強会では、池上通信機とアストロデザインの2社がFEDを組み込んだモニターを展示した。来場した放送関係者らは、その高精細な映像に非常に驚いていた。彼らにしてみると、モニターテレビのデバイスはあくまでもブラウン管であり、それがなくなる事態を前にブラウン管の画質、画調を継承する画素型ディスプレーを熱く求めているのである。 こういう期待に応えるべく、ソニーなどが出資するエフ・イー・テクノロジーズ(FET)は技術開発を進め、一時はパイオニアが手放す鹿児島工場に2ラインを敷く話になっていた。ところが、リーマンショック以降の金融不安により、資金の出し手がいなくなったというのが量産中止の最大の理由である。 FEDの絵はブラウン管と画素型ディスプレーのいいところを併せ持つ。具体的にいうと、ブラウン管はコントラストがよく、階調性も高い。色みの再現性もよいのだが、唯一フォーカスが悪い。一方、画素型はかなりよくなったとはいえ階調性にまだまだ難がある。しかし、フォーカスには優れている。この2つのよいところをとったのが、FEDだった(有機ELも両者を兼ね備えている)。 FEDは、まずは業務用のマスターモニターからスタートし、何年か経ってビジネス基盤ができた段階で民生用に広げるという青写真を描いていたのだが、叶わなくなった。もともとソニーが1998年から開発を進めてきたが、新デバイスとしては有機ELを選び、FEDはカーブアウト(企業の有望な技術を切り出してベンチャー企業を設立し、投資ファンドなどから資金を導入する)という手法で2006年に社外に出た。 今後はFEDの精神や技術、設備をどこかの会社が受け継ぎ、ぜひ素晴らしい芽を絶やさないでほしいと願っている。
■映像にこだわり持つパイオニアも完全撤退 もう1つ残念なのは、パイオニアがディスプレー事業から完全撤退することだ。業務用ではFEDがリードしてきたように、民生用市場で我が国のディスプレー文化を絵作りでリードしてきたのがパイオニアだった。企業論理からすると撤退も選択肢としてはあり得るかもしれないが、ユーザーからしてみると、こだわりを持って映像を作る会社が1社消えてしまうのは残念なことである。 特に重要視したいのは、パイオニアは放送から出発していない唯一のテレビメーカーだということだ。白黒テレビに始まる国内のテレビメーカーは放送受信をメーンのタスクとしてものづくりをしてきたが、パイオニアはそうではない。同社が持っている高品質なパッケージメディアをいかに再生するかというところからスタートした。 まずはレーザーディスクの再生ディスプレーを求め様々にトライしたが、最終的にプラズマディスプレーが最高だという発見に行きついた。パッケージメディアを最大限の高品質で楽しむ姿勢を貫いたことがパイオニアの重要な価値であり、その結果「KURO」というコントラストや階調性が非常に高いディスプレーを生み出した。 昨年、パナソニックに製造設備とパネル開発に関する事業、技術を譲渡した段階では、その結果としてトータルコストを30%くらい抑えられるという見通しがあった。30%下がれば何とかやっていけるという算段だったのだが、特に11月以降の需要急減を受け、コストダウンでは対応しきれなくなったことが撤退の最大の理由となった。高品質な映像を求める立場からすると、かえすがえす残念なことである。 FED、プラズマのような自発光のデバイスで今後に期待できるのは、ソニーの有機ELと、キヤノンが東芝と開発を進めたSED(表面電界ディスプレー)しかない。SEDはまだ商品が出てこないが、大型化が得意なデバイスだ。パイオニアのKUROの意志を継いで、きちんと登場し、いい絵を作ってほしい。 ■春の新製品で「液晶三悪」は改善したか ここまで最近の業界の動きを振り返ったが、実際に店頭に並ぶテレビの春の新製品について、現時点での私の見方をまとめたい。 液晶テレビには従来から基本的な問題点として「液晶三悪」が言われている。1つは動画に残像が残る点だ。 これには大きく2つの理由があり、液晶自体の動画表示速度が遅いことと「インパルス駆動」ではないことが挙げられる。ブラウン管は、一瞬、光っては次にすぐ消えるインパルス駆動だから、動きの軌跡が発生しないが、液晶は次の信号が来るまでホールドしているため、映像が動いた時にその軌跡が残り、動画残像現象が起きる。 もう1つは視野角の問題だ。真に対すると正しい色や階調が再現されるが、横から見るとコントラストが低くなったり色が変わったりする。 3番目はコントラストだ。特に暗いところで見たときのコントラストが低い。これはバックライトを常時つけたままにするため、液晶層で遮断したとしても光が漏れてしまうことが原因だ。これらは昨秋以降から抜本的な対策がとられてきたが、今春のモデルではさらに改善が進んだ。 次ページ>>動画の「尾引きノイズ」が軽減 << 前のページへ 1 [ 2 ] [ 3 ] 次のページへ >> ● 関連記事● 関連リンク● 記事一覧
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