ITプラス ビジネスを制する人のIT総合ニュースサイト

音声ブラウザ専用。こちらよりメインメニューへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより記事見出しへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより見出し一覧へ移動可能です。クリック。

NIKKEI NET

ニュース マネー:株や為替、預貯金、投信の最新情報。持ち株チェックも IR:上場企業の投資家向け情報を即時提供 経営:実務に役立つニュース&連載企画。外注先検索も 住宅:新築・賃貸からリゾートまで住宅情報満載、資料請求可能 生活・グルメ:グルメ情報や、健康ニュースなど生活にかかせない情報満載 教育:学びからキャリアアップまで 就職:学生の就職活動を完全サポート、マイページ利用も可能 求人:日経の転職サイトとWeb上の企業ページから自動的に収集した求人情報を掲載 クルマ:クルマ好き応援サイト C-style:ライフスタイルにこだわりを持つ30代男性向けウェブマガジン 日経WOMAN:働く女性のキャリアとライフスタイルをサポートするコンテンツ満載 日経ワガマガ:アタマとカラダを刺激する、大人のためのコミュニティー

更新:9月16日 09:55ビジネス:最新ニュース

脱・多重下請け構造へIT業界がすべきこと

 前回取り上げた人月単価とともに、情報サービス産業で長らく指摘されている問題が、多重下請け構造である。日本の市場ニーズや労働慣行などの社会的背景の要請に応えるべく形成されてきたまさに構造的な問題である。

 多重下請け構造は情報サービス企業にとっては非常に便利な一面をもち、明日からなくせと言われれば正直この業界は立ち行かない。しかし同時に生じるマイナス面が最も重要な人材のモチベーションに大きな影響を及ぼしてしまっている点を放置しておくわけにはいかない。

■多重下請けが引き起こす問題

 多重下請けについては筆者自身もよく意見を求められるが、問題は大きく分けると二つある。一つは指揮命令や責任区分の問題、もうひとつは労働環境の問題である。

 多重下請けが世の中で問題になるのは、たいてい不祥事が発生した時である。情報漏えいの事故が圧倒的に多く、情報を漏らしたのが5次や6次請けの社員であったとか、更には正規社員ではなく契約社員であったなどのケースで、世の中の常識からして本当に管理ができていたのかが問われる。

 ただでさえ曖昧な日本式の契約関係が多重ともなれば、責任関係も複雑になり、また二重派遣や偽装請負の防止といった法令順守のチェックが甘くなる可能性もある。損害賠償問題などが生じても、末端の会社や個人事業者には、実態として責任能力がないことも多い。

 もう一つは労働環境の問題である。請負契約では、根本的に発注者優位である。少々の無理をお願いすることもあるし、請ける側も顧客の信頼を得たい。しかし多重構造の中で、その無理が少々ではなくなる場面もあり、下請け企業の社員のインセンティブはやはり低下しやすい。そもそも、システムの要求が未確定なままスタートしたような案件では、その傾向は顕著である。

 また、多重構造で中間に入る会社の管理コストや利益を差し引けば、技術者個人の報酬は相対的には低くなってしまう。最近は雇用の流動性も高まり、実力に応じたポジションに転職することは比較的容易ではあるが、日本人一般として職業の安定を志向する傾向は依然強いので簡単に是正されるものではない。

 筆者は、下請け構造そのものが問題だとは思わないが、上述のような管理面、労働環境面の問題からみても、多重の度合いについてはできるだけ少なくするべきだと思う。

 IBMのように、再々委託禁止令を敷くのも一つのアプローチではある。しかし、業界の小規模な会社や個人事業主の中には、他に変えがたい高い能力やスキルを有する技術者もおり、筆者自身そうした人たちのお世話になった経験は数え切れない。そうした貴重な技術者の活躍できる場が失われるような事態は避けねばならない。

■米国はなぜ多重構造にならないか

 海外においても、下請け自体はどの国にも存在するが、日本のような多重構造は存在しないようである。情報サービス産業協会(JISA)で米国の状況を調査した例を紹介してみよう。

 まず、民間企業における情報システムの約4割は自社開発されており、システムがその会社の差異化領域であるほど、その傾向は強いようだ。新たなプロジェクトが発足する場合、必要な人材を有期契約で直接雇用し、プロジェクトが終了すれば契約を解除するような形をとる。

 もちろん、部分的には外部のITベンダーを使うこともある。しかし、あくまで自らがプロジェクト全体のマネジメントを行うので、自社内社員のように管理するT&M(Time & Material)契約が一般的であり、一括請負の形態は少ない。派遣要員の契約単価を上げるべく努力することが、ベンダーにとっても技術者個人にとってもインセンティブになる。

 一方、政府など公共領域での大規模なシステム構築の場合は、若干事情が異なる。民間に比べて専門人材を抱え込むケースが少なく、また政府業務の肥大化を防ぐ意味で、大部分を外部に一括委託する場合も多い。

 この領域を中心にビジネスを展開する大手ITベンダーとしては、一部専門的な部分を外部に再委託することはあるものの、原則必要な技術者は自社で直接雇用すればよいため、日本のような多重下請け構造は存在しない。つまり、ユーザーやベンダーが必要に応じて、コンサルタントやIT技術者を確保できる柔軟な人材供給市場が形成されているのだ。

 従って、米国には、専門的な能力を有する一部企業を除いて、大手のITベンダーからの再委託を中心に手がける下請けITベンダー企業群は存在しない。中小規模のベンダーにしても、基本的には自らが対応できる規模の案件を発掘して、直接契約するケースが多い。

 こうした日米の違いには、契約社会や労働法制といった社会的背景が大きく影響しており、現象面だけで日本の事情を批判しても、問題の解決には繋がらない。

 日本並みに労働法制の厳しいドイツやフランスについては、残念ながら詳しい状況は調べられなかった。筆者が知り合いに聞いた限りでは、基本的には米国と似ているようだ。個人的な推測にすぎないが、IT関連職が知的な専門職の地位として確立しており、一般的に欧州で保護対象となる職業群からは分離した、柔軟な人材流動市場があるのではないだろうか。

次ページ>>日本でも多重下請けをなくす道はあるか

<< 前のページへ     1   [ 2 ]     次のページへ >>

● 記事一覧