更新:2009年2月6日 15:26デジタル家電&エンタメ:連載・コラム
新清士のゲームスクランブル「スクリプト」で差がついた日米ゲーム開発の生産性 GDCを読む(2)
今年3月に米サンフランシスコで開催される「ゲーム開発者会議(GDC)」の講演予定などから世界のゲーム産業のトレンドを読み解く2回目は、日本が欧米に大きく水を開けられつつある「開発の生産性」を取り上げる。(新清士のゲームスクランブル) GDCでは毎年、世界のゲーム開発者の投票によって選出する「Game Developers Choice Awards」という賞の発表がある。前の年に発売されたゲームが対象だが、開発者が選ぶという性格上、必ずしも大ヒットしたタイトルが受賞するわけではない。米国市場中心になる傾向はあるが、異色のタイトルが賞を取ることもあり、ゲーム版カンヌ映画祭とでもいった華やかな雰囲気があるイベントだ。 ■かつては日本勢が名を連ねたが・・・ 2006年には日本の「ワンダと巨像」(PS2、SCE)が5部門を制覇する快挙を成し遂げたほか、賞の一つである「生涯功労賞(Life Time Achievement Award)」を任天堂で「ゲームボーイ」を開発した故横井軍平氏や同じく任天堂の宮本茂氏が受賞するなど、日本のゲームがいかに評価されているかを示す場でもあった。 今年のノミネート作品は発表になっていないのだが、日本勢は相当厳しいと思われる。昨年も、「スーパーマリオギャラクシー」(任天堂、Wii)、「ゼルダの伝説」(任天堂、DS)といったタイトルしかノミネートされなかった。年々、欧米タイトルの勢いに押されている。 日本のゲーム業界関係者と話すと、最優秀作品を選出する「ゲーム・オブ・ザ・イヤー」の予想として名前が挙がるのは、「Fallout 3」(Bethesda Game Studio、PS3、Xbox360)、「グランドセフトオート4」(テイクツー、PS3、Xbox360)、「リトルビッグプラネット」(SCEE、PS3)といったタイトルだ。 いずれも日本では大ヒットしていないが、昨年の欧米圏を代表する先進的なタイトルである。率直に言って、これらのタイトルと競えるほどのゲームを今の日本企業が作れるかといえば、難しいだろうと思う。作り方の根本が違ってきたからだ。 ■欧米で進化した「レベルデザイナー」という職種 欧米では当たり前だが、日本ではきちん確立しているかどうかが曖昧な職種として「レベルデザイナー」がある。そもそもは、「スーパーマリオブラザーズ」(任天堂)のそれぞれの面が「レベル」という表記になっていることに由来し、ゲーム内空間での物の配置や面構成を設計する役職がこう呼ばれた。「マップ作成職」という言い方もある。 ただ、マリオのレベル設計には、敵の配置などのバランスを調整してプレーヤーが感じる面白さを作り出すという、別の大きな意味がある。レベルデザイナーは、90年代の終わりに欧米で成立し始めた職種だが、現在では単に画面上の設計をするだけでなく、演出まで含めたその面(レベル)の「ユーザー経験」自体を設計する職能だと、解釈が広がっている。 欧米のゲーム開発は、まずゲームの土台となるエンジンを設計したあとに、レベルデザイナーが開発ツールを使ってそれぞれの面を作成する。日本の現場でも、レベルデザイナーの存在は知られるようになってきており、「メタルギアソリッド」(コナミ)や「ガンダムバトルユニバース」(バンダイナムコ)のチームなど一部では本格導入されて、実際に成功している。 ただ、日本では今も、面のおもしろさについてはゲームを企画するプランナー職が担当し、面のデザインはグラフィック職が責任を負うという分業体制が一般的だ。そのため、最終的に形になった各面がもたらすユーザー経験という価値に対し、誰が責任を持つのかを曖昧にしたまま開発を行うことが多い。グラフィックスはやたらと豪華なのに、ゲームのおもしろさが伴っていないというケースが少なくないのもそれが一因だ。 ■大規模なゲームを支える生産性の高さ Awardsの最優秀作品候補として名が挙がっているFallout 3は、アクションゲーム的な色合いは強いが、ジャンルとしては日本勢が強みとしてきたはずのロールプレイングゲーム(RPG)である。核戦争後のワシントンDCを舞台に、ユーザーが自分のキャラクターを成長させながら、世界の秘密に挑んでいく。ここでもレベルデザイナーが重要な役割を果たしている。 このゲームをすべてやり尽くすには数百時間かかるといわれるほどの膨大な量で、行けども行けども、なかなか世界の果てに到達しない。しかも、ゲームの本筋に関係ない部分も丁寧に作り込まれており、適当な廃屋のような家屋に入っても、その場所にあった反応をするキャラクターがちゃんといるのに驚かされる。 このようなゲーム開発を可能にするのが、レベルデザイナーの生産性の高さである。ツール類が豊富にあるほか、「スクリプト」機能が強化されたゲームエンジンを開発している企業が増えているのだ。 次ページ>>スクリプト言語はなぜゲーム開発の生産性を高めるか ● 関連リンク● 記事一覧
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