更新:7月9日 09:39ビジネス:最新ニュース
グリーンITとの不思議な関係――クラウド・コンピューティング入門(下)
クラウド・コンピューティングの概念や特徴について前回まとめたなかで触れたように、クラウド・コンピューティングには大きな利点がある一方で、思わぬところにも問題を提供し始めた。データセンターで消費される電力である。(岸本善一) クラウド・コンピューティングでは、その大部分のパワーをサーバー側に持ってきている。ということはサーバーやそれに付随する機器を常時、安定して運営することが重要になり、そのためIT機器をデータセンターに置くことが常識的である。 米国ではデータセンターでの1平方メートルの電力消費はオフィスの数倍になることが知られている。データーセンターでの消費電力は2002年から06年の間に2倍になり、06年の全米の消費電力の1.5%となった。 このままの傾向が続けば、06年から11年の間に消費電力はさらに倍増すると予測されている。この情報は議会にも報告され、日本の環境省にあたるEPAやエネルギー省は多くのコンソーシアムとともに、データセンターでの電力消費を削減し、グリーンなデータセンターを達成するためにいくつもの活動を行っている。 ■企業のモチベーションはどこにあるか 米国は京都議定書への署名の拒否などでみせたように、地球温暖化防止や二酸化炭素(CO2)の排出削減への取り組みに消極的であった。しかし、ここに来てこの問題に関して大きく舵を切った。企業も、特に大手を中心にこの問題と向き合うことを始めた。企業はこの問題を社会的責任と電力・エネルギー費の高騰や不足という観点から見ている。 大義名分は社会的責任で、CO2の排出削減を達成することは企業の責任であるという立場だ。しかし、本音のところでは電力・エネルギー費の削減が急務となっていると、最近参加したグリーンデータセンターのコンファレンスで、サン・マイクロシステムズのCIOが認めていた。 ウェブ革命が起きたことで、IT自体を事業としない普通の企業間の競争でもデータへのアクセスを終始提供できることが重要になってきた。これをサポートするクラウド・コンピューティングなどでIT機器数が増大し、それに伴って電力消費が急増している。また電力消費が増えていくなかで、電力が安定供給され続けるかどうかという不安も生じている。 ■データセンターの設置場所の条件 マイクロソフトやグーグル、ヤフーその他の会社は現在数個のデータセンターを建設中だ。それらは巨大で、マイクロソフトのデータセンターには約50万平方スクエアフィート(4万6500平方メートル)に達するものもある。これは東京ドームの大きさに匹敵する。データセンターが大きくなれば、それに見合った電力供給や土地を確保しなければならない。このために最近のデータセンターは大都市周辺でなく、地方に建設されることが多い。 1つの例は、米国北西部のワシントン州東部のコロンビア川流域にあるクインシー市だ。ここにはマイクロソフトやヤフーやask.comなどがデータセンターを建設している。シアトルから東に200キロ程度の場所で人口は約6000人の農業が中心の町だ。 データセンターを建設する場所を選択する条件は、税金、電力費、電力の安定供給、土地の費用などだ。データセンターが進出すればそれに課税できるため、地方公共団体は誘致のため税制面でデータセンターを優遇する。 クインシーでは電力費は1キロワット時あたりわずか1.6セントで、これをサンフランシスコの12セントや全米平均の6.2セントと比較するといかに安価であるかわかる。電力は近くのダムによる水力発電で、安価でありかつ電力の安定供給を受けることができる。しかも、水力発電は環境にやさしいことでも知られている。ここで大義名分の環境にやさしいデータセンターの面目も立つことになる。 同じコロンビア川流域の反対側オレゴン州ダレス市にはグーグルがデータセンターを建設している。その地を選択したのも、同じ理由からだろう。
そんな田舎に建設したデータセンターで働く人材を十分確保できるのだろうか。答えは明快だ。人が必要ないのだ。最近の米国のデータセンターはスタッフの数を減少させ、リモートで管理する方向に進んでいるため多くのスタッフを雇用しない。ハードウエアに問題が生じた際は対処せず余剰を持たせたほかのハードで肩代わりさせ、故障した場合はそのままにしておく。 これを突き詰めていくと、コンテナ形式のはめ込み式のセットを組み合わせてデータセンターを構築することになる。引っ越しなどで日本でもよく見るコンテナの中にサーバーを詰めた数十のラックを搭載して運用するものだ。マイクロソフト、サン、IBMなどが使用を始めている。ヒューレット・パッカードも人のいないデータセンター構築を目指している。 ■日本での取り組み 最近日本でデータセンターのサービスを販売する人やデータセンターのサービスを受けている人たちと話す機会があった。一般的にデータセンターの場所は東京23区が望ましく、中でも新宿や大手町のような都心が好まれる。理由は障害が発生した際に、簡単に電車などで行き対応できるというものだ。また利用する側は電力を毎月定額で支払うので、あまり機器を統合して電気代を節約しようとするモチベーションがわかないとのことだった。 今米国で起こっていることとは大いに異なっている。日本は天然資源に恵まれず、国土も狭く、更に地震などの自然災害も多く、エネルギー消費はできるだけ削減するべきだが、データセンターに限って言えばあまり節減ということにはなっていないようだ。 とは言っても、多少の動きはある。データセンター効率化を推進するグローバル団体であるThe Green Gridは経済産業省、電子情報技術産業協会(JEITA)、ならびにIT・エレクトロニクス関連の業界団体が主体となって発足された「グリーンIT推進協議会」と5月28日付で提携し、日本国内での活動を本格的に開始した。今後この分野は日本でも大きく発展すると予想される。大いに注目したい。 [2008年7月9日] ● 関連記事● 記事一覧
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