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更新:7月17日 14:06デジタル家電&エンタメ:最新ニュース

カードゲームが大ヒットした理由 ゲームの進化をたどる(下)

 日本で最初に「ゲームデザイナー」という肩書きを使い始めた鈴木銀一郎氏(74)は、「20世紀は、アナログゲームの世界で4つの大きなイノベーションが起きた」という。今回は、そのうちの2つ「キャラクターカードゲーム」と「トレーディングカードゲーム(TCG)」を取り上げ、ゲームの進化をたどる。(新清士のゲームスクランブル)

 前回の「『ドラクエ』へとつながるルーツ ゲームの進化をたどる(上)」では、アナログゲームで起きた4つのイノベーションのうち、戦略シミュレーションの「ウォーゲーム」とロールプレイングゲームの原型である「テーブルトークロールプレイングゲーム」の2つが発展した1970〜80年代後半の動きをみてきた。

■キャラクターを描いた「モンスターメーカー」

 この2つに続く、第3のイノベーションが「キャラクターカードゲーム」である。この分野を切り拓いたのは、鈴木氏がデザインした「モンスターメーカー」(88年)だった。

 カードゲームはウォーゲームのブームが終わるころに登場したが、最初はウォーゲームを抽象化して武器や兵士などをカードにしたものが多かった。一方で、ボードゲームの世界では、テーブルトークRPGが人気だった。

 鈴木氏は新しいゲームを企画するなかで、この2つの要素を組み合わせてはどうかと考えた。「2つの違うジャンルを1つに組み合わせて新ジャンルを作る」というゲーム開発の基本的テクニックを使ったかたちである。

 モンスターメーカーは、カードを出し合いながら、ダンジョンの奥深くまで自分のキャラクターを進め、財宝を見つけて持ち帰った方が勝ちというゲームだ。自分の手札からモンスターを出して相手がダンジョンを進めるのを妨害したり、キャラクターカードで倒したりするシステムになっている。

 このゲームの革新性は、イラストレーターによるかわいらしい絵を使い「キャラクター性」を前面に押し出した点にある。今の時代であれば当たり前のような気がするが、当時のカードゲームは、無味乾燥な記号だけというのが一般的だった。

 鈴木氏が執筆した「RPGカードゲームの作り方」(マイクロデザイン)には、「好きなキャラクターは手札にあっても使わない」というプレー方針を持つ人まで出てきたというエピソードが書かれている。個性的なキャラクターを描くことで、カードはただの紙から「思い入れの対象」に変わり、新たな付加価値が生まれた。

 モンスターメーカーは大ヒットしてシリーズ化され、カードゲームにとどまらず、「ゲームボーイ」などにも移植された。その後、類似のゲームが数多く発売されるのだが、少なくとも日本においては、キャラクター性がゲームに不可欠な要素として定着することになる。

 同時に、現実世界を表現することから離れはじめ、ゲームの中だけに存在する「ゲーム的なリアリティー」を求める形へと変わっていった。

■「マジック・ザ・ギャザリング」から「遊戯王」へ

「マジック・ザ・ギャザリング」公式ページ

 4つめのイノベーションが、93年に数学者リチャード・ガーフィールド氏がデザインした「マジック・ザ・ギャザリング」である。このトレーディングカードゲームというシステムは、様々なバリエーションのカードをプレーヤーが好きに組み合わせて対戦する仕組みで、ゲームシステムの限りない拡張を可能にした。

 そしてビジネスとしても、1つのゲームを単体として売るだけで終わらず、各種のカードを追加発売して継続的に収益を上げることを可能にした。マジック・ザ・ギャザリングの場合、そのバリエーションはすでに数千種類にも達している。

 トレーディングカードゲームは90年代後半に日本でも大きなブームとなり、「ポケットモンスター」や「遊戯王」などが人気を呼んだ。モンスターメーカーシリーズでも発売されている。

 トレーディングカードゲームはユーザーにしてみれば、お金がかかるゲームだ。コレクションに熱中すれば、10万円単位でお金をつぎ込むことも珍しくない。逆に、メーカーからすれば原材料費は安く、ビジネスとして収益性が高い。オンラインゲームのアイテム課金はまさにこのモデルの延長にある。

 4つのイノベーションをもたらしたアナログゲームは日本ではその後、トレーディングカードゲームを除いて、ほとんどが市場から姿を消していった。リアルな対戦相手が必要という制約は大きく、多くのゲームユーザーはビデオゲームに流れた。それはアナログゲーム人気の源流となったアメリカでも同様だ。

