更新:10月6日 10:44ビジネス:最新ニュース
競争相手を生かさず殺さず・任天堂の収益性が高い理由
英フィナンシャル・タイムズ紙は9月15日、08年の任天堂の1人当たりの利益は会社予想に基づくと約160万ドルとなり、これはゴールドマン・サックス(GS)の124万ドルやグーグルの62万6000ドルを上回ると報じた。サブプライムローン問題で苦しむようになる前のGSやグーグルは高収益企業の代名詞であるが、なぜ任天堂はこの2社を大幅に上回る水準を達成しているのだろうか。(勝間和代のITマーケットウォッチ) フィナンシャル・タイムズ紙はその理由を、以下の2つと分析している。 (1)任天堂が「Wii」の製造を始め、極力アウトソーシングで行っていること。従業員は3000人足らずしかいない。 (2)利益の割に1人当たりの人件費が安いこと。ゴールドマン・サックスの2007年の従業員1人あたりの平均給与は66万ドルであったが、任天堂の平均は9万900ドルでしかない。 とはいえ、任天堂の1人当たりの収益性が高い理由を、アウトソーシングと人件費に求めるだけではどうもまだしっくりこないので、なぜ任天堂がそのような高い収益性のビジネスモデルを維持できるのか、もう少し考えてみたい。 ■多額の資金を投入し、試行錯誤 ITは一般に多くの企業が参入しており、技術の世代交代が激しい。そのため、研究開発投資の回収が終わらないうちに次の世代が始まってしまい、あまりもうからないことが多い。したがって、任天堂が高い収益性を維持するためには、圧倒的に差別化できなければならない。 任天堂の特長は、以下にあると考える。 (1)ほとんどの会社が真似できないほどの多額の研究開発費を使える
まず、任天堂の特長は、多額の研究開発費にある。実績ベースで年間370億円、08年は400億円を予定している。例えば、Wiiを操るためのセンサーなど簡単なように見えて開発にとてもお金がかかることがたくさんある。これだけの研究開発費をゲームに使える企業は多くはない。 しかし、研究開発費だけを見ると、「プレイステーション」を作っているソニーは年間900億円をつぎ込んでいて、任天堂の倍である。それでもなぜ、ソニーは任天堂ほどもうからないのか、その鍵はこれからの項目にある。 (2)オーバースペックを避けて、試行錯誤で改善を繰り返している 任天堂とソニーの違いは、任天堂はゲーム機で高いスペックを追求するよりは様々なタイプの製品を投入して、一発勝負を避けるようにしていることだ。市場の反応を見たうえで、試行錯誤を繰り返し、改善を続けていることにある。 任天堂の出したゲーム機はすべてが当たったわけではない。「ニンテンドー64」も「ゲームキューブ」も決してパッとしなかった。古くはファミコンを衛星放送につなげて通信でゲームを配信することを行っていたが、これもうまくはいかなかった。
「ニンテンドーDS」が発売された04年当初も、ニンテンドー64やゲームキューブの苦戦が続き、さほど評判が高いわけではなかった。株価は低迷し、配当利回りだけで3%近くになっていた。当時、私は証券会社で通信やインターネットのアナリストをしていた。隣に座っていた任天堂の分析を担当するゲーム業界のアナリストからDSの実機を見せられたときに、「本当に売れるのだろうか」と疑問に思ったことを今でも鮮明に覚えている。 しかし、任天堂はマーケットと対話をしながら、「DS Lite」を発売するなど改良を加え、ソニーに対して大きくリードしているのは、このコラムを読んでいる方がご存じのとおりである。 (1)と(2)を合わせると、ベンチャーキャピタルモデルということもできるだろう。多額の資金を投入し、試行錯誤を繰り返しながら、うまくいきそうな市場には大量に追加投資をして市場を育てていくのである。 ■インテルと通じる競争戦略 ● 関連リンク● 記事一覧
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