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更新:4月24日 12:20デジタル家電&エンタメ:最新ニュース

発表カウントダウン「PSP2」 勝利のカギはオープン度

 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「プレイステーション・ポータブル(PSP)」の後継機「PSP2」についての情報がメディアやネット上で飛び交っている。それらを整理しつつ、いずれくるであろう正式発表のときに注目したいビジネス面のポイントを考えた。(新清士のゲームスクランブル)

 4月に入ってから、欧米メディアを中心にPSP2関連の報道が激しさを増している。ネット上でも、PSP2の精巧なデザイン画像など多数の画像が溢れており、どこまでが事実なのか簡単には判断が付かない。

 PSP2の未確認情報が話題に上るのは、6月2日から4日にかけて米ロサンゼルスで開催されるゲーム見本市「E3」でPSP2が正式発表されるという観測が強まっているからだ。

 3月の「ゲーム開発者会議(GDC)」でも、非公式な議論の場ではPSP2に関心が集まっていた。世界の大手ゲーム会社には情報の開示が始まっているようだが、ソニーグループの関係者であっても広く伝わっている様子はなく、ごく一部の有力企業に限られた段階のようだ。ただ、PSP2の発表が近いことは確かだろう。

現行のPSP-3000シリーズ

■「UMD」を捨てるのか?

 様々なメディアで報道されている情報を総合すると、PSP2のスペックのポイントは以下のようになる。

・「UMD」ドライブは非搭載。ゲームソフトはインターネットからのダウンロードによる流通を基本とする
・16ギガバイト以上の容量の大きいフラッシュメモリーを搭載する
・E3で発表され、2009年末に発売になる

 タッチスクリーンや電話機能を搭載するといった説もあるが、確度は比較的低い情報とされているようだ。09年末に発売というのも、日程が近いために議論が分かれている。

 ただ、ソニーが携帯デバイス向けのメディアフォーマットとしての「UMD」を廃止し、ネット流通に全面移行するという点は多くのメディアで共通しており、可能性は高そうだ。

■違法コピーに強いネット流通モデル

 4月21日付の米Gamasutra誌におけるSCEA(SCE米国法人)のマーケティング担当副社長ジュリー・ハン氏のインタビューでは、PSPで起きている違法コピー問題を取り上げている。ハン氏は「違法コピーがPSPのソフトウエア販売の多くを奪い去っていると確信している」と述べ、「SCEがこの問題にどう対応できるのかについて多数の時間を費やしている」と対策を強化していく姿勢を示した。

 もちろん、直接的にPSP2について述べたコメントではないが、PSP2の方向性のヒントは読みとれる。端末内部にあるフラッシュメモリーへのダウンロード型にすることで、違法コピーに対する堅牢性は格段に高くなるからだ。

■携帯機ではインターネット上のサービスが主力に

 一方、ビジネスモデルの観点から注目すべきなのは、SCEがどこまで開かれたハードウエアとして、PSP2を定義してくるのかという点だ。

 初代PSPが新しかったのは、音楽や映像をリムーバブルメディア(メモリースティック)を通じて追加できるようにし、メディアプレーヤーの側面を持たせたところにある。これが、任天堂の「ゲームボーイ」をはじめとする過去の携帯ゲーム機との大きな違いだった。

ゲームボーイ時代のスキーム。ハードとゲームの一種類しかなかった

 ただ、収益の基本構造は、UMDのディスク製造に伴いゲームソフト会社から徴収するライセンス料であり、PSP登場以前と変わっていない。ユーザーがパソコン経由で追加する音楽や映像データは収益を生むことがない。SCEは映像や音楽のダウンロード販売も展開したが、結局成功しなかった。

PSP時代のスキーム。メディアプレーヤーとしての機能が追加された

 任天堂の「ニンテンドーDSi」も、基本的にはこの従来モデルに近いと考えることができる。メディアプレーヤーの機能は用意されているが、あくまで副次的な要素であり、プラットホーム展開の主力ではない。

