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更新:6月15日 12:16デジタル家電&エンタメ:最新ニュース

YouTubeのゲーム動画が起こした予想外のできごと

 5月26日に発売になったばかりの「Xbox360」用のレースゲーム「Forza Motorsport2」で、おもしろいことが起きている。ゲーム内の車に自由に装飾をすることができるペイント機能を利用して、日本のユーザーが次々に変わった車のデザインをはじめたのだ。これを加速させたのが、動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」だ。(新清士のゲームスクランブル)

 YouTubeが社会に浸透してからまだ1年あまりしか経っていないが、YouTubeの出現がゲームとユーザー、そして社会との関係を大きく変えつつある。ある環境の要因が混じり合い、予想外の新しい動きが生まれることを「創発」というが、YouTubeとゲームの間でもそれが起き、様々な影響を及ぼしつつある。Forza Motorsport2はその最新の例といえる。

 このゲームでは、自分で改造した車を利用してオンライン対戦をしたり、「オークションハウス」という機能を通じて他のユーザーにゲーム内通貨で販売したりすることができる。しかし、せっかくペイント機能で長い時間をかけてカスタムカーを作り込んでも、なかなか他の人に披露することが難しい。(※)

 ゲーム中のスクリーンショットを撮影して、公式のフォーラムに投稿することはできるが、多くの人に鑑賞してもらうには限界がある。作成者とそれを評価する人とのキャッチボールを行うフィードバックサイクルがないと、Forza2のペイント機能のような高度な機能でも、どこまで多く利用されるかわからないものだ。

 ところが発売からすぐに、非常に創意工夫に富んだ複雑なペイントを作成して公開するユーザーが現れ、それが一気に広がった。ユーザーがネット上で公開した画像をまとめて、YouTubeに動画にして公開したために、作成ブームのようなものが突然わき上がったのだ。発売からわずか1週間の間に、様々なバリエーションの車がデザインされ、またそのクオリティーは、日本人ユーザーが作成したと思われるものが突出して高い。「Forza Motorsport2」で検索するとその動画を容易に見ることができる。

 日本人が異常にレベルの高いペイントをした車を作っていることは、米Gamespot誌のPodcastの番組でも話題になったほどだ。このゲームの日本での販売本数は1万本程度にとどまっていることを考えると、それだけでも驚くべき現象といえる。

 YouTubeの存在は、ゲーム内のツール機能を使ったユーザー間の新しい遊びを成長させているといってもいいだろう。これまでは、こうしたユーザークリエイトコンテンツ(UCC)が作成されても、ムービーとしてアップロードされたファイルをダウンロードする必要があり、共有の広がりがここまで大きくなることはなかった。

YouTubeに投稿されたセカンドライフの映像

 別の例では、YouTubeで「Second Life」と検索してみると、2万9000もの映像が引っかかる。42万アクセスをも集めている「Episode # 1: My Second Life」は、実際の世界から行方不明になってしまい、セカンドライフの世界に飛び込んでしまった人物が、どのようにして仮想世界に取り込まれていったのかをミステリー風のストーリーに仕立てている。

 さまざまな3Dのゲーム内で自主映画を撮るという活動は「マシニマ」(マシンとシネマの合成語、日本語ではマシネマと記載されることもある)と呼ばれ、4〜5年前からユーザーコミュニティーで多数現れるようになっていた。

 昨年秋にはニューヨークのムービングイメージ美術館で、マシニマのコンペといったものまで開催されている。しかし、映像の公開方法がボトルネックになっていて、多くの人に簡単に見てもらうことが難しかった。それをYouTubeが一気に解決した。セカンドライフのなかで自主映画を撮影する人たちが、こぞってYouTubeで作品を公開するようになっている。マシニマは他のゲームでも多数作られて、YouTubeのなかで一大ジャンルを形成しつつある。

 一方で、別の問題も引き起こしている。10日、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「プレイステーション3(PS3)」用ソフト「レジスタンス 〜人類没落の日〜」のなかで、英マンチェスター大聖堂の内部をSCEが無許可で戦闘の舞台に使っていることに対し、英国国教会が抗議しソフトの回収を求めたというニュースが世界を駆けめぐった。英Gurdian Unlimited誌の報道によると、教会のシーンの映像がYouTubeに公開され、教会のリーダー達がショックを受けたとある。確かに、ゲームのプレイ映像がYouTubeに「Resistance: Fall of Man - Manchester - The Cathedral(Part 1)」というタイトルで掲載されており、テレビ等で流れたものは大半がこの映像だ。

 実はこの映像は、ユーザーが教会のシーンのすべてを録画して攻略法を解説しているユーザー作成のビデオだ。ゲームの攻略ムービー自体はめずらしいものではない。著作権的には当然グレーだが、多くはゲーム会社からクレームが付けられることもなく、放置されていることが多い。

 マンチェスター大聖堂のケースでは、建築物そのものは著作物とみなされないため、ゲーム会社側がどこまで許可を取る必要があるか難しい問題ではある。過去、教会を戦いの舞台としたゲームは少なくない。しかし、信仰の問題として責められると、話は違ってくる。

 過去の例では、2003年に「Xbox」用の格闘ゲーム「格闘超人」の背景で、イスラム教のコーランの画像を使っており、その文言が修正されていることに対してイスラム教の団体からクレームが付き、マイクロソフトは販売中止という判断を行ったことがある。このゲームはそれほどヒットしたタイトルではなかったが、レジスタンスはすでに全世界で100万本以上のヒットタイトルとなっているため、どういう決着がつくのかは、今後のゲーム内の表現の自由にも関わるために非常に注目される。

 いずれにせよ、YouTubeのこの映像の投稿がなければ、問題となっている教会のシーンがそれほど知られることなく、ここまで国際的に報道されるほどの大問題には発展しなかったかもしれない。

 YouTubeとゲームの親和性は高く、ゲーム内の情報の共有を加速化する効果を持っているのは確かだろう。しかし、そうであるために、予想外のことも起きる。味方に付ければ有利に機能するが、反対のことも起きる。それをどう利用していけばいいのかは、企業にとっても容易に判断が付かず難しいところでもある。

※6月15日 20時30分更新 初出時にForza Motorsport2のカスタムカーをコピーできないとなっていたのは誤りでした。お詫びして訂正します。

[2007年6月15日]

-筆者紹介-

新 清士(しん きよし)

ゲームジャーナリスト。立命館大学映像学部講師

略歴

 1970年生まれ。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲーム会社で営業、企画職を経験後、ゲーム産業を中心にリサーチするジャーナリストに。ゲーム開発者を対象とした国際NPO、国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表。コンピュータエンタテインメント協会(CESA)理事。日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)理事。米「ゲームディベロッパーズマガジン」(09年11月号)で「重要な成果を上げたゲーム開発者50人」に選出される。著書に『「侍」はこうして作られた』(新紀元社)
<関連リンク>

国際ゲーム開発者協会日本
E-mail:sakugetu@gmail.com

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