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更新:2006年9月14日 11:20デジタル家電&エンタメ:連載・コラム

江口靖二のテレビの未来

素人動画サイトを「ゴミ」と見下すテレビ的発想の限界

 東京地盤のテレビ局、東京メトロポリタンテレビジョン(MXTV)が自局で放送中の番組「BlogTV」をあのYouTubeなどの動画投稿サイトに自ら配信するという試みを開始した。各テレビ局は動画投稿サイトに違法にアップロードされた番組に対し、膨大な数の削除要請を時間とコストをかけて行っているが、今回は当のテレビ局自身がアップロードを行い始めたわけだ。当たり前だがこれを合法的に出来るのはテレビ局以外にはあり得ないのだが、非常に積極的で革新的な戦略だと言える。

■テレビ局と動画投稿サイトの連携は進むのか

 「あれはMXさんだからできること」と、その他のテレビ局関係者は口を揃える。MXTVは東京の最後発かつ、唯一のUHF局ということで認知度はあるが実際に見ている人(UHFアンテナを立てたり、ケーブルテレビ経由で見られる状態にある人)は多くないという事情があり、1人でも多くの視聴者を獲得したいという思いは人一倍強い。キー局のようなネットワーク局もないので単独の判断が可能だ。著作権に関しては新番組であるから権利処理できることだけやればいいし、出演者は司会のKNN神田敏晶氏を中心に全員ネット側の人々だから問題はない。そして何よりも、今回は番組スポンサー(ネット関連サービスのデジタルガレージ)の意向が強く働いたはずだ。

 こうしたことから、今回のBlogTVのケースがすぐに他のキー局に波及するとは考えにくい。MXTVも「BlogTVのコンセプトがMXTVの全番組に適用される訳ではない。抗議すべき著作権違反にはきちんと対応していく」としている。そもそもキー局は話題性や実績はともかく、すでに様々な形でネット配信を行っている。

 理由はどうあれ、こうした試みがパンドラの箱を開けたことになるのを後になって気が付くことになるに違いない。

■ピラミッドの頂点からの眺め

 では、テレビ局は動画投稿サイトについてどう考えているのだろうか。テレビ関係者はこう言う、「素人動画はゴミだ」。

 この意見は2つの内容を含んでいる。一つはドラマなどは制作コストが作品の質に比較的比例しやすいということ。現状の日本では人、物、金すべては地上波キー局を中心とするピラミッド構造から構成されているという指摘である。これはかなり正しい。

 もう一つはジャーナリズムの話だ。いわゆる「社会の木鐸」的な発想である。これは微妙だ。免許によって守られた人々による、源流を新聞とするジャーナリズムは社会に対して一定以上の役割を果たしてきたと思うが、限られたニュース番組時間に入りきらない情報は単純にふるい落とされてきた。どうしてニュースでは悲惨な事件や事故ばかりが伝えられるのか。心温まる話は本当に存在しないのか、価値がないのかと思われたことはないだろうか。

■集まるということに価値がある

 そこに登場してきたのが動画投稿サイトというロングテールだ。しかし勘違いしてはいけない。ロングテールになっても素人の個々の作品はその大部分がやはりゴミである。「チリも積もれば」的に積分値で比較するとヘッド部分に匹敵するから十分価値がある、のでは断じてない。ゴミがゴミとして価値を生むのである。ここがテレビ局的発想では理解されない部分だ。

 ゴミという単語の連発で画面を汚して申し訳ないが、さらにゴミの例を見てみよう。ケータイのキラーコンテンツはメールだ。それも企業の発信するメールマガジンではなく、友達同士の他愛もないメールだ。友達といっても会ったこともないメル友だったりもする。ソーシャル・ネットワーキング・サイトのキラーコンテンツもしかり。mixiでとれほどくだらない会話が行われているかご存じだろうか。そしてそこには5億円以上の広告費が集まり、上場前の計算で時価総額が1000億円以上ともなることを。

 作品性の高さとは関係なく、集積自体がゴミを宝に変えるのだ。おそらくリアルな都市も同じような機能があるのではないだろうか、そう考えるとわかりやすい。都市に人が集まりさまざまな商売が発生していったように、いま動画投稿サイトを巡って新たな商売が生まれようとしている瞬間なのだろう。アマゾンのように魔法の宝探しツールを提供する者、グーグルのように道く人々に常に話しかけようとする者、分別収集を奨励する者なども現れるかも知れない。

 ゴミが価値を生むというのは、ゴミ屋敷の特集しかできないテレビ局には最後まで理解できないことなのだろう。

-筆者紹介-

江口 靖二

デジタルメディアコンサルタント

略歴

 1986年慶應義塾大学商学部卒、慶應義塾大学新聞研究所修了、日本ケーブルテレビジョン(JCTV)入社。技術局、制作局、マルチメディア室、経営企画室を経て開発営業部長。CS、BS、地上波の番組制作、運用を経験。00年AOLジャパン入社、コンテンツ部プログラミングマネジャー。02年プラットイーズ設立に参画し放送通信領域のコンサルティングに従事。08年独立。現在デジタルサイネージコンソーシアム常務理事、慶應義塾大学DMC機構研究員、シェフィーロ取締役などを兼務。

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