 ところが、昨年7月のアップル「iPhone 3G」の登場がこのモデルを大きく揺るがした。アップルはもともと「iPod」向けに「iTunes Store」を通じて、音楽や映像コンテンツをネット販売するモデルを取っていた。iPhone 3Gでは、そのモデルをゲームやアプリケーションにも応用し、「App Store」を通じて、アップル自身がライセンス料を徴収できるようにしている。

 重要なのは、アップルにとって直接的な収益にならない無料のアプリケーションについても、配布を認めていることだ。代表的なのは、動画サイト「YouTube」や欧米で人気のあるSNS「Facebook」、インターネット電話「Skype」などである。

 これらのサービスを使うためのアプリケーションがいくら流通したところで、アップルの収益にはあまり貢献しない。それでも、あえて無料と有料の混在させてダウンロードモデルを展開しているところに特徴がある。

iPhone 3Gのスキーム。直接的な収益にならないオープンな要素がかなり追加されている(オレンジとグリーンの部分)

 ユーザーが利用するのは無料サービスの方が多いであろう。しかし、そうした無料サービスを認めることで、ユーザーの生活の中で常に手元にあるパーソナルなメディアデバイスとしての地位をつかんだのである。

■PSP2が抱えている課題

 このビジネスモデルでは、PSP2はiPhoneの後追いとなるため、独自性をどう加味していくかがポイントになるだろう。

 私自身は、SCEは携帯ゲーム機のプラットホームホルダーとして現在最も有利な位置にあると考えている。任天堂は、無料サービスに対して大きく開いたプラットホームにすることにはあまり積極的でない。また、アップルもiPhoneというデバイスの性格上、ゲーム機としての魅力をひたすら追求するのが難しい弱みがある。

 ネット流通への移行は、ハードウエアのスペック以上にサービス設計の重要性が増すということを意味する。そのサービス設計では、数は膨大だが収益になりにくい無料のインターネットサービスと、収益を生み出す有料のライセンスビジネスをどのように混合させるかが鍵となる。

 今後行われるであろうPSP2の正式発表で、着目すべき点を3つ挙げておく。

・ダウンロード型にした場合、どこまでオープンな開発環境を提供するだろうか?
 既存のビジネスモデルと変わらず企業単位での契約しか認めないのか。もしくは、個人で活動するような草の根の開発者にもチャンスを与え、多くのイノベーションを取り込むのだろうか。また、そのための環境を迅速に整えることはできるだろうか。

・価格設定の難しさをどうクリアするのか?
 ユーザーはネット流通でも5000円というような現在のパッケージに近い料金を支払ってくれるだろうか。また、ネット流通による供給過剰が引き起こす価格下落のプレッシャーに対抗できるだろうか。現在のゲーム機は、日米欧それぞれの地域ごとに販売契約が必要であり、販売時期のずれが機会損失を生み出している面がある。その仕組みを変えられるだろうか。

・無料のインターネットサービスをどう位置づけるか?
 収益を得ることは難しいが、Facebookなどのサービスとは連動していくべきだろう。アドビの「Flash」にはどう対応するだろうか。完全対応すると、課金まで含めた独自サービスの展開を可能にしてしまい、SCEは収益機会を奪われることになる。しかし、採用すれば大量の豊富なサービスが流れ込んでくるだろう。

 無料のインターネットサービスの流入は、PSP2をデータが通過するだけのブラウザーハードウエアにする可能性もある。しかし、サービスをどの程度オープンにするかというさじ加減を間違えなければ、これまでの常識を大きく変えるインパクトを生み出すことができる。PSP2は新しい携帯ゲーム機として大成功を収める可能性を持つと考えている。

[2009年4月24日]

-筆者紹介-

新 清士(しん きよし)

ゲームジャーナリスト。立命館大学映像学部講師

略歴

 1970年生まれ。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲーム会社で営業、企画職を経験後、ゲーム産業を中心にリサーチするジャーナリストに。ゲーム開発者を対象とした国際NPO、国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表。コンピュータエンタテインメント協会(CESA)理事。日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)理事。米「ゲームディベロッパーズマガジン」(09年11月号)で「重要な成果を上げたゲーム開発者50人」に選出される。著書に『「侍」はこうして作られた』(新紀元社)
<関連リンク>

国際ゲーム開発者協会日本
E-mail:sakugetu@gmail.com

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