更新:4月1日 09:50デジタル家電&エンタメ:最新ニュース
テレビの限界を感じさせるBSデジタル新規参入
BSデジタル放送の新規割り当てチャンネルに対する免許申請が3月24日に出揃った。といっても多くの読者には今ひとつピンとこないに違いない。視聴者にはとてもわかりにくく、目新しさにも乏しいからだ。(江口靖二) ■BSデジタル放送の歩み BSデジタル放送は2000年12月に、1、3、13、15chの4chを使い、NHKのBS1、BS2やBS-hi、民放系など10局でスタートした。その後NHKのアナログハイビジョン放送の終了に伴い、2007年9月に9chの空枠ができた。そこで同じ年の12月から「BS11(イレブン)デジタル」と「TwellV(トゥエルビ)」、「スター・チャンネル ハイビジョン」が追加となった。 今回の追加は、現在アナログ放送を行なっているアナログWOWOWやNHK BS1、BS2が2011年以降に終了するのに併せ、この空枠とさらに国際間調整で加わった分とを合わせて7chを、2011年以降に新たにBSデジタルで利用できるようにするものだ。ここでわかりにくいのは「ch」という単位で、これは衛星中継器の数を表している。デジタル放送では1中継器で複数の番組を放送することができるので、7ch分で20チャンネル(局)程度の新しいBSデジタル放送局を追加できる計算になる。程度というのは、局ごとに使用する中継器の帯域幅が異なるため、最終的なチャンネル数(局数)はまだわからないからである。
■新規参入とは言えない顔ぶれ 今回の申請者は民間事業者28社と放送大学学園だ。28社の内訳は大部分が既存の「スカパー!」で放送を行っている事業者。なぜこういうことになるのかというと、スカパー!が使用している衛星の中継器数は局数に対して少なく、多くの帯域を必要とするハイビジョン放送を実施するうえで制約があるためだ。このためスカパー!で放送を行っている事業者の多くがハイビジョン化するためにBSデジタルに進出しようとしているのである。 ハイビジョンテレビを購入した家庭は、高画質のテレビであえてアナログの映像を見ようとはしない。そのため、地上波局であれば地上デジタル放送を視聴し、「やっぱり地デジのテレビ映像はきれいだなあ」と単純に実感することになる。ところがスカパー!のチャンネルの多くはまだハイビジョンではない標準画質(SD)で放送しているので、ハイビジョンテレビに映し出すと画質の差があからさまになってしまう。そこに彼らがハイビジョン化を急ぐ事情がある。 進出理由はそれだけではない。スカパー!の受信には専用のチューナーとアンテナが必要であるが、BSデジタルであれば地上波、BS、CS110度の共用テレビがそのまま使えるというメリットがある。BSデジタルを受信できる世帯数はケーブルテレビでの受信も含め現在およそ5000万件(デジタル放送推進協会サイトによる)。一方のスカパー!は110度CSによるスカパー!e2を除いて324万件、スカパー!e2と合わせても415万件でその差は歴然である。 ■契約が伸びるかどうかは未知数 やはりわかりにくいので、もう少し書くことにしよう。あるチャンネルは元々スカパー!で放送を行っていた。その後、BSデジタル放送と同じ機器が使える110度CS放送、つまりスカパー!e2にも参入した。この時点で2チャンネル同じ放送をすることになった。しかしながらスカパー!もスカパー!e2も普及数で大きくBSデジタルに差を付けられている。そこで今回のBSデジタル枠に申請するというわけだ。すなわち3チャンネル体制。 しかしBSデジタルに参入したとしても、5000万世帯にすぐに見てもらえるという話ではない。なぜならこの局は有料放送だからである。BSデジタルはNHKとWOWOW、スター・チャンネル ハイビジョン以外は無料の広告放送なので、視聴世帯の何割が有料受信契約をするかは未知数だ。3チャンネル体制の運用で衛星中継器の利用料などがそのままコストとしてのしかかってくるし、局内の並行運用や顧客管理、課金管理にも少なからざる追加投資が必要な厳しい情勢である。
■その陰でNTTの静かなる躍進 ほぼ同じタイミングで興味深い発表が行われた。NTTぷららの「ひかりTV」が放送開始から1年で契約数50万を突破したのである。 このひかりTVもまたわかりにくい。もともとNTTグループはNTTコミュニケーションズの「OCN シアター」、NTT東日本の「4th MEDIA」、NTT西日本の「オンデマンドTV」という3つの似たようなサービスを提供していたが、昨年、ひかりTVに統一した。これによりそれまでの累計と合わせて50万に到達したのである。伝送路はもちろん衛星ではなく光ファイバーだ。 ひかりTVのサービス内容は大雑把に言えばスカパー!の主力チャンネル、ビデオ・オン・デマンド(VOD)、そして地デジの再送信である。相当量のテレビCM出稿と圧倒的な営業力によって拡大を続けている。 スカパー!やケーブルテレビで実現した日本での多チャンネル放送のニーズは、四百数十万で増加傾向に陰りが見え始めていた。そこにNTTが光ファイバーで参入したのだが、ひかりTV加入者の7、8割はこれまでスカパー!やケーブルテレビに加入したことがない新規顧客という。日本にまだ未開拓の市場が存在することを示したのである。 この市場がどれほど広がるかはわからないが、まだまだ埋蔵量は大きい可能性がある。チャンネル内容にあまり違いがないのであれば、それ以外のサービス内容次第で、スカパー!やケーブルからひかりTVへ乗り換えが起きる可能性も十分ある。事実、VODの見放題プランが好調のようだ。今後光ファイバーで繋がっているメリットをどのように訴求できるかが鍵を握っているだろう。 ■もうテレビからは何も出てこないのか 新たなBSデジタル枠には米ウォルト・ディズニーやFOXが無料広告放送で名乗りを上げるという新しい動きもあるが、全体を見渡せば既存の多チャンネル放送ばかりで、新鮮味のある話があまりない。もしも地上波テレビがつまらなくなっているのであれば、ひかりTVで見ても当然つまらない。「地上波局+お約束の専門多チャンネル」をあらゆる経路で送りつけるだけでは、これまでと代わり映えのしないテレビの未来ということになりかねない。 ※このコラムへの読者の皆様のご意見を募集してます。こちらをクリックすると、今回のコラムに関するコメントを受け取るための専用ページが開きます。(NIKKEINET外部にある江口氏個人のブログサイトにリンクしています) [2009年4月1日] ● 関連記事● 関連リンク● 記事一覧
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