ITプラス ビジネスを制する人のIT総合ニュースサイト

音声ブラウザ専用。こちらよりメインメニューへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより記事見出しへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより見出し一覧へ移動可能です。クリック。

NIKKEI NET

ニュース マネー:株や為替、預貯金、投信の最新情報。持ち株チェックも IR:上場企業の投資家向け情報を即時提供 経営:実務に役立つニュース&連載企画。外注先検索も 住宅:新築・賃貸からリゾートまで住宅情報満載、資料請求可能 生活・グルメ:グルメ情報や、健康ニュースなど生活にかかせない情報満載 教育:学びからキャリアアップまで 就職:学生の就職活動を完全サポート、マイページ利用も可能 求人:日経の転職サイトとWeb上の企業ページから自動的に収集した求人情報を掲載 クルマ:クルマ好き応援サイト C-style:ライフスタイルにこだわりを持つ30代男性向けウェブマガジン 日経WOMAN:働く女性のキャリアとライフスタイルをサポートするコンテンツ満載 日経ワガマガ:アタマとカラダを刺激する、大人のためのコミュニティー

更新:2月20日 12:58デジタル家電&エンタメ:最新ニュース

通信対戦機能にトラブルか? ドラクエ9発売延期の原因を推理する

 スクウェア・エニックスが12日、「ドラゴンクエストIX 星空の守り人(ドラクエ9)」の発売日を3月28日から7月11日に延期すると発表した。すでに小売店で予約受付を始めている段階でありながら、3カ月半もの大幅な延期を余儀なくされたのはなぜなのか。(新清士のゲームスクランブル)

 持ち株会社のスクウェア・エニックス・ホールディングスは同じ12日、2008年4―12月期決算と、09年3月期通期の業績見通しの下方修正を発表したが、そこまでの動きは波乱含みだった。

 決算発表はもともと6日の予定だったが、4日になって急遽12日への延期が発表された。業績変動につながる重大な要因を織り込む必要が出たと感じられる部分はあったが、問題はドラクエ9の延期がらみかどうかということだった。

 結局、09年3月期通期の売上高は1600億円から1330億円に、営業利益は210億円から120億円へと大幅に下方修正された。スクエニは3月末までのドラクエ9の販売本数を300万本と見込んでいたようだが、大きく計画変更を迫られた。

「ドラゴンクエストIX」への期待について話す和田洋一社長=08年12月の発売日発表会見

 和田洋一社長は1月15日のロイターとのインタビューで、「営業利益予想210億円は実現できそう」と述べている。そこから考えると、販売延期が経営レベルで検討されたのは1月下旬以降だと思われる。

 発表が12日までずれ込んだのは、7月11日という次の発売日を確定させる調整作業に時間がかかったというのが実情ではないか。12日はすでに、店頭での予約が本格的に始まっていた時期で、ドラクエの発売前情報では圧倒的に強い「週刊少年ジャンプ」(集英社)でも、毎週のキャンペーン展開が進んでいた。今回の発売延期はそれほどドタバタした印象がある。

■「重大な不具合」とは何か

 12日に出されたスクエニのプレスリリースには、延期の理由として「開発中のソフトウェアに重大な不具合のあることが判明」と書かれている。

 問題は、「重大な不具合」とは何かということであろう。どんなゲームであれ、完全にバグが取り切れた状態で発売されることはない。大きなゲームであれば、万単位でバグは現れる。それを潰してまわり問題がなくなると出荷されるが、完全にバグがゼロになることはない。

 ただ、どのゲームでも発売が許されないのが、進行不能バグだ。これはゲーム自体を最後までプレーすることができない状態をいう。厳密なテストを行っても、組み合わせによってはそうしたバグが残る場合があり、ユーザーからのクレームが多発して回収や交換に至ったゲームも少なからずある。

 スクエニも過去に、40万本以上のヒットになったニンテンドーDS版「ファイナルファンタジーIV」(07年12月発売)でこのバグを出してしまい騒ぎになった経験を持つ。発売から1カ月後に謝罪するとともに、回避方法をホームページ上で情報として公開した。進行不能になってしまったユーザーには、インフォメーションセンターに個別に連絡してもらうよう求める形を取り、ゲームの回収までは実施しないで済ませた。

 しかし、今回のドラクエ9の場合は、3カ月半という長期の延期から考えて、かなり大規模に進行不能となる致命的なバグが、多数出る状態なのだろう。

■開発にノウハウ必要な通信対戦

 原因は可能性を推測するしかないが、今回の目玉でもあるワイヤレス通信機能を使った4人対戦のプレーについてのバグが絡んでいるのではないだろうか。

 そもそも通信対戦は安定的にプレーできるようにするのが難しい技術だ。また一人でプレーすることを考えたシステムと通信対戦システムは要求される技術がかなり違う。一人用の側面の強いゲームをそのまま拡張する形で通信対戦機能を追加すると破綻してしまうことが多い。

