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更新:2月2日 10:00ビジネス:最新ニュース

これを読んで怒りを覚えるあなたは・・・

 オバマ米政権が誕生した。就任式を見ていて、久しぶりに鳥肌が立った。テレビのニュースで鳥肌が立ったのは久しぶりだ。(夏野剛のネオ・ジャパネスク論)

 前回は、1989年。朝、ニュース番組をつけると、壁の上でつるはしを振り下ろしている男の姿が映った。ベルリンの壁の崩壊である。長い間続いた冷戦体制の終焉。政治イデオロギーの対立の終焉。時代の舞台がぐるりと変わる瞬間。当時、若手社員だった私は、すぐにテレビの前から離れられず、遅刻した。

 そして今回。米国初の黒人大統領の誕生。しかも47歳の若さ。国務長官に元ファーストレディーで選挙戦のライバルだったヒラリー・クリントン氏を充てることに始まる、オールスターメンバーの閣僚。

 世界的経済危機の今、その発端となった米国で、今までの延長線上の人選でなく、まったく新しいリーダーが生まれた。このタイミングでこの新しい人選が行われる米国のすごさ。もちろん、経済危機でなければ、この人選ではなかったかもしれないが。

就任式後のパレードで観衆に手を振るオバマ大統領夫妻=1月20日、米ワシントン〔AP Photo〕

■旧勢力が一掃されるタイミング

 ポジティブフィードバック。これまでにない新しいリーダーが出てくる。国民の期待が高まる。国民の支持が高いのでライバルですら支える。支持が高いので思い切った施策ができる。施策が効果を呼べばさらに支持が集まる。このように危機をチャンスに変える可能性がある仕組み。米国の仕組みは危機に、そして変化に強い仕組みと感じる。

 行き過ぎた金融証券化、現実と乖離した証券市場、ものすごい勢いで進化するITとそれらについていけない社会の諸制度。これまでの延長線の考え方、施策では、新しい問題は解決できないことが証明された今、あらゆる面で必要となっている「Change」。

 Changeはトップからしなければならない。社会体制というものはボトムアップで大きな変化を実現するのは難しい。既得権力を手放したくない方が大勢いるなかで、強力なリーダーシップや強制力がなければ革命は起こせない。

 もし今が戦国時代であれば、さまざまな社会の枠組みが行き詰まっているこの状況は、旧勢力が一掃されるタイミングであろう。もちろん今は平和な世の中なので、平和裏に変化をしなければならない。

■長期的な視点に立てる日本企業のトップだが…

 どうするのか。どうすればいいのか。米国にはリーダーを変える仕組みが比較的整っている。直接選挙だからこそオバマ大統領が選ばれた。企業でも、上場企業の取締役の多くは社外役員であり、社外役員が中心となって最適だと思う社長を選ぶ。変化が必要だと取締役会が感じたときには、外からトップを連れてくることは普通である。

 明確な提携戦略を打ち出せなかった米ヤフーの創業者でありCEOだったジェリー・ヤン氏が辞任に追い込まれ、新しいCEOが外部から招聘されたのは記憶に新しい。社内から昇進した社長と上下関係のある取締役が主流の日本企業にはありえないことだ。

 もちろん、日本企業にもいいところはたくさんある。米国の経営陣が自らの報酬を得るために短期的視野に立ち、目先の利益を追いかけ、企業のそもそもの競争力を軽視したことも今回の経済危機の一因と言われている。

 確かに日本企業のトップの給料は安い。トップになるまでの道のりも長い。トップになるのは、トップになってから何かを変革しようとか、トップとして何かの目的を達成しようというよりは、どちらかというと人生のゴールにしようという人も多い。

 だから長期的な視点に立って、従業員の立場を理解し、安定的な成長を目指す。というか、野望なく、展望なく、哲学なく経営者となり、大過なく過ごすことを目指す。

■緊急時に弱い日本型システム

 平時には日本型システムは強い。世界経済が順調に拡大し、市場も大きな変動なく、大きな決断をしなくてもいいときには、日本型のトップのほうが企業にとってはいいかもしれない。誰が経営しても企業はきっちり利益を出す仕組み。個人より組織を重視し、ムラなく、安定的に成長する。

 しかし、緊急時には弱い。とりあえず周りに合わせて動く、過去の延長線上に戦略を描く、内部の論理で、仲間内だけで議論する――というのでは、市場の変化についていけない。

 社会は急速に変化している。市場も大きく変動している。異論に耳を傾けず、過去からの同じメンバーで、過去からの同じ路線で、同じ議論を繰り返していると、世の中の変化に遅れてしまう。つまり退化していく。

 政治や企業の進化とは相対的なものである。周辺環境が変化しているときに、過去と同じことをやっていたら、それは退化である。周辺環境が先に行ってしまうので、留まっているものは相対的に遅れてしまうのだ。相対的に遅れるということはすなわち退化することになる。

■現リーダーの良心に期待

 思い切った変革。平時にはあり得ない変化。形だけでなく、実質的に意味のある変化。日本型のリーダーシップではやりにくいこれらのことが、今の日本に必要であろう。今までのやり方がすべて行き詰まっているからだ。

 ではそれをどう実現するのか。日本には米国のような仕組みはない。変化を要求されている時代に変化させるリーダーを生み出すことは、制度的にはできない。

 としたら、現リーダーたちの良心に期待するしかない。

 政治のリーダーの方、社長の方、役員の方、官僚の方、ともかく人の上に立つ方。信念をもって、あっと驚くようなことをやってください。国民が驚くような思い切った政策。社員がのけぞるような実質的な体制の変更。成功するかどうかはわからないけれど、いままでには考えられなかったような変化を引き起こす行動。

■できないなら「英断」を

 そんなことはできない。そんなことは思いつかない。そんなことは効果がない。そんなこと自分の趣味じゃない。そんなことやったことない。とりあえず部下に検討させる。

 そういう答えが思い浮かんだリーダーの方、お願いです。この危機を乗り切るために、日本の将来のために、ひいては人類の進化のために、身を引いてください。失うものは何もありません。もう皆さんは十分尊敬される成果を出されました。今こそ、変化を主導できそうな後継を指名してください。その新しいリーダーに任せてください。

 新しいリーダーのやることは気に入らないかもしれません。失敗するかもしれません。でも変化しないよりマシです。日本にとって最後のチャンスです。お願いします。

 はっきり言います。皆さんが邪魔なんです。これ以上日本を駄目にしないでください。英断を下して下さい。

 これを読んでお怒りを覚える方、あなたがまさに時代遅れなんです。

[2009年2月2日]

-筆者紹介-

夏野 剛(なつの たけし)

慶應義塾大学政策メディア研究科特別招聘教授、ドワンゴ取締役

略歴

 1988年早稲田大学政治経済学部卒、東京ガス入社。95年ペンシルバニア大学経営大学院卒。96年ハイパーネット取締役副社長。97年NTTドコモ。榎啓一氏、松永真理氏らと「iモード」を立ち上げた。2005年ドコモ執行役員マルチメディアサービス部長。08年にドコモを退社。
 現在は慶應義塾大学政策メディア研究科特別招聘教授のほか、ドワンゴ、セガサミーホールディングス、SBIホールディングス、ぴあ、トランスコスモス、NTTレゾナントの取締役を兼任。ドワンゴでは動画共有サービス「ニコニコ動画」の黒字化・国際化・一般化を進めると宣言。特別招聘教授を務める慶応大学政策メディア研究科では「IT革命」をテーマに講義する。

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