更新:2007年3月23日 10:57デジタル家電&エンタメ:連載・コラム
新清士のゲームスクランブル北米で敗色濃厚なPS3とゲーム産業の死・GDC報告(2)
3月5日から9日まで米サンフランシスコで開催された「ゲーム開発者会議(GDC)07」の報告の第2回。今回のGDCで見えてきたのは、少なくとも高性能を売りにするコンシューマー機のシェア争いにおいて、北米ではほぼ決着がついたということだ。厳しい書き方だがソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「プレイステーション3(PS3)」対マイクロソフトの「Xbox360」の争いでは、PS3の敗色が濃厚になってきた。理由は、北米の有力なソフト供給会社がPS3に見切りを付け始めていることが明白にわかってきたからだ。 最大の弱点になった「セル」 北米のパブリッシャーの大半は、PS3とXbox360のどちらが勝っても大丈夫なように保険をかけて、両ハードにソフトを投入できるマルチプラットフォーム戦略を取っている。それでも結局は、普及台数が多い方を基準に多くの企業が戦略を組み立てていくようになる。つまり、100万本単位のヒット作が出るようになってきたXbox360を主体にして考え、PS3にはそれを移植するという方向性だ。しかも困ったことに、PS3は未だ開発環境が安定していない。 GDCでSCEは、「EDGE」というPS3向けのソフト開発環境を発表した。このEDGEを持って開発環境の整備を推し進める姿勢を鮮明にしたが、マイクロソフトが1年以上前に提供を始めた開発環境「XNA」にやっと追いついたという状態に過ぎない。 やはり、弱点はPS3の心臓部の「セル」プロセッサーである。セルはスーパーコンピューター並みの性能を発揮する潜在能力を持つ。しかし、セルの中に7機搭載されているコア部分「SPE」を積極的に使おうとすると、ソフトのプログラミングが複雑になり、Xbox360との互換性の乖離が激しくなる。 そうなると、Xbox360からPS3への移植が難しくなるため、マルチプラットフォーム戦略を取るソフト開発会社はSPEの7機すべてを使うのを断念しつつある。ただし、複数のSPEをうまく使えなければ単なるコア1つのCPUと同じで、下手をするとXbox360よりもパフォーマンスが出ない。実際、北米企業の間ではPS3をXbox360の下位互換機扱いする動きが広がりつつある。 GDC期間中に、ある大手パブリッシャーの開発部門責任者から非常に厳しい意見を聞いた。「私の会社は、マルチプラットフォーム戦略を推し進めているが、PS3版の開発が常に問題を抱えている。PS3版は、Xbox360版の単なる移植で済ますことができない。PS3版でも、Xbox360版と100%同じサービスを提供できるように開発を行っているが、それが容易ではないのだ」という。 特に困っているのがネットワークに関連する部分だ。Xbox360ではユーザー間のマッチングやランキングシステムなどの基本的なプログラムが、マイクロソフトによって提供されているため非常に容易に開発できる。「しかし、PS3ではそういうプログラムがSCEからまったく提供されていない。その部分をゼロから自分たちで開発しなければならないため開発費を押し上げ、プロジェクトの大きな負担になっている」。 このような理由からPS3向けタイトルを開発したいと思わせるインセンティブが、北米のパブリッシャーから失われつつある。例えば、大手パブリッシャーのMidwayは1月26日に行ったプレスカンファレンスで、コンシューマー機ではPS3独占タイトルとしていた「Unreal Tournament 3」をXbox360でも同時リリースすると発表した。 パソコン版だけでも100万本を狙えるタイトルであるが、これの開発元が昨年12月にXbox360向けにリリースした「Gears of War」が300万本売り上げた結果を見て、PS3独占にしておいては収益機会を失うと判断したのは間違いない。 「後出しじゃんけん」ができるマイクロソフト << 前のページへ 1 [ 2 ] [ 3 ] 次のページへ >> ● 関連リンク● 記事一覧
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