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更新:2008年10月31日 12:37デジタル家電&エンタメ:連載・コラム

新清士のゲームスクランブル

日本のゲームは世界一ではない 「和田宣言」の重みを考える

 10月9日の「東京ゲームショウ2008(TGS)」の基調講演で、コンピュータエンタテインメント協会の和田洋一会長(スクウェア・エニックス社長)は「日本のゲーム産業はもはやトップでない」と冒頭で言い切った。ソフトウエア開発企業のトップとしてはかなりショッキングな発言で、業界関係者を驚かせた。(新清士のゲームスクランブル)

 和田氏の講演は、現在のような状況がなぜ起きたのか、そして何をするべきなのかを、日本のゲーム産業に関わる人たち全員に伝えようとする気持ちのこもった内容だった。この講演を振り返りながら、日本のゲーム産業が直面する問題を考えたい。

■TGSの期待タイトル1位は未発表作

 このコラムで何度か扱ってきているように、現実問題として日本のゲームは任天堂を除いて確実にシェアを落としており、かつてのような競争力を失っている。

 主要ゲームメディアの1つである米Gametrailers.comは、毎年TGS会場で「最も期待されるタイトルトップ10(GT Countdown Top 10 Most Anticipated Games of TGS 2008)」を発表する。第3位は「バイオハザード5」と順当だが、第2位は未だ発売日が見えない「ファイナルファンタジー13」だった。最大の問題は、第1位が「ICOチームの未発表ゲーム」であることだ。

 上田文人氏がディレクターを務めるソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のICOチームは、「プレイステーション2(PS2)」向けに「ICO」と「ワンダと巨像」を開発し、海外での人気は高い。

 しかし、ICOチームが「プレイステーション3(PS3)」向けに新作タイトルを開発しているという噂はあるものの、今回のTGSでは何の発表もなかった。それにも関わらず「最も期待される」という評価がわざわざ下されたのは、つまり、きちんと発売が見えているタイトルはそれだけ魅力に乏しいということにほかならない。

 実際、今年の年末商戦で、欧米圏では任天堂を除き、日本のゲームで大きく成功が約束されている目玉タイトルはない。

■欧米勢はなぜ日本より速いのか

 和田氏は講演で、「なぜ、日本のゲーム業界は世界のリーダーではなくなってしまったのか」と聴衆に問いかけた。

 日本のゲーム特有の絵柄などが生み出す嗜好の違いは、「ハリウッド映画が全世界に受け入れられていることを考えると理由にならない」。そして、ハードウエアの性能が向上したことによる開発のコスト上昇も「欧米圏の企業も同じ条件」といい、理由にならないと切って捨てた。

 鍵となるのは「日本がものを作る力、進歩する速度を、世界の技術革新の能力が上回ったことだ」という。そして、その速度を引き上げたのが「英語圏を中心に急成長したゲーム業界のコミュニティー」だと分析する。

 例えば、画像処理など新しい技術のミドルウエアを開発する場合でも、誰でも参加できるオープンなコミュニティーができあがっており、多くの企業が参加して急ピッチで開発が進められる。「プレイステーション3(PS3)」でも採用している「OpenGL」といった3次元グラフィックスの基礎プログラムは、様々な企業が共同で開発して、たちまちデファクトスタンダードとなった。日本単独では、これらの技術で勝ち目はない。完全に主導権を英語圏に握られてしまった。

 ユーザーがゲームを改造できる「Mod」のような欧米圏のカルチャーも、ゲーム教育やイノベーションにつながるコミュニティー形成に一役買っている。日本では「ゲームは特殊なもの」と考えられ教育する仕組みが整っていないが、欧米では大学との関係性が深まりカリキュラムの整備が進んだ。

 さらに、米国で開催される「ゲーム開発者会議(GDC)」のような専門カンファレンスが強い影響力を持つようになり、「正しくクリエイティブなビジネスの交流」(和田氏)が行われるようになったという。これはゲーム産業内だけでなく、大学や映画産業などとの連携を深めるきっかけにもなり、産業構造の層を増す役割を担った。

 これらゲーム産業に関連する「ネットワークのハブ」が多様に登場したことによって、世界の技術革新の速度が増したというのだ。

■ガラパゴス化している日本のゲーム

 和田氏は「これは日本の製造業がたどった道と相似形をなしている」と述べる。1980年代、日本は「電子立国」と自ら呼び、半導体などの分野で世界トップのレベルに踊り出て国際競争力を誇った。

 一方、米国にとって80年代は長い不況に直面した苦しい時期でもあった。製造業を完全に日本企業が奪い取ったからだ。ところが、90年代に入ってIT産業へのシフトが進むと、その中心は欧米企業になり、日本企業は「ガラパゴス化」に追い込まれていく。

バンダイナムコゲームスの鵜之澤伸副社長

 和田氏は、「ゲーム業界では10年遅れて同じ現象が起きた」という。90年代に日本のゲーム産業は急成長をおう歌した。しかし、その構造は完結して閉じており、すべてを自社で一貫開発する垂直統合だった。2000年代に入って、ミドルウエアなどの分業化を前提とする水平モデルへと世界が移行したときに、技術革新の速度に追いつけなくなった。

 バンダイナムコゲームスの鵜之澤伸副社長はTGSのパネルディスカッションで、日本のゲーム産業もいわゆる「ガラパゴス化」しており、「ガラパゴスのゲームを作っているのではないか」と述べていた。和田氏だけでなく、他のゲーム企業幹部にも今の日本のゲーム産業が閉じているという実感はあるようだ。

■>>次ページ 多様なネットワークの必要性

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