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更新:3月21日 11:20デジタル家電&エンタメ:最新ニュース

700万本ヒット「COD4」が人を熱中させるわけ

 「コールオブデューティ4(COD4)」(プレイステーション3、Xbox360)を遊びながら、なぜ、このゲームが700万本を売り上げるほどの大ヒットになったのかをしりたいと思うようになった。COD4はオンライン対戦の仕組みの完成度が高いと聞いていた。なるほど、実際に30時間も熱中して遊んでしまい、感心した。とにかく、プレイヤーのやる気を持続させるための仕掛けが秀逸なのだ。(新清士のゲームスクランブル)

■実績システムがプレイヤーのやる気をひっぱる

 COD4の場合、目玉のオンライン対戦の仕組みのなかにゲーム独自の「実績システム」が細かく設定されている。

 プレイヤーはゲームの展開に応じて経験値を獲得する。その経験値が蓄積すると、階級が上がる仕組みになっており、二等兵から始め将軍になるまでの55段階に分かれている。

 一つ一つの対戦のゲームプレイは10分程度で終わるものだが、勝っても負けても、働きに応じて一定の経験値は獲得できる。時間をかければ、誰でもいつかはレベルアップする。

 階級が上昇していくと、最初は選択できない新しいゲームモードや、使える武器が増えていく。また、階級に応じて達成すべき目標が様々に設定されている。それぞれの武器で規定の敵を倒すというものだったり、「しゃがんで倒す」「手榴弾で倒す」といった具合に数十種類もこと細かくあり、それをクリアするたびにボーナスの経験値を獲得できるというルールになっている。

 つまり、プレイヤーの選択がありとあらゆる側面でデータとして蓄積され、経験値を上昇させ、より幅の広いプレイをするようにゲームシステムの側がやんわりと強制するような仕組みになっているのだ。その階梯が実に緻密に設計されているから、思わず続けたくなってしまう。

 この仕組みは元々、マイクロソフトが「Xbox360」のサービスとして提案したものだ。ゲーム会社側がゲームのなかに特定のやりこみ要素を1000点分自由に割り振る仕組みで、これがゲーム会社とユーザーに与えた影響は非常に大きい。

 現在、北米でXbox360が強いコミュニティーを生み出せている一因と見られているが、類似のサービスが他のプラットフォームにも広がりつつある。

独自の実績システムを導入したフラッシュゲームサイトの「KONGREGATE」

 「プレイステーション3(PS3)」でも、この春の「Home」の実装に合わせて独自サービスを展開すると噂されている。フラッシュゲームのフリーサイト「KONGREGATE」にも昨年、独自の実績システムが導入された。カジュアルゲームをアップロードする開発者はそれぞれのゲームに難易度別に5点、15点、30点、60点と任意のスコアを設定できる。もちろん、一つの狙いはユーザーの定着率増加だろう。

■ゲーム化すると人は思わず熱中する

 鍵となる要素は、自分のやったことが数値化されると、ゲームらしくなりそれを面白いと感じてしまうところにあるようだ。

 任天堂の宮本茂氏は、「社長が訊く『WiiFit』」というインタビューのなかで、WiiFitの企画を立ち上げる1年前から、「体重を量る」ことを趣味にしていたと述べている。「量るだけダイエット」というのがあるが、これは毎日体重を量り続けるだけで体重の数字を意識するようになり、体重が減少していくという論理だ。体重を量ることそのものがゲーム化しており、それをうまく商品化したのがWiiFitだ。

 人間は自らの活動をデータ化することで、何らかの生産性を引き上げることができる。また、データ化することそのものに、ゲームとしての面白さが潜んでいるのではないかと思われる。

 ゲームに熱中したことがある人は誰でも経験があるだろうが、自分がどこまで目指そうと目標を設定してプレイしているときに、強い熱中状態が生まれる。ゲームがオリジナルのゲームの意味を超えて、別のゲームに、いわばメタゲーム化するときである。

 古くはゲームセンターで特定のゲームのハイスコアを目指してみたり、それをいつまでも維持できるようにがんばってみたりする。それで得られるものは何かというと、ほとんど自己満足に過ぎないが、強いモチベーションとして機能する。

 実績システムは、そのデータの蓄積と評価をソフトの側で自動的に管理することで、複数の評価軸をそろえユーザーに可視化したものだと言える。

 COD4の独自の実績システムは、マイクロソフトの用意した仕組み以上に大量の評価軸を提示し、プレイヤーが様々な結果を生み出すことに価値を感じられるようにしてある。プレイヤーがオンラインプレイの何をやっても、何らかの実績に関係のある得点へと変換され、なんだか意味があるような気分になる仕掛けがしてあるのだ。プレイヤーは実績というあまり意味がない報酬であっても、脳は幸せを感じてしまうもののようだ。

■日常の生活をゲーム化させる試み

 この人間の特定行動の結果を蓄積しデータに転換する仕組みは、今後社会のなかで様々なツールの登場とともに導入が進むと思われる。その仕組みにゲーム的な要素を組み込むことが重要な価値を持つと考えられる。

 ゲームデザイナーのジャスティン・ホール氏のベンチャー企業GameLayersは、「Passively Multiplayer Online Game(受け身のマルチプレイヤーオンラインゲーム)」というサービスのベータ版をスタートしている。これは、ブラウザーのFireFox用のプラグインとしてリリースされたゲームで、ウェブ上をネットサーフィンしている間に様々な情報を蓄積していき、それをゲームのデータへと転換していくというゲームだ。

 ユーザーは「データポイント」という通貨に当たるものを蓄積し、職業を選択する。そして与えられた仕事をネットサーフィンしながらクリアすることで経験値をため込んでいく。ユーザーのネットサーフィンという日常生活自体を、ゲームという枠組みに取り込もうという狙いだ。

 Googleなどの検索エンジンが一般化し、ネット上のデータを収集する仕組みは定着した。一方で、同じようにどこかから集めたデータをゲーム的に点数化し、別のモチベーションを喚起させる試みも一般化が進もうとしている。

 今はソフトウエアを中心に行われているが、いずれはハードウエア、例えば掃除機のようなものにも実績システムが組み込まれるようになるのではないだろうか。「前日よりカーペットのダニの量が少ない状態を5日続けたら、10ポイント」といった具合に。

 ありとあらゆるものに実績システムが組み込まれるような時代がやってくるのも、そんなに遠くない気がしている。

「コールオブデューティ4」
http://www.activision.co.jp/cod4/index.html

KONGREGATE
http://www.kongregate.com/

社長が訊く「WiiFit」
http://wii.com/jp/articles/wii-fit/crv/vol1/index.html

The Passively Multiplayer Online Game
http://pmog.com/

[2008年3月21日]

-筆者紹介-

新 清士(しん きよし)

ゲームジャーナリスト。立命館大学映像学部講師

略歴

 1970年生まれ。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲーム会社で営業、企画職を経験後、ゲーム産業を中心にリサーチするジャーナリストに。ゲーム開発者を対象とした国際NPO、国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表。コンピュータエンタテインメント協会(CESA)理事。日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)理事。米「ゲームディベロッパーズマガジン」(09年11月号)で「重要な成果を上げたゲーム開発者50人」に選出される。著書に『「侍」はこうして作られた』(新紀元社)
<関連リンク>

国際ゲーム開発者協会日本
E-mail:sakugetu@gmail.com

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