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更新:9月9日 10:25デジタル家電&エンタメ:最新ニュース

「情熱大陸」がTwitterでつぶやくソーシャルテレビの可能性 

 メディアとしてのテレビの有効な生き残り策は、リアルタイム性による「共有感の醸成」にある。かつてお茶の間で果たしたその役割を今は失いつつあるが、テレビが「ソーシャルメディア」化することで再び取り戻すことができるはずである。(江口靖二)

■「ソーシャルテレビ」とは何か

 ソーシャルメディアとはユーザー側が情報を発信するメディアのことである。とはいえユーザー側からしか情報発信しないという意味ではなく、従来型マスメディアへのユーザー参加であってもかまわない。そしてテレビがソーシャル化していけば「ソーシャルテレビ」になる。テレビ屋的に言うと視聴者参加型番組だが、従来のそれとはちょっと意味合いが異なる。

■はじまりは2ちゃんねる

 日本では掲示板「2ちゃんねる」の実況板がその先駆的存在だった。テレビをネタにする雑談はオンラインでもオフラインでも楽しく、時に便利でもある。家族間で感想を話し合うのもいいが、他人の思いもよらないコメントに大笑いしたり、妙に納得したりすることが少なくない。

「情熱大陸」のTwitterへの投稿画面

 毎日放送(MBS)制作のドキュメンタリー番組「情熱大陸」がミニブログ「Twitter(ツイッター)」を9月初めから使いはじめた。Twitterがいかなるものであるかについて本稿では触れないが、多くの人が指摘しているように、やってみないとわからないのでぜひお試しいただきたい。

 これまでもテレビ局がTwitterの公式アカウントを持つ例はあったが、どちらかといえば番組宣伝や制作裏話を一方的に発信する内容が目立った。しかし情熱大陸では、それに加えて番組放送中のライブチャット的な使い方も試みている。制作者や出演者とリアルタイムでコミュニケーションするのも、制作者不在でユーザーが勝手に盛り上がるのも、どちらもいい使い方だと思う。

■テレビ局側から見た利用価値

 情熱大陸は、テレビ番組の質の低下が叫ばれるなかで質の高い番組として評判が高い。Twitterとの連携は参加者側の意識も高いものにしていくはずだ。私自身もかつてテレビ番組を制作する側にいた時、視聴者の意見や声を聞いてみたいという思いが常にあった。視聴率は確かに一つの物差しではあるが、もっと生の声を聞きたかった。

 しかし、電話やはがきやファクスが届くのはごくまれなケースだった。逆にいえば今、メールもケータイもTwitterも何でも利用できるこの時代になって、番組制作者がこれらのツールを利用しないことの方が不思議だ。

 テレビ局が視聴者とインタラクティブなコミュニケーションをとろうとする場合、必要以上に気を遣うのが「荒らし」や不適切な書き込みへの対策である。Twitterは匿名でも参加は可能だが、自分のアカウントを継続的に利用しようとするとブロック機能によってシャットアウトされないように気を配るため、結果的に自浄作用が働くといえる。

 おそらく現状では、テレビ局関係者のTwitter利用はごくごく一部に限られていると思うので、まずはお試しをお勧めしよう。

■リアルタイム性をどう生かすか

 テレビとTwitterの連携のポイントは、なんといってもリアルタイム性にある。動画共有サイト「YouTube」などに公式に番組をアップロードしたとしても、視聴形態がタイムシフト型であればコミュニケーションもリアルタイムにならない。

 テレビ東京が「ニコニコ動画(ββ)」に新番組「俺たちは天使だ!NO ANGEL NO LUCK」の配信をはじめた。番組を配信後14日間無料で視聴できるという試みだが、そこに書き込まれるコメントもストック型であり、テレビが元々持っているリアルタイムの一斉同報機能が十分生かされるわけではない。インターネットを利用して一斉同報的に同じコンテンツを視聴してもらうにはまだまだ技術的に課題がないわけではなく、既存の放送波が圧倒的に有利である。

■ユーザーを取り込むカギはケータイ

 Twitterでは、テレビといった共通のネタ以外にも、スポーツ観戦中やリアルのイベントなどの様子をテキストだけで実況中継的につぶやく例が多く見られる。ポイントだけを端的に知るためなら、書き手側も読み手側もテキストで必要十分だろう。

 しかしTwitterのユーザーはまだまだ少数であり、かつ限定された層である。本来、ツッコミを入れたい、コミュニケーションを図りたいと考える層はワンセグを見ていたり、あるいは家族とリビングで大画面のテレビを見ながら個別にリアルな友人とケータイメールをチャット的に使っているのが現状だろう。

 こうした層をソーシャル化したテレビが取り込んでいく働きかけは今後増えていくに違いない。そこでカギを握るのは、パソコンでも「iPhone」でもTwitterでもなく、ケータイという道具ではないかと思う。

※このコラムへの読者の皆様のご意見を募集してます。こちらをクリックすると、今回のコラムに関するコメントを受け取るための専用ページが開きます。(NIKKEI NET外部にある江口氏個人のブログサイトにリンクしています)

[2009年9月9日]

-筆者紹介-

江口 靖二

デジタルメディアコンサルタント

略歴

 1986年慶應義塾大学商学部卒、慶應義塾大学新聞研究所修了、日本ケーブルテレビジョン(JCTV)入社。技術局、制作局、マルチメディア室、経営企画室を経て開発営業部長。CS、BS、地上波の番組制作、運用を経験。00年AOLジャパン入社、コンテンツ部プログラミングマネジャー。02年プラットイーズ設立に参画し放送通信領域のコンサルティングに従事。08年独立。現在デジタルサイネージコンソーシアム常務理事、慶應義塾大学DMC機構研究員、シェフィーロ取締役などを兼務。

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