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更新:8月5日 10:20デジタル家電&エンタメ:最新ニュース

「ニコニコ動画」が普通のテレビ局になってしまった日

 動画投稿サイト「ニコニコ動画(ββ)」はテレビが失ってしまったリアルタイム性、つまり「みんなで見ている」という共有感覚を現代に再現したメディアだと思っていたが、どうやらテレビがやってきたのと同じ過ちを繰り返すのではないかという気がして心配をしている。(江口靖二)

 ニコニコ動画は7月30日、12時間連続の生放送「夏だ!祭りだ!コメントだ!ニコニコ動画12時間ぶっ通し生放送」を配信した。この長時間生放送という発想は、日本テレビの「24時間テレビ」などがやってきたのと同じで、話題性、非日常性、イベント性が勝負のいわば「お祭り」みたいなものである。

7月30日付の産経新聞テレビ欄。ピンク色の部分がニコニコ動画の番組表

■産経新聞テレビ欄に載った「番組表」

 当日の産経新聞朝刊を読んだ人は驚いたと思うが、テレビ欄(首都圏版)のど真ん中、「TBSテレビ」と「フジテレビ」の間に、このニコニコ動画生放送の番組表が掲載されていた。しかし、よく見ると紙面の下部には、ニコニコ動画を運営するドワンゴ取締役の夏野剛さんが登場している広告がある。なるほど、このニコニコ生放送の番組表スペースもおそらく広告なのであろう。

 それでも、いきなり全国紙のテレビ欄に地上波テレビ局とニコニコ動画が並んだインパクトは大きい。新聞の地上波テレビ欄は、例えるなら銀座4丁目交差点の一等地。ここを見て番組を視聴する人はいまだに多い。産経新聞がニコニコ生放送の番組表を地上波と同様に扱う、あるいはそういうニーズがあると判断したのなら快挙だろうが、銀座に広告を出したというだけなら全然おもしろくない。

■タレントの過激トークはテレビでできない?

 ではニコニコ生放送の内容はどうかというと、発想としてはテレビ局の春と秋の番組改編期に組まれる特別番組、いわゆる「期首特番」と同じで、「地上波クラスのタレント」を多数起用したバラエティー番組の形式だった。こうした地上波的メジャー感が重要と考えるのはいいだろう。それをギャラで解決するのか、志で実現するのか、以前の本コラムで取り上げた「BeeTV」のようにビジネスモデルで挑戦するのか、そこが問題である。

 メジャータレントが出演したこの番組では「テレビでは言えない過激トーク」を展開した。その過激の中身はというと、いわゆる「楽屋ネタ」みたいな話である。放送後のネットでの評価はおおむね好意的で、テレビにはできないことをネットがやったと評価する趣旨のコメントが多く見られた。

 確かにテレビ放送では、法律や自主規制などによって放送できないものがないわけではない。しかし、今回のような芸能人の本音トークがテレビでできないと思うのは間違いだ。むしろこうした楽屋ネタはエンターテインメントとしては安易な発想であり、表があるからこそ裏があるようなものである。

 わたしはニコニコ動画に有料登録したプレミアム会員ではないので優先権がなく、アクセス集中時に途中で何回か見られなくなった。このビジネスモデルは確かによくできていて、この日だけでプレミアム会員がどれくらい増えたのか気になるところだ。そしてその継続率も同様に知りたい。

■ニコニコ動画の存在意義はどこに

 テレビ番組の内容、クオリティーについてはこのコラムでも何回か取り上げてきたし、読者の皆様の意見をお聞きするためのブログにも、最近のテレビ番組は低俗化しているとのご指摘が非常に多い。だとすれば、今回の過激トークはどうなのだろうか。テレビという規制された場所に対するアンチテーゼ的な存在でニコニコ動画が存在するのであれば、両者は持ちつ持たれつの関係ということなのだろうか。

 私は、ニコニコ動画はコメントや突っ込みがおもしろくて、見ている側の共有感覚やそのレスポンス感が重要だと思っているし、そこがほかにはないおそらく世界最初の試みだったように思う。しかし今回のようにメジャーなタレントを起用して楽屋トークを展開し、それを共有するだけで終わりなら、テレビ局は安泰である。そういう番組はお手のものだし、メジャータレントとのパイプは圧倒的に強く、やろうと思えばネットやケータイを組み合わせて明日からでもできる。

 まあ、お祭りだからいいのか。

※このコラムへの読者の皆様のご意見を募集してます。こちらをクリックすると、今回のコラムに関するコメントを受け取るための専用ページが開きます。(NIKKEI NET外部にある江口氏個人のブログサイトにリンクしています)

[2009年8月5日]

-筆者紹介-

江口 靖二

デジタルメディアコンサルタント

略歴

 1986年慶應義塾大学商学部卒、慶應義塾大学新聞研究所修了、日本ケーブルテレビジョン(JCTV)入社。技術局、制作局、マルチメディア室、経営企画室を経て開発営業部長。CS、BS、地上波の番組制作、運用を経験。00年AOLジャパン入社、コンテンツ部プログラミングマネジャー。02年プラットイーズ設立に参画し放送通信領域のコンサルティングに従事。08年独立。現在デジタルサイネージコンソーシアム常務理事、慶應義塾大学DMC機構研究員、シェフィーロ取締役などを兼務。

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