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更新:11月20日 13:58デジタル家電&エンタメ:最新ニュース

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■アプリは販売収入より広告で稼ぐ時代?

 この携帯電話向け市場でスマートフォンが重要な位置を占めていることは、AdMobが毎月リリースしている「AdMobモバイル調査指標レポート」を見ても明らかだ。

 最新の9月版によると、AdMobを利用している携帯デバイスは、1位がiPhone、2位がiPod Touch、3位がAndroid携帯の「HTC Dream」となっている。07年、08年の同時期はモトローラの薄型携帯が上位を占めていたが、この1年でAdMobの主要な配信先は大きく変化した。

 しかも、それらのスマートフォンユーザーは、アプリの平均使用時間も長く、iPhoneで1日84分、iPod Touchで121分、Androidで88分という。一日の中で、かなりの時間をアプリの利用に費やしている。

 この結果、スマートフォン向けの人気アプリでは、販売収入より広告収入の方が大きくなるという逆転現象も起き始めている。スマートフォン向けアプリの平均販売価格は2ドル以下と低価格化が激しいためだ。

 iPhone向けに音楽リズムゲーム「Tap Tap Revenge」シリーズをリリースしているTapulousは今年9月、同社のアプリではAdMobの広告を独占的に使用すると発表した。このシリーズは無料版も含めるとダウンロード数が1500万に達する。

 Tapulousのバート・デクリームCEOが米「Silicon Alley Insider」誌に明らかにしたところでは、1カ月の広告の表示数は約1億回に上り、広告収入の相場が1000回表示で4ドルとすれば月間40万ドルの広告収入を得られる可能性があるという。

iPhoneアプリのジャンルごとの使用時間の推移(Pinch Mediaの資料より)

■ゲームはアプリ内広告向き

 また、同じような広告ソリューションを提供している米Pinch Mediaは、2月に公開したプレゼンテーション資料の中で、有料アプリと無料アプリではダウンロード数や継続して使用される比率にどの程度の違いがあるかを示している。ユニークユーザー数は、無料アプリは有料アプリの7.5倍、アプリに費やす時間も無料アプリは有料アプリの3.9倍という。

 こうしたデータは、スマートフォン向けにアプリを開発するゲーム企業が収支計画を立てるうえで、無視できないものになるだろう。人気アプリであれば、無料バージョンをリリースして広告ソリューションを使った方が収益性が高まる可能性があるからだ。

 ちなみにゲームは、他の分野のアプリに比べて利用される時間が長いといわれる。ダウンロード当初は1日10分程度、30日後も7分程度とされ、他のジャンルの平均4〜5分に比べてかなり高い。ゲームはディスプレー広告に向いたジャンルなのだ。

■急成長と大型買収の背後にある存在

 今回、グーグルはAdMobに7億5000万ドルという値を付けた。これは携帯電話向け広告の将来性をそれだけ高く見積もった結果だが、もう一点、見逃せない要因がある。AdMobにしても、先週取り上げたPlayfishにしても、その背後にはベンチャーキャピタル(VC)などの投資ファンドの存在がある。それが企業成長のスピードを加速させ、短期間に企業価値を高める推進力となった。

 どちらの企業とも、設立当初に複数のVCから投資を受けた。特に、AdMobとPlayfishの両方に投資している米Accel Partnersは、60億ドル以上の運用資金を持ち、IT分野を中心に300社以上の企業設立に関わっている。同社は、Facebookにも設立翌年の05年に1300万ドルを投資しており、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やその関連サービスが持つ可能性を早くから見出していた。

 今回のAdMobとPlayfishの買収劇についても、VCが交渉に深く関与したのは間違いない。VCから2100万ドルの投資を受けたPlayfishは3億ドルで米エレクトロニックアーツ(EA)に買収された。同じくVCから4720万ドルの投資を受けたAdMobの買収額は7億5000万ドル。わずか2〜3年の投資期間でリターンは10倍以上という結果になっている。

 AdMobの創設者であるオマール・ハモウイCEOは、06年の会社設立時はペンシルバニア大学のMBAコースに所属する28歳の学生だった。リーマンショックという事態にもかかわらず、若い経営者が新市場にいち早く目をつけ、ファンドの資金が起業を後押しし、大企業への買収で出口戦略を完了させるという産業創出のサイクルは機能し続けている。日本との差は歴然だ。

■日本市場ではまだチャンスも

 グーグルにとってAdMobの買収は、急成長するスマートフォン向けの広告プラットホームを一から構築するのにかかる「時間」を買ったことを意味する。同時に、SNSを中心とした「サービス」に投資する段階から、収穫を得るための「事業」に投資する段階へと、局面が移り始めたとも考えられる。

 ただ、日本市場に限っていえば、米国のトレンドが少し遅れてやってくることが少なくない。AdMobのサービスも、日本語の対応はそれほどよいとはいえず、iPhoneアプリを遊んでいても、日本人には関係ない米国の広告ばかりが表示されるという状況だ。

 その隙間を狙えば、北米以外の地域を含めて同様のサービスで勝負しうる余地はまだ残されているかもしれない。

[2009年11月20日]

-筆者紹介-

新 清士(しん きよし)

ゲームジャーナリスト。立命館大学映像学部講師

略歴

 1970年生まれ。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲーム会社で営業、企画職を経験後、ゲーム産業を中心にリサーチするジャーナリストに。ゲーム開発者を対象とした国際NPO、国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表。コンピュータエンタテインメント協会(CESA)理事。日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)理事。米「ゲームディベロッパーズマガジン」(09年11月号)で「重要な成果を上げたゲーム開発者50人」に選出される。著書に『「侍」はこうして作られた』(新紀元社)
<関連リンク>

国際ゲーム開発者協会日本
E-mail:sakugetu@gmail.com

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