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更新:4月4日 11:40デジタル家電&エンタメ:最新ニュース

ゲーム会社も無視できないユーザー投稿「プレー動画」のクオリティー

 ゲームユーザーが動画サイトを通じて、独自の遊び方や新しいテクニックを発表する楽しみ方が広がっている。「ニコニコ動画」に代表される動画共有サイトには、ゲームをプレーしている動画をパソコンに取り込んでアップしたものがあふれている。(新清士のゲームスクランブル)

 ニコニコ動画のゲームカテゴリーの動画数は約30万本で、アニメや音楽などの人気カテゴリーと比較しても多いようだ。動画サイトとゲームとの親和性が高いことが伺える。

 その動画を見ていくと、大ヒットしているゲームから、誰にも知られていないようなマイナーなゲームまで、実に様々なゲームのプレー動画が投稿されている。ただプレーしているのではなく、動画サイトを通じて新しい遊び方を提案しているケースも少なくない。今回は一つの例を紹介しよう。

■プレー動画を通じて伝わる有利な戦略

 3月19日に発売になったロボットを使ったアクションゲーム「アーマード・コアフォーアンサー(ACfA)」(プレイステーション3・Xbox360版、フロムソフトウェア)は、数百あるパーツを自由に組み合わせて、自分の好きなロボットを作り上げて遊べるというのが、最大の魅力になっている。自分がデザインしたロボットで一人用モードを遊んだり、最大8人までのネットワーク対戦で他のプレーヤーに挑んだりできる。

 ただ、ネットワーク対戦のシステムは、まだ成熟しているとは言えず、他のプレーヤーと自分のロボットを容易に比較できるような仕組みがうまく盛り込まれていない。ゲーム内で提示されている情報が非常に少なく、熱中して遊び込んでいるユーザーでないと有利な戦略がなかなかわからない。多くのプレーヤーには敷居が高くなっている。

 それらの欠点を、ユーザーが動画サイトを通じてカバーしようとプレー動画を競うように投稿している。ニコニコ動画には、ネットワーク対戦を録画した動画が毎日10本程度アップロードされる。その動画を見ると、うまいプレーヤーがどのように戦っているのかを、具体的に把握することができる。

 ゲーム発売後、2週間でユーザーのコミュニティーが急速に成長し、最適なテクニックを模索する競争が激しい。発売直後には、新型のミサイルが強力であることがわかり、プレー動画を通じて情報が急速に広がった。しかし、1週間も経たないうちに上手なプレーヤー達がミサイルよりも速くロボットを動かすことが有利であることに気が付き、それを紹介する動画がきっかけでコミュニティーに新しい対策が瞬く間に広まった。

 刻々とプレーヤーの戦略が変化しているのだが、アップされている動画を通じてそうした流れが見えてくるのがおもしろい。

■潜在ニーズや新しい遊び方を提案

 初心者向けにミサイルの回避方法を解説する動画も人気を集めている。過去のシリーズを遊んできたユーザーがゲームプレー動画に文字を入れながら、戦術を解説するものだ。3月29日に投稿されたある動画は、数日で視聴数が6000ヒットを超えた。

 何らかのゲーム機能を解説するチュートリアル動画は、動画サイト登場以前から、特に海外のゲームのコミュニティーでは数多く見られた。動画を作成するユーザーは、ユーザーコミュニティー全体の潜在ニーズをくみ取りフォローを行う。動画による解説は圧倒的にわかりやすい。

 解説だけでなく、ユーザーは新しい遊び方も提案している。人気を集めているのは、ロボットのカスタマイズ機能を利用して「ガンダム」などの別のアニメのロボットに見えるように、自分のロボットを作成してゲームをプレーするというものだ。

 これは「ネタ機」という呼ばれ方をされ、ゲーム的にはあまり意味をなさないことが多い。ゲームをゲームとは別の世界の意味情報とつなげて、他の人にアピールすることで生まれる面白さを競うものだ。

 ネット上では他人との知識の基盤となるものが限られているため、強力なブランド価値を持つ、すでに存在している何かのコンテンツに依存する場合が一般的だ。多くの人がよく見知っているものであるほど、他のユーザーの共感を得やすい。そのため、ロボットが題材になると、日本ではガンダムといった過去に人気のあったロボットアニメが登場するケースがどのゲームでも見られる。

■価値判断は難しいものの静観を決める企業

「アーマード・コアフォーアンサー(ACfA)」のサイト

 しかし、ゲームを開発する側の企業にとって、このプレー動画がどんどん増えていく現象を積極的に認めるべきなのかどうか、現時点では判断が難しい。

 映画やアニメほど著作権が問題になっていないのは、ゲームのプレー動画はそれが視聴されたからといって、ゲーム自体の魅力を削ぐ面が少ないからだと思われる。ACfAの場合、8人対戦でプレーヤーの操るロボットから山のようなミサイルが撃ち出される激戦を録画したプレー動画は、企業が提供している予告編ムービー以上にゲームの魅力を伝えているようにも思える。

 また、ネットワーク対戦のプレー動画の場合は、ユーザー同士の戦いは1回限りの戦いであり、その記録として別の価値を生み出す側面がある。それが動画サイトとの親和性が高い理由でもあるのだろう。また、現時点ではそのプレー動画により利益を上げているユーザーはいないため、企業にとっても対立点を見い出しにくいともいえる。

 ただ、日本のゲーム会社の公式サイトで、ユーザーのプレー動画に積極的にリンクを張るといった形で利用するまでに広がってはいない。特に音楽に関して単独企業だけで著作権関係の処理をクリアできないという事情を抱えているためだ。そのため多くの日本企業では、現時点では基本的には大きな主張を行わないで、静観している。

 プレー動画を録画して編集する環境を構築するには、PS3やXbox360では、パソコン以外に数万円かけてビデオキャプチャーカードなどの機器をそろえる必要がある。低価格の標準化された機材は出回っていない。

 しかし、プレー動画を作成するニーズはユーザーに確実にあるため、それを満たす便利な商品が登場し、値段も下がってくるようになると思われる。ネット上のプレー動画は今後さらに増えるだろうとはっきり予想できる。日本のゲーム会社も、ある段階から必ずそれらを積極的に取り込もうという動きを始めるだろう。動画サイトが日本のゲームに与える影響も、動画サイトの利用が一般に定着しつつあるこれからが本番だと考えている。

[2008年4月4日]

-筆者紹介-

新 清士(しん きよし)

ゲームジャーナリスト。立命館大学映像学部講師

略歴

 1970年生まれ。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲーム会社で営業、企画職を経験後、ゲーム産業を中心にリサーチするジャーナリストに。ゲーム開発者を対象とした国際NPO、国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表。コンピュータエンタテインメント協会(CESA)理事。日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)理事。米「ゲームディベロッパーズマガジン」(09年11月号)で「重要な成果を上げたゲーム開発者50人」に選出される。著書に『「侍」はこうして作られた』(新紀元社)
<関連リンク>

国際ゲーム開発者協会日本
E-mail:sakugetu@gmail.com

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