 オンラインゲーム技術が成熟した欧米圏では、オンラインゲームを開発する場合は最初から通信システムを使うことを前提にしてゲームシステムを作り、それを一人用の開発へと広げるか、同じシステムでも完全に別のものとして対戦型を開発するケースが多い。

 昨年12月に発売された「ファンタシースターZERO」(セガ、DS)は、オンライン対戦を前提としたシステムで、ハード間でやり取りするデータ量が少なくて済むように工夫されている。一人でも遊べるようになっているが、あくまでオンライン用のシステムの上で遊ぶことになる。

 このゲームの対戦プレーは、データ処理を抑えるためにユーザーの操作に敏感に反応しないよう意図的に作っている。また通信対戦の不安定さを補うように、ワンテンポ遅れるような操作感がある。これは、過去の「プレイステーション・ポータブル(PSP)」版などで、セガの開発陣にノウハウが蓄積されていたからできたことだ。

■DSでは過去に例のないシステム

 一方、ドラクエシリーズは、キャラクターの移動と戦闘シーンが分かれているロールプレイングゲームだ。特徴としては、ゲーム内空間を移動している最中にランダムにモンスターが登場(エンカウント)して、戦闘シーンに移行するシステムになっている。

 現時点の発表によると、このシステムは最大4人が参加できるオンライン対戦機能においても同じ形になる予定だ。4人のプレーヤーがそれぞれにゲーム内を移動して、モンスターがそれぞれのプレーヤーにエンカウントをするというシステムになる。プレーヤーは4人で協力することもできるし、一人ひとりでも遊べる仕組みになっている。

 つまり、一人用のゲームとして開発した土台を対戦システムに拡張する形のリスクの大きい開発スタイルをとったのではないかと想像できる。

 また、現状知りうる情報におけるドラクエ9のシステムは、かなり風呂敷が広い。類似のシステムを持ったゲームを過去見たことがなく、DS上でまとめるのは大変そうだと直感的に思う。

 仕組みとしては、オンライン対戦するユーザーの1人のハードが「ホスト」役となり、サーバー化する。そして、他の3人とホスト自身もクライアントとして、ホストのサーバーにアクセスするというシステムになっている。これ自体は、人数を限定したオンラインゲームでは一般的に使われる方法だ。

 ただ、DSは比較的非力なハードであり、サーバー役を果たしているDSが他のハードの様々なエンカウントなど複雑なデータのやり取りをうまくコントロールできるほどの能力があるのかという点が引っかかる。もちろん、そうしたプログラムを書くことはできるだろうが過去に例がなく、開発元のレベルファイブは苦戦しているだろう。

 そもそも、日本にはパソコンの対戦ゲーム文化がなかったため、ゲーム用のオンライン対戦プログラムを書ける技術者が少なく、ノウハウも不足している。ハードウエアの性能をギリギリまで引き出すことを要求されるDS用のサーバー技術の開発経験者はなおさら少ないだろう。

■夏の商戦期での巻き返し狙うが・・・

 現時点までに発表されたゲーム内容に関する情報は断片的であり、オンライン対戦がどの程度、開発の障害になっているのかを断定する証拠はない。ただ、オンライン対戦関連が目玉でありながら、一番発表が遅れている部分でもあった。今後、機能がさりげなく削減されるといったこともあり得るのかもしれない。

 ドラクエの新しい発売日である7月11日は、日本では夏のボーナス期と夏休みの直前にあたる。その商戦期を狙っての設定だろう。ただ、広告戦略などをもう一度ゼロから組み直さなければならないという意味でも、スクエニのダメージは小さいとはいえない。スクエニの今後の世界戦略にも、否応なく影響を与えるだろう。

[2009年2月20日]

-筆者紹介-

新 清士(しん きよし)

ゲームジャーナリスト。立命館大学映像学部講師

略歴

 1970年生まれ。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲーム会社で営業、企画職を経験後、ゲーム産業を中心にリサーチするジャーナリストに。ゲーム開発者を対象とした国際NPO、国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表。コンピュータエンタテインメント協会(CESA)理事。日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)理事。米「ゲームディベロッパーズマガジン」(09年11月号)で「重要な成果を上げたゲーム開発者50人」に選出される。著書に『「侍」はこうして作られた』(新紀元社)
<関連リンク>

国際ゲーム開発者協会日本
E-mail:sakugetu@gmail.com

● 記事一覧