更新:10月1日 11:00ビジネス:最新ニュース
日本人がイメージするインドは間違いだらけ?
「インドでは王様はウサギを食べ、庶民は牛肉を食べる」――こんなことを書くとインドの友人たちからは怒られるかもしれない。しかし、これはひとつの事実である。前回のコラムの最後に「インドは飽きない国だ」と書いたように、14年間通い詰めても毎回、新しい驚きがある。今回は少し趣向を変えて、日本人が描くインドのイメージと現実を考えてみよう。 インドのイメージとはどんなものがあるか。 ターバンを巻いてナンとカレーを食べる、ヒンズー教、カースト制度、ヒンズー語、IT産業、頭が良い、2桁の掛け算、ヨガ、アーユルヴェーダ、ベジタリアン、牛肉を食べない、衛生的でない、紅茶、親日的、非暴力、中国に次ぐ人口、経済大国、貧富の差……。「インド人、嘘をつかない」というのもあるか。まだまだあるだろうが、この辺りで。 ■ナンとヒンズー語は北インド ここで明らかに違うのはターバンと親日であろう。ターバンを巻いているのはシーク教徒であって、非常に少ない。現在ではシン首相、昔のテレビではプロレスラーのタイガー・ジェット・シンとか演歌歌手のチャダさんが巻いていたので、日本ではターバンのイメージが強いだけである。 インドは親日でも反日でもないだろう。ほとんどの人は日本と韓国の違いもわからないのが現実である。筆者もベルギーとルクセンブルクの違いがわからない。もちろん日本を好きな方もいる。インドに行くたびにお世話になっている。困った時には親身になって助けてくれる。しかしだからといって、「インドは親日的」とはならないだろう。 ナンとヒンズー語は北インドである。南インドは米文化であり、小麦のナンは食べない。4年前だったか、日本から行った研修生が「ナンを食べたい、ナンを食べたい」とシェフを困らせていたが、それは無理である。1人の研修生のために朝の3時から釜を焼かなければならない。 南インドではヒンズー語も通じない。タミール州の学校ではタミール語と英語の教育は行うが、決してヒンズー語を教えることはない。そのおかげでか、タミールにはヒンズー語を話すテロリストが入って来ることができない。 なかには頭の良い方もいる。これは事実である。しかし日本人と比べて、どちらが頭が良いかなどと比べても無意味である。中国人も同じであろう。人口が多いから頭の良い人の絶対数も多いのだろう。また、大学を出ても就職先の問題がある。インドではまだまだIT以外の産業が成長していない。給料もIT業界が飛びぬけて高い。だから優秀な人がIT産業に集まるのであって、日本とは環境が違う。 ■意外と低い識字率 教育に関してはいろいろな説がある。2桁の掛け算は有名な話で、筆者も以前に3歳児教育の現場を見させていただいたことがある。そこでは3歳の子供が2桁の足し算を黒板に書いていた。しかし一方では、詰め込み教育の弊害で「考える力が弱い」というウィプロ社が発表したリポートもある。たしか世界の四十数カ国のなかでインドの子供の学力は30番台であった。 それ以前の問題として、ケララ州を除くと識字率がまだまだ低い。筆者がインドでいつも使っている運転手のサンパス君は住所を見せれば目的地に行けるし、地図も読める。だからオートリクシャー(三輪タクシー)の運転手以外は文字を読めると思っていたが、それは違った。サンパス君の都合がつかずに代わりの運転手が来る時がある。フォードの車を自分で持っているし、英語も喋る。しかし行き先の住所を見せても顔を背ける。地図も見ようとはしない。電話をかけて相手に行き方を聞くだけである。何回も聞くのは相手に迷惑だ、自分で調べないのかと怒ってみるのだが、これが普通である。教育の善し悪しではない。 ■タタ家はゾロアスター教徒 インド人はヒンズー教徒というのも当てはまらない。ヒンズー教徒が多いというだけである。世界でイスラム教徒が最も多い国はイランでもパキスタンでもない。インドネシアとインドである。たしかインドには1億7000万人のイスラム教徒がいるはずだ。10億人近くのヒンズー教徒と比べると少数派ではあるが、経済力は持っている。 政治面でもあまりヒンズー教国家の印象はない。シン首相はシーク教徒である。国民会議派のソニア・ガンジー総裁はヒンズー教徒であろうが、もともと彼女はイタリア人である。前回のコラムで書いたアンドラプラデッシュ州のレディ前首相はキリスト教徒と聞く。 先日、タミール州に関するリポートを読んでいたら、「タミール州首相の第3夫人の長男が云々、第4夫人の次男が云々」という記述があった。無知をさらけ出すが、まったく知らなかった。タミール州の首相はイスラム教徒のようだ。ヒンズー教は一夫一婦制だから「第3夫人」なんてあるわけがない。公的リポートなので、間違ってはいないだろう。 経済面でもヒンズー教は目立たない。インド最大の財閥タタグループのタタ家はゾロアスター教徒である。インドの経済首都ムンバイの昼間はゾロアスター教徒の街といっても過言ではない(映画「スラムドッグ$ミリオネア」に描かれたように夜はマフィアの街であるが)。 しかし最近はイスラムの経済力が高まっている。特にヒンズー系の銀行による貸し渋りが横行するなかで、オイルダラーをバックとしたイスラム銀行の存在感が高い。以前のコラム「第79回 求む若者、インド・チェンナイに『リトル東京』」で書いたリトル東京のデベロッパーETA社もイスラム教系である。 社会的な影響という意味ではヒンズー教とカースト制度の力が絶対である。イスラム教もキリスト教もゾロアスター教もシーク教も影は薄い。表立っては誰も異論を唱えられない。 ただ、パキスタンとの紛争とかテロの報道では宗教対立が激しいように見えるが、そうでもない。もちろんヒンズー原理主義とイスラム過激派の対立は激しいが、街の中ではあまり感じない。シーク教のグルの誕生日には休業状態になるし、クリスマスには会議室で飾りを作り、廊下をサンタさんが走り回っている。イスラムの祭りでは玄関で油を燃やす。
これがインドのヒンズー教の会社である。隣村の鎮守様の祭りといった感である。第33回のコラムでも書いたが、ケララ州の多くのバスやタクシーにはヒンズー教、イスラム教、キリスト教の3宗教が仲良く1枚になったシートが貼られている。 そんなシールは最も社会が安定しているケララだけだと言ってしまえばそうであるが、タミール州でも普段は宗教対立を感じる事はない。 次ページ>>「庶民は牛肉を食べる」 ● 関連リンク● 記事一覧
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