 ちなみに、現在のアナログゲームの中心地はドイツである。95年にクラウス・トイバー氏がデザインしたボードゲーム「カタン」など優れたゲームを世界に発信し、新作ゲームが数十万個も売れるほどの人気が続いている。逆にビデオゲーム業界にとってドイツは、ボードゲームと客層がぶつかるために販売が難しい市場として知られている。

■アナログゲームに何を学ぶべきか

 アナログゲームからビデオゲームへと続く進化の系譜をたどってきたが、ゲームデザインのルーツに遡ることで新たなヒントはみえてくるだろうか。

 鈴木氏は、ビデオゲームが今壁にぶつかっているのは、「特定のジャンルに偏りすぎていることに原因があるのではないか」と考えている。それを構造的に示す手法として、ウォーゲームの世界でゲームの抽象化の度合いを分けるのに使われる「戦略級」「作戦級」「戦術級」「戦闘級」という区分を挙げる。

鈴木銀一郎氏

 たとえば戦略級は、1つの駒が1個師団や軍団(約数千〜2万人)にあたり、1回の選択が数週間から数カ月間を示す。作戦級は、1つの駒が1個大隊(約500〜1000人)、1回の選択が半日から1週間を示す。戦術級は、1つの駒が1人から小隊(数十人)、1回の選択が数秒から数時間という単位である。それらの駒は、記号で示されており、ゲームを遊ぶ側はかなり想像力を使うことが求められる。

 4つめの戦闘級は、個人対個人の対戦を示す単位だが、ウォーゲームで実際に使われることはあまりない。複雑な駒の動きを何分ものプレー時間と分厚いルールブックで表現する必要があるにもかかわらず、それでできるのはわずか数秒の戦いであり、あまりおもしろいものではなかったからだ。しかし、ビデオゲームの格闘ゲームでは、それを一瞬で表現できる。それこそがビデオゲームの強みでもある。

 ところが、鈴木氏から見ると「今のビデオゲームは、あまりにも戦闘級や戦術級に偏りすぎている印象がする」という。ハード性能が向上して、グラフィックスが豪華になった。しかし、プレーヤーがカード1枚からキャラクターの成り立ちを懸命に想像するといった必要がなくなった分、逆に自由な想像力を羽ばたかせる余地を奪い取っているという。

 鈴木氏は、長年の経験から、ゲームをデザインするうえで最も重要なのは、「魅力的なコンセプトを最初に考えること」と指摘する。次が「テーマ」で、最後が「テクニック」だ。「ゲームの根幹となる部分だけを残して、できるだけ要素を減らし、枝葉をそぎ落とすべきで、枝葉は風味的な要素として使うべき」。しかし、多くのゲームデザイナーは、テクニックが最も重要だと間違えがちだと、鈴木氏は指摘する。

 また、「21世紀のゲームは、1回のプレー時間が1時間を切るべき」ともいう。それ以上長いとだれてしまい、繰り返し遊んでもらえなくなるためだ。例えば、カタンは1時間で終わるように、見事に調整が施されている。

 鈴木氏は現在、今秋に発売予定の「門星明華学園 The Makers Academy」というテーブルトークRPGをデザイン中だ。発売に向けて、テストプレーと調整を繰り返している。モンスターメーカーのシステムを使い、「ハリー・ポッター」のような学園を舞台に、「ごくせん」のオチこぼれたちをプレーヤーが演じるようなゲームという。通常のテーブルトークRPGと違いシステムは簡素で、「プレーヤーが自由に物語を紡ぎながら、大笑いして遊べるゲームに仕上げる」と語っている。

 コンセプトを聞くだけで、人間の想像力を刺激するメディアとしてのアナログゲームの魅力が伝わってくる。

・モンスターメーカー
http://monstermaker.jp/

・マジック・ザ・ギャザリング
http://mtg.takaratomy.co.jp/

[2009年7月17日]

-筆者紹介-

新 清士(しん きよし)

ゲームジャーナリスト。立命館大学映像学部講師

略歴

 1970年生まれ。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲーム会社で営業、企画職を経験後、ゲーム産業を中心にリサーチするジャーナリストに。ゲーム開発者を対象とした国際NPO、国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表。コンピュータエンタテインメント協会(CESA)理事。日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)理事。米「ゲームディベロッパーズマガジン」(09年11月号)で「重要な成果を上げたゲーム開発者50人」に選出される。著書に『「侍」はこうして作られた』(新紀元社)
<関連リンク>

国際ゲーム開発者協会日本
E-mail:sakugetu@gmail.com

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