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更新:12月27日 09:20デジタル家電&エンタメ:最新ニュース

07年ハイビジョンムーブメント爆発(上)ホームシアターが完全HD化

 2007年はオーディオビジュアル、特にハイビジョンの展開において非常に有意義な年であった。なかでも大きな展開があったといえるのはホームシアター分野だ。ホームシアターにおいて川上から川下にいたる全ての分野――ソース機器・信号処理装置・ディスプレー機器――が本格的なハイクオリティーに移ったのが今年だろう。ハイビジョンムーブメントという文脈において、今年のAV界のニュースを1位から5位までランキングをつけて解説したい。(麻倉怜士のニュースEYE)

≪第5位 HDオーディオの本格離陸≫

 HDオーディオとは従来のDVDで使われていたオーディオフォーマットの音質を遙かに凌駕するマルチチャンネルフォーマットのことだ。映像がSDからHDになりハイビジョンのすばらしさが普及しているなかにあって、これまで音声はその流れから取り残されていた。それが、今年の秋以降、革命的なクオリティーアップを実現したのである。その舞台は次世代DVDだ。

■映像はHD化したのに音声はHDでなかった

 HDオーディオとは何か。従来、DVDでの音声は2チャンネルのリニアPCM、5.1チャンネルのドルビーデジタル、DTSという3つのフォーマットが採用されていた。2チャンネルなら非圧縮のリニアPCMが収録できるが、5.1チャンネルはその分、信号量が増えるため、高圧縮の音声圧縮方式を採用せざるを得なかった。そこでは、384kbpsまで圧縮したドルビーデジタルとCD帯域の1.5Mbpsで5.1チャンネルを転送するDTSという2つの方式が競い合っていた。しかし、それらはいずれもロッシー圧縮(非可逆圧縮)であり、かならず音声劣化が発生していた。

 今日、DVDが次世代DVDになり画質がHDになったのに、音声が従来のままでは、どう考えても音声と画像がアンバランスになる――ということから、開発されたのがHDオーディオだ。ロスレス圧縮を経て符号が完全に復活するドルビーのTrueHD、DTSのDTS-HDマスターオーディオの2種類が開発された。さらにリニアPCMにてマルチチャンネルモードも採用された。この3種類がHDオーディオだ。

 実はソフト的には先行していて、HD-DVD、ブルーレイ・ディスク(BD)がスタートした06年から一部のソフトディスクには、それらのうちひとつの信号が入っていた。だが、それを再生するプレーヤーもAVアンプも06年の段階ではまったく存在しなかったのである。そこへようやく、07年の秋になりHDオーディオのソース機器、インターフェイス、AVアンプが完全に揃った。ソース機器については各社のBDレコーダー、そして東芝のHD-DVDプレーヤーのいずれもがデジタルストリームのHDオーディオの出力機能を持つHDMI端子 Ver.1.3aを使ってAVアンプに転送している。

■次世代DVDならではの高音質が再現できるように

ソニーのHDオーディオ対応AVアンプ「TA-DA5300ES」

 HDオーディオの採用で大きく変化したのがAVアンプだ。今年のAVアンプは、オンキョーの製品を皮切りにパイオニア、ヤマハ、ソニーといった大手が全て対応した。このことはきわめて大きなインパクトを市場にもたらし、秋には前年同月比で2倍から3倍もの売り上げを記録している。

 AVアンプを新調し、プレーヤーを新調し、次世代DVDならではの高音質を楽しみたいと思っていたユーザーがいかに多いか。11月に開かれた某AV専門店のイベントでは2日間で1億円の売り上げがあったと聞いているが、その多くはAVアンプの売り上げで占められたという。特に高額な製品が売れた。買いたいというマグマが地殻変動を起こし爆発的な状態になったのだ。

 06年の段階では、プレーヤーやレコーダーは登場し、ソフトも発売されていたが、音声が従来のドルビーデジタルしか再生できないとか、HDオーディオでもアナログに変えてしか出力できないプレーヤーがほとんどだった。完全な意味でのHDオーディオクオリティーが再現できるようになったことに、大きな意義があるのである。

 ここからはマニアックな話になるが、完全に音が戻るという触れ込みのロスレスコーデックであるが、ドルビーとDTSの2つは、かなり音調が違うことが話題になっている。私の様々なディスクを聞いた経験では、ドルビーTrueHDはくっきりしゃっきりして細かい情報まで明晰に再現する。一方、DTS-HDマスターオーディオは、どっしりと落ち着いていて余裕感がある磐石な音という感じがする。考えればロッシーなドルビーデジタルとDTSでもそんな違いがあった記憶があり、会社の個性が音に表れていてとても興味深い。

