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更新:9月9日 10:27ビジネス:最新ニュース

「一向に黒字にならない」動画サイトが本気で生き残るには

 「YouTube」「ニコニコ動画」「GyaO」といった動画サイトで、私たちユーザーは多彩なコンテンツを楽しめる。ところが動画サイト側には、配信コストが膨大にかかるという大きな問題がある。無料公開で見られれば見られるほど、広告や有料購読料で経費を賄うのが難しくなり、赤字が増えてしまう状況だ。(勝間和代のITマーケットウォッチ)

 世界最大のYouTubeは、赤字が4億7000万ドルにもなるとの試算がある。日本でも、ニコニコ動画は黒字化に悩み、GyaOも単独での運用をあきらめて、ヤフーの動画サービスと統合したうえでフジテレビジョンと日本テレビ放送網の出資を受けるかたちとなった。

 では、動画サイトは無料、有料を問わず黒字化が可能なのだろうか。

■映画の料金は「1分15円」

 その答えを出すためにまず、私たちがコンテンツに対してどのようにお金を払うのかを考えてみよう。コンテンツを見に行く目的は、エンターテインメントと情報収集の大きく2つに分類できる。動画サイトの場合は、前者のエンターテインメントの比率が圧倒的に高いはずだ。

 このエンターテインメントで動画を見るという行為は、映画を見る、あるいはテレビを見る、という行為と競合する。映画の場合は主として入場料金で、テレビの場合は主として広告収入でコンテンツ費用を回収している。ビジネスモデルをこの2つと比較すると、どうなるだろう。

 映画の場合、2時間で1800円と計算すると1分あたりの料金は15円になる。これほど高い料金や広告費を取れる動画サイトはない。ではなぜ映画がそれだけの入場料金を取れるかといえば、とてつもなくぜいたくにできているからである。

 制作コストは映画によって千差万別だが、5億円かけて約30万人、30億円かけたら約170万人を集めて回収する。一方、動画サイトの1年間の制作予算は映画数本分にも満たないだろう。これで映画と同等の料金を徴収するのは厳しい。

■ビジネスモデルの前提にも差

 無料モデルの地上波テレビの場合は、主たるキー局の年間の番組制作予算が100億円台の後半、1000億円弱にのぼる。ただし、配信コストに関しては電波というウェブとは比べものにならないほど安いプラットフォームを使っている。最近は広告の減収が著しいとはいえ、視聴時間で逆算すると、ユーザー1人当たりで1分間に約0.2円程度の広告収入を稼いでいることになる。

 こうした制作費と収入の構造のほかにも、映画には短期間に集中して、場合によっては世界展開で配給することで得られる規模の利益がある。また、テレビの場合も「ながら視聴」が1日に4時間ほどもあるなどの効果で、青色吐息ながらも今のプライシングでなんとか成り立つことができる。

 これに対し、動画サイトはコスト面でも、あるいは視聴習慣面でも特にアドバンテージがない。仮に、同じビジネスモデルを前提に映画やテレビ並みの品質の番組を配信したとしても、ユーザーが現在のコンテンツを映画、あるいはテレビの代替とみなしている限り、少なくとも収益化は大変困難といえるだろう。

■動画というメディアの威力とは

 では、無料という軸を保ったまま収益化する他の方法はないのだろうか。結論から言うと、広告ではなく物販につなげるしかないと考える。

 テレビは、消費者が広告で認知してさらに購買にいたるコンバージョンが悪い。だからこそ、広告単体では一人当たり1分間で0.2円しか取れないともいえる。これは地上波の場合であり、視聴習慣がついていないBSやCSチャンネルの収益性はさらに悪い。

 ところが唯一、どの局も大変収益性がいいコンテンツがある。それは何かといえば、「テレビショッピング」だ。ショッピング番組のいいところは、広告から購買にいたるというコンバージョンを経ずいきなり購買となり、動画の貢献度が測りやすいことにある。

 動画はある意味、私たちの感性を呼び起こすメディアだ。静止画に比べてさまざまな感情が動きやすく、テレビショッピングで実際に商品を見て効用を知ると、私たちはついつい衝動買いの心をそそられ、購買意欲を高めてしまう。

 テレビショッピングのようなあからさまな物販でなくインフォマーシャルレベルでも、双方向性を活用した販売により、広告以上の宣伝効果を得ることができる可能性がある。実はこのモデルはすでに雑誌などで展開されており、収益性の高い伸びている雑誌は、購読料でも広告費でもなく物販が収益の柱となっている。

 こう考えてみると、いまのGyaOのような制作編集モデルも、YouTubeやニコニコ動画のようなCGM(消費者生成メディア)タイプも、物販を意識したコンテンツとは到底言い難い。どのような動画を集めるのか、どのように視聴者に見せるのか、という構成や流れ自体を見直さないと、物販モデルでも収益化はなかなか厳しいといわざるを得ないだろう。

■本当に儲かる物販とは

 さらに一口に物販といっても、実際に本当に儲かる物販は、私がよく言う「コンプレックス商材」である。すなわち「モテたい」「お金持ちになりたい」「英語がうまくなりたい」「やせたい」「薄毛をカバーしたい」「ニキビをなくしたい」「恋人が欲しい」など、何らかの形でコンプレックスを解消する商品がほとんどなのだ。

 このようなコンプレックス商材を売る場合、そのコンプレックスを持っている人を招くようなコンテンツを作り、それとともに増えるトラブルへのコンプライアンス上の対策などを徹底する必要がある。これまでの動画サイトの管理とは、まったく違うスキルセットが要求されるのである。

 したがって、動画サイトの運営者が無料中心で本気で生き残りたいのであれば、コンプレックス商材の販売でエコノミクスを成り立たせるノウハウを身につけ、コンテンツとともに展開すること。私の仮説はこれにつきる。

 こうした手法を取る最近の一部の雑誌では、よりターゲットを絞ったコンテンツを展開し、コンプレックス商材、例えば化粧品などの販売を雑誌で行ったり、コンビニエンスストアとのコラボレーションによる店頭展開でそれを強化したりすることで、収益化を図っている。

 動画サイトの運営者がここまで割り切れるのかどうかは、私には正直わからないが、もし私が、この質問(http://q.hatena.ne.jp/1247727768)に答えるとしたら、そのような答えになるのではないかと思う。

[2009年9月9日]

-筆者紹介-

勝間 和代(かつま かずよ)

経済評論家、公認会計士

略歴

 1968年東京都生まれ。早稲田大学ファイナンスMBA、慶應義塾大学商学部卒。19歳で会計士補の資格を取得、アーサー・アンダーセン、マッキンゼー、JPモルガン証券を経て2007年に独立。女性コミュニティーサイトの草分けの一つである「ムギ畑」の創始者としても知られる。著書はほかに「無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法」(ディスカヴァー・トゥエンティワン )など。

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