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更新:12月7日 11:20デジタル家電&エンタメ:最新ニュース

日本抜きで成長した10年・ゲーム開発の新天地カナダ(2)

 カナダのゲーム産業リポートの第2回。今回、カナダの主要都市であるモントリオール、トロント、バンクーバーの3都市をまわったのだが、気になったことがある。この国のゲーム産業はここ10年の間に急速に発展し、北米のヒットチャートの上位に食い込んでくるタイトルを多数生みだしているにもかかわらず、日本からはその実情がほとんど見えていなかったということだ。(新清士のゲームスクランブル)

■日本市場に影響を与えない多数のミリオンタイトル

 その大きな要因は、カナダのゲーム産業の形成と成長にほとんど日本企業の関与がなかったためだろう。情報が限りなく伝えられなかったと思われる。

 昨年の「ニンテンドーDS」や「Wii」の登場による回復期に至るまで、日本のゲーム産業は10年あまりの長い停滞期に陥っていた。その間に、カナダのゲーム産業は欧米のパブリッシャーの強力な資本力を背景に、成長が続く北米市場を開拓しつつ、開発のクラスター地域として発展を遂げてきたと考えられる。

 ゲーム市場としてのカナダは、人口が約3200万人であり、約3億人のアメリカと比べ10分の1の規模に過ぎない。そのため、市場単体としてはカナダが日本から意識されることはほぼない。しかし、カナダでは付加価値を持った知識の形成が富を生みだすという新しい時代の流れを強く意識して国の政策が進められており、実際、この10年間で新しい産業を創出したといえるまでに、ゲーム開発で成功を収めている。

 過去のカナダ製のゲームで日本で大成功したタイトルはないが、北米市場での大ヒット作は複数ある。

 西海岸のバンクーバーには、世界最大規模の2000人もの開発者を抱えるエレクトロニックアーツ(EA)のバンクーバースタジオがある。このスタジオでは、EAの主力商品であるEAスポーツの開発を行っている。北米で毎年400万本以上を売り上げるアメフトゲーム「Madden NFL」シリーズや、欧州で「ウイニングイレブン」(コナミ)と人気を二分する激戦を繰り広げているサッカーゲーム「FIFA」シリーズなど、EAスポーツブランドタイトルの大半がこのスタジオで作られている。北米での年間売り上げチャートの上位には必ずこのスタジオ製のタイトルが入る。

「クラッシュ・バンディクー」シリーズのプロデューサー クリステン・フォーブス氏

 他にも、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が96年に新規タイトルとして開発し、04年からは大手パブリッシャーの仏ビベンディが権利を取得している「クラッシュ・バンディクー」シリーズがある(最新作は「Crash of the Titans」)。このタイトルは04年以降、バンクーバーの360人規模のスタジオRadical Entertainmentで開発をしている。このスタジオの入口には過去のヒットタイトルを並べたスペースがあり、いずれも日本市場では発売されていないが、北米市場などで100万本を超える実績を上げたタイトルが多数あることに驚かされた。

 ちょうど先月発売日を迎えて盛り上がっていた「Mass Effect」(Xbox360)も北米最大のロールプレイングゲーム開発会社であるカナダBioware製だが、仮に日本で発売されても、数万本売れればいい方ではないだろうか。

■カナダの成長の一方で存在感薄い日本企業

 今回、実に様々な開発者に会ったが、どの開発者からも「日本で自分の関わったタイトルが売れるでしょうか?」という問いが出なかったのも印象的だった。2000年代初めのゲーム開発者会議(GDC)では、そういう質問を受けることがあったが、近年に至っては皆無に近い。

 海外のゲーム会社にとって進出が難しい日本市場の開拓を目指すよりは、市場規模が日本より大きく成長性もある欧米市場だけで十分にスタジオの収益性を高めることができるという状況がカナダ企業にはある。

 つまり、カナダを通じて見えてきたのは、この10年間で日本市場に頼らず企業の収益が十分に確保できるまでに広がったビデオゲーム市場の国際化と日本の影響力低下である。2日に発表された仏ビベンディによる米アクティビジョンの買収はカナダでも大きな衝撃を持って受けとめられていたが、欧米市場への影響はともかく短期的に日本市場に与える影響は小さい。

 北米市場で日本製タイトルの地位が相対的に低下するようになってから久しいが、そのことは裏返せばカナダのような新興地域が北米市場にマッチした商品を独自に開発できる力を付けてきた実情も意味していると感じた。

 ただ、「Wii」や「ニンテンドーDS」といった日本製ハードウエアに対しては、新規マーケットを創出した点で極めて高い評価を集めていた。開発費の高騰は全世界で直面している大問題になっているが、「Wiiが我々を救う」とまで述べる開発者がいたほどだ。それでも、カナダで開発されている任天堂ハード向けタイトルが日本で売れるというイメージは持ちにくかった。

 日本企業の米国法人が主体となって、資本関係を持たずタイトル開発の請負的な形でカナダ企業を使っているケースは少なからずある。日本で9月に発売になった「マリオストライカーズ チャージド」(Wii)は、バンクーバーのNext Level Gamesが開発しており、またセガが発売した敵車と戦いながらレースをする「Full Auto 2」(Xbox360、PSP)は、Xbox360版はトロントのPseudo Interactive、PSP版はバンクーバーのDeep Fried Entertainmentが開発を行っている。これらの企業は小さなスタジオかそこから成長して規模を拡大していった企業のケースが多く、また日本企業とだけ取引をしているわけではない。

 カナダでは、ある程度の規模になると資本的な安定性を求めて北米の大手パブリッシャーの傘下に入り、大規模化を進めるというパターンが多い。現在ある大規模なスタジオには大抵アメリカもしくは欧州の資本が入っており、カナダ独自で世界的なパブリッシャーにまで飛躍しているケースはない。

 10月にEAに8億6000万ドルで買収されたBiowareがその代表だろう。大半の有力なスタジオは、海外パブリッシャーの傘下に入っている。一方、日本企業でカナダにスタジオを持っているのは、コーエーのトロントスタジオだけである。

■「知識労働者」としての競争力を持続する仕組み

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