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更新:2008年6月27日 12:13デジタル家電&エンタメ:連載・コラム

新清士のゲームスクランブル

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■新たにツクールを成長させる仕組み

 それでも、ツクールを高く評価すべきなのは、エントリーツールとしてきちんと機能している点である。杉内氏によると、17歳前後の高校生が中心層を形成しており、2−3年単位で新バージョンを出してもユーザー層の年齢は変わらないという。つまり、常に新しいユーザーを獲得しているということだ。ツクールはゲームを学ぶツールとして若年層への導線となっているという証明でもある。

 新バージョンを出しても急に売り上げが伸びるわけではないが、じわじわと止まることなく売れ続けるという。ユーザーがゲームを発表しはじめると、それに刺激を受けたユーザーが参入してくるからだ。初期にリリースされるゲームはまだ質が高いものは少なく、杉内氏は「これぐらいなら、自分でも作れるのではないかと思うユーザーが参加してくる」という。昨年12月に発売されたVXは1万2000本を超えているが、現在も一定のペースで売れ続けている。

 杉内氏は、「ツクール側で画像などのコンテンツを用意しすぎてもよくない」と考えている。ユーザーは自分で不足しているコンテンツを足そうと工夫をする。建物などの画像を専門に作って他のユーザーに配布する「グラフィック職人」や、旧バージョンのデータを新バージョンに読み込めるようにする変換ツールを作ったりする「ツール職人」が登場して分業化がおこり、ユーザーがコミュニティーを自主的に形成してくれるともいう。

エンターブレインの杉内賢次氏

 ユーザーが個人のインターネットサイトを通じて、お互いに評価しあうことで小さなエコシステムが形成されていることを、杉内氏もよく理解している。これまでは製品を発売した後はユーザーにお任せというのが基本的なスタイルだった。コンテストのようなものを除けば、流通や評価の仕組みにまでは積極的に関与してこなかったが、今後はそういう仕組みを公式サイトに盛り込めるようにしていく予定という。

■新バージョンは「Xbox360」に対応

 さらに現在開発中の新しいツクールでは、作成したファイルを簡単にアップロードできる「セルフパブリッシング」の仕組みを入れるという。また、「Xbox360」の「XNA Game Studio Express」の環境にデータを出力できるようにもする予定だ。実現すれば、パソコン上で開発したデータをそのままXbox360で動かせることになる。XNAユーザーの評価システム「XNA Game Creators Club」を通じて、ユーザーは流通とフィードバックを得ることができる。

 国際的にも成功した日本製のユーザー向けツールは、ツクール以外に存在しないといっても過言ではない。また、このツールでの経験によってゲーム業界に必要な人材が生み出せることはすでに証明されている。だからこそ、今はツクールによって作られたキラータイトルの登場が必要な状況なのだろう。大きな成功例が一つでも登場すれば、状況は一変するものだからだ。

 ツクールを使ってユーザー間で日米で共同開発が行われ、話題となるタイトルが出てくるといった時代も、そう遠くないかもしれない。

・ツクール公式サイト「ツクールWeb」(http://tkool.jp/

・より子 ブログ「RPGツクール万歳!」(http://player.besidegames.com/yorico/8476/

・「プレイング・コロンバイン:ビデオゲーム論争の真実」(http://www.playingcolumbine.com/

[2008年6月27日]

-筆者紹介-

新 清士(しん きよし)

ゲームジャーナリスト。立命館大学映像学部講師

略歴

 1970年生まれ。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲーム会社で営業、企画職を経験後、ゲーム産業を中心にリサーチするジャーナリストに。ゲーム開発者を対象とした国際NPO、国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表。コンピュータエンタテインメント協会(CESA)理事。日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)理事。米「ゲームディベロッパーズマガジン」(09年11月号)で「重要な成果を上げたゲーム開発者50人」に選出される。著書に『「侍」はこうして作られた』(新紀元社)
<関連リンク>

国際ゲーム開発者協会日本
E-mail:sakugetu@gmail.com

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