更新:11月6日 13:29デジタル家電&エンタメ:最新ニュース
■日本のユーザーは「パーソナル化」志向 この現象には、特に日本のユーザーの生活習慣の変化が影響していると考えられる。 日本は携帯ゲーム機へのシフトが最も進んでいる市場だ。欧米地域と市場規模で肩を並べるのは、携帯ゲーム機の領域だけといっても過言ではない。この違いは、ユーザーがゲームに求める「パーソナル」志向がより強い表れと解釈することができる。 身近な例では、子どもは携帯電話でどんなサイトを見ているかを親に覗かれるのを嫌う。携帯ゲーム機で何を遊んでいるのかを、親に見せたいとも基本的に思わない。 NTTドコモが「iモード」を始めて10年になるが、日本が生んだこの統一的な携帯電話プラットホームは、今の高校生ぐらいまでの幅広い年齢層にデータをパーソナル化して持ち歩く習慣を根付かせた。結果論にすぎないが、04年発売のDSが成功した背景には、データが手元にあることに慣れた潜在ユーザーの多さもあったものと思われる。 一方、欧米では日本ほど携帯電話向けコンテンツの共通フォーマットが発達しなかった。代わりに、パソコン向けを中心に「Facebook」などのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が日本以上に普及した。 とはいえ、この市場特性の違いは時間差に過ぎず、日本的な「パーソナル化」現象は、欧米市場でもいずれ一般化するだろう。実際、北米でアップルの「iPhone」「iPodTouch」が大ヒットしている一因は、電話機能以外のSNSなどのサービスがキラーアプリ化している点にある。ゲーム機でもデータを手元に置いておける携帯型がさらに伸びる可能性はある。 ■DSiLLは将来市場を占う実験ハード こうした環境変化を考えると、ニンテンドーDSiLLには、将来市場を占う「実験的なハード」という側面があるととらえることもできる。 もちろん、そもそもは「シニア層向け」が基本コンセプトだったのだろう。画面サイズを広げてほしいというニーズは、常に存在していたはずだ。同梱されるゲームが「脳トレ」や「明鏡国語楽引辞典」であることを見ても、子供向けではないことは明らかである。 この層は競争のない完全な「ブルーオーシャン」市場であり、戦略としては正しい。他のゲーム会社でシニア向けにゲーム機を作ることを考えているところは現状ではない。岩田氏はプレゼンで「シニア専用DS?」とわざわざ疑問符を付け、「まわりの人と一緒に楽しめる」というコンセプトを強調していたが、これは特定層向けのハードとレッテルを貼られることを避けるためだろう。 ただし任天堂は、このDSiLLの売れ方を極めて注意深く見て、新しく追加できるサービスの方向性を検討するはずである。デジタルデータによるサービスは、デバイスを選ばなくなる時代へとますます進んでいる。そのなかで任天堂の強みをどう生かすかを考えるときがきているからだ。 質疑応答のなかで、岩田氏はアマゾンの電子書籍リーダー「キンドル」のビジネスモデルに「興味がある」と述べている。すでに、DS向けのソフトで07年に「DS文学全集」をリリースしているが、DSiLLはより電子書籍に向いたハードといえる。書籍リーダー型のビジネスの実験をしてくるのではないかという予想もできる。 さらに若年層の買い換え需要が既存のDSiではなく、DSiLLに向かうようであれば、据え置き型ゲーム機を主体とする時代が完全に終わる前触れと受け取ることもできる。テレビとつなげることが必須ではなくなり、ユーザーが広いモニターでパーソナルなゲーム機を求めていることが明確になるからだ。 ■「再来年に向けて準備」 現状、iPhoneなどのスマートフォンをDSiLLほどの画面サイズにすることはできないだろう。その点では優位性があり、広い画面サイズに最適化したサービスの実験を先に試せる点でも有利だ。 今の任天堂の基本戦略は、できるだけ幅の広い年齢層、つまり「大きな母集団」に受け入れられれば大ヒットするという考え方が根底にある。もう1つは、「予期していなかった成功」にぶつかったときに、それを逃さず迅速に最大化するという戦略だ。DSiLLは、そのどちらも狙える。 任天堂は、様々な実験を行うだけの企業体力が十分ある。その力を使って、次に備えようとしている。「再来年しっかりビジネスができるように今何を準備するかを考えているところ」という岩田氏の言葉に、重要なヒントがあるとみている。 [2009年11月6日] ● 関連リンク● 記事一覧
|
|