≪4位 フロントプロジェクターはフルHDの時代へ≫

 音声のドメインでの進歩だけでなく、映像での進歩としてプロジェクターが完全にフルHD時代を迎えたことは、07年の大きな話題だ。「完全に」という意味は、06年の段階では秋にフルHDのプロジェクターが登場したが、市場には720p解像度のハイビジョンプロジェクターがかなり存在していた。ところが今年はもはやそうした低い解像度のものは存在理由がなくなった。その代わり透過型液晶陣営のエプソン、松下電器産業、三洋電機、三菱電機はフルハイビジョンを完全に主力に据え、LCoS陣営のビクターやソニーもやはりフルハイビジョンプロジェクターを強化してきた。

■漆黒の宇宙で星がきらめくコントラスト比

 トレンドとしては画質が非常に上がってきたこと、画質のメルクマールとしてはコントラストがある。解像度はフルHDということでは同じなのだが、コントラストの値いかんで、実際の見た目の画質は凄く違う。それは、例えば、エプソンである。エプソンは06年からフルHDプロジェクターを発売していたが、しかし、さっぱり振るわなかった。ところが、07年は一躍スターダムにのしあがった。これは、コントラストを大幅改良したことによる映像表現力の恩恵に他ならない。

 一般に透過型液晶プロジェクターの場合、シャッターでランプ光を抑えても黒が浮いてしまうことが多く、アクティブアイリスという自動適応型露出制御メカニズムが採用されるのが普通である。暗いシーンでは露出を絞り、明るいシーンでは開くことによってコントラスト感を上げるという機構である。ところが、エプソンはこれに頼ることなく光学系での偏光フィルターの工夫の向上によって1300対1から5000対1へと大幅なコントラスト向上を成し遂げている。

 それは例えばスターウォーズの冒頭の、漆黒の宇宙に星がきらめく表現。アクティブアイリスでは絞るから星が瞬かない。それが、ネイティブコントラストで高い値があると宇宙の漆黒感と星のきらめきが同時に得られるのである。そんな映像を大画面で見たときの感動、そして音声がHDオーディオになった時の、すばらしい音と映像の感動は筆舌に尽くしがたい。

■小細工をしない本物感が支持されたビクター

3万対1のコントラストを実現した日本ビクターの家庭用高級プロジェクター「DLA―HD100」

 実はこの路線で大成功を収めたのがビクターである。06年の段階でもビクターのLCoS素子、D−ILAを使ったプロジェクターはコントラストが1万5000対1と圧倒的だった。06年も覇者であったが、今年はさらに強化され、3万対1という未曾有の数字を獲得している。ビクターの画質向上は市場を強く刺激した。前述のAV販売店の年末イベントではプロジェクターの販売台数シェアの大部分をビクターのD−ILAプロジェクターが占めた。高いモデルを中心にして売れたのが関係者をして驚かしめた。

 このことからひとつのことが言える。ハイビジョンエンターテインメントという大画面を楽しむプロジェクターでは開発側のエクスキューズのない、本物の画質を表現している製品に支持が集まったということだ。ものづくりにおいて、真剣に取り組み、小細工をしない形で素晴らしい画質を獲得することが、非常に重要なのではないかと販売数字から読み取れるのである。来年は本格的な形での絵作りにチャレンジしたプロジェクターの登場を楽しみにしたい。

※1位〜3位は12月28日に掲載予定です。

[2007年12月27日]

-筆者紹介-

麻倉 怜士(あさくら れいじ)

日本画質学会副会長
デジタル・メディア評論家

略歴

 1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社を経て、プレジデント社入社。 雑誌『プレジデント』副編集長、雑誌『ノートブックパソコン研究』編集長を経て、1991年に、オーディオ・ビジュアル/デジタル・メディア評論家として独立。
 日本画質学会副会長。自宅に150インチのシアターを設置しハード、ソフトの研究を行っている。デジタルAV機器、ネットワークの動向に詳しい。
 最新著作『オーディオの作法』(ソフトバンク新書)は「音楽を楽しむために良い音とつき合う方法」を64の作法にまとめたオーディオ実践書。音楽が好きで、オーディオに興味を持ちたい人に向け、分かりやすく解説している。
 著書は他に『絶対ハイビジョン主義 これからが楽しいテレビ生活』(アスキー・メディアワークス)、『やっぱり楽しいオーディオ生活』(アスキー新書)、『松下電器のBlu-rayDisc大戦略』(日経BP社)、『イロハソニー ブラビアイロノヒミツ』(日経BP企画)などがある。

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