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更新:3月4日 11:40デジタル家電&エンタメ:最新ニュース

20ドルのデジタルフォトフレームに見る映像メディアの未来予想図

 テレビ、ウェブ、携帯電話、デジタルサイネージなど映像系メディアは広がり続け、その位置付けはまだ混沌としている。今回は、アメリカでたまたま見つけた20ドルのデジタルフォトフレームをタネに、映像メディアの向かうであろう進化の先を考えてみたい。(江口靖二)

コンビニで売っていたキーホルダー型のデジタルフォトフレーム

■20ドルのキーホルダー型フォトフレーム

 それは、アメリカのコンビニで20ドルで売られていたキーホルダー型のデジタルフォトフレームである。携帯画面より小さなカラー液晶ディスプレーが付いており、デジカメで撮影した写真を内蔵メモリーに60枚まで保存できる。

 この製品自体は特に取り上げるような話ではないが、ここから見えてくる可能性に、これまでの映像メディアを集大成するようなひとつの方向性を感じるのである。

■ネット接続ツールを無料で配れる時代に

 数年後には、6インチくらいのディスプレーと無線LANやWiMAX機能を搭載したデジタルフォトフレームのようなものが、数千円以下で買えるようになるだろう。この原稿を書いている時点で、1GBのUSBメモリーの価格比較サイト上の最安値はなんと105円だ。あり得ない話ではないだろう。

 そうなると、企業はそれを顧客に対して配布し(おそらく無料で)、コンテンツを配信できるようになる。例えばユニクロは「UNIQLOCK(ユニクロック)」をブログパーツとしてではなく、ハードウエアごと顧客に直接配れるようになるのだ。

 時計や電卓をノベルティーとして配っていたように、インターネットに接続できるモノを直接、生活者に渡すことができる時代がやってくる。

■広告主のメディア化が進む

 こうなってくると、企業と生活者は、従来型のマスメディアやウェブ、ブログなど、少なからざる人々にとってはまだまだ面倒で敷居の高いツールを使ったコミュニケーションではなく、もっとダイレクトなコミュニケーションができるようになる。これまでテレビCMが強力にリードしてきた時代が長きにわたって続いたのだが、よく考えれば企業はCMを流したいのではなく、顧客とのコミュニケーションを通じて商品やサービスを買ってもらいたいのであって、テレビのほかによい道具がなかったにすぎない。

 これからはテレビに担わせてきた機能の多くの部分を、企業が直接、超低コストで提供できるようになる。多チャンネル放送、ウェブ、ネット動画配信などを経て、広告主は自らメディア化していくに違いない。

■面倒な操作のないプッシュメディアに?

 こうした新しい端末は、おそらくテレビのようなプッシュメディアになるだろう。このほうが多くの人が受け入れやすいに違いない。自分から目的を持って操作していくのは誰にとっても面倒である。

 もちろん能動的な目的もないわけではないので、最小限のSNS機能を搭載し、ユーザー自身が文字や写真でのコミュニケーションを携帯電話などを通じて行うこともあるだろう。企業ブログなどで蓄積された企業のコミュニティー形成のノウハウがここで生かされてくるはずだ。

■マンション購入者への情報配信の例

 次の例は、一部脚色も加えているが、可能性という点では示唆に富んでいるので、一つのモデルケースとして紹介しよう。

 あるマンションデベロッパーがマンション購入者に無線LAN対応型のデジタルフォトフレームを無料配布した。毎日、建築状況をデジカメで撮影し、ネットワークを通じて配信したのだ。圧倒的な顧客満足をもたらした。

 購入者は入居後もその端末を新居に持ち込んだため、デベロッパーは「きょうは燃えないゴミの日です」といった生活案内情報を端末に配信するとともに、転居時の不動産売却情報をしたたかに送り届けることにも成功した。

■屋外から家庭に再び戻るプッシュ型メディア

 さて、話が後回しになったが、今回取り上げたデジタルフォトフレームは米ラスベガスで開催された「DIGITAL SIGNAGE EXPO(デジタルサイネージエキスポ)」という小さいながらも世界最大級の屋外映像メディアの展示会に参加したときに見つけたものだ。

 テレビが広告媒体として厳しい状況に置かれているのはアメリカも日本も同じだ。アメリカではデジタルサイネージが、流通店舗、駅や空港、娯楽施設など人々の生活動線の中のコンタクトポイントに次々に入り込んできている。このデジタルサイネージの機能をどんどんシンプルなものに絞り込んでいくと、デジタルフォトフレームに行き着き、設置される場所が屋外から家庭に再びぐるっと一周してくることになる。

 それがネットワーク化されることで、ある種テレビ的なプッシュ型配信が中心のメディアとして再び生まれ変わるのだ。どうやら全く新しいメディアはそう簡単に登場するものではなく、既存の成功事例が時間経過や技術革新によって徐々に形を変えていくということなのだろう。

※このコラムへの読者の皆様のご意見を募集してます。こちらをクリックすると、今回のコラムに関するコメントを受け取るための専用ページが開きます。(NIKKEINET外部にある江口氏個人のブログサイトにリンクしています)

[2009年3月4日]

-筆者紹介-

江口 靖二

デジタルメディアコンサルタント

略歴

 1986年慶應義塾大学商学部卒、慶應義塾大学新聞研究所修了、日本ケーブルテレビジョン(JCTV)入社。技術局、制作局、マルチメディア室、経営企画室を経て開発営業部長。CS、BS、地上波の番組制作、運用を経験。00年AOLジャパン入社、コンテンツ部プログラミングマネジャー。02年プラットイーズ設立に参画し放送通信領域のコンサルティングに従事。08年独立。現在デジタルサイネージコンソーシアム常務理事、慶應義塾大学DMC機構研究員、シェフィーロ取締役などを兼務。

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