ITプラス ビジネスを制する人のIT総合ニュースサイト

音声ブラウザ専用。こちらよりメインメニューへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより記事見出しへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより見出し一覧へ移動可能です。クリック。

NIKKEI NET

ニュース マネー:株や為替、預貯金、投信の最新情報。持ち株チェックも IR:上場企業の投資家向け情報を即時提供 経営:実務に役立つニュース&連載企画。外注先検索も 住宅:新築・賃貸からリゾートまで住宅情報満載、資料請求可能 生活・グルメ:グルメ情報や、健康ニュースなど生活にかかせない情報満載 教育:学びからキャリアアップまで 就職:学生の就職活動を完全サポート、マイページ利用も可能 求人:日経の転職サイトとWeb上の企業ページから自動的に収集した求人情報を掲載 クルマ:クルマ好き応援サイト C-style:ライフスタイルにこだわりを持つ30代男性向けウェブマガジン 日経WOMAN:働く女性のキャリアとライフスタイルをサポートするコンテンツ満載 日経ワガマガ:アタマとカラダを刺激する、大人のためのコミュニティー

更新:9月1日 11:36ビジネス:最新ニュース

「ウェブ2.0」はなぜ、もうからないのか

 デジタルガレージ、ぴあ、カカクコムの3社が出資する「WEB2.0」という名称の会社が9月17日付で解散、清算することになった。このWEB2.0という会社はその名の通り、ウェブ2.0のコンセプトに合致するコンテンツの提供と、それよる収益化を狙って2005年11月に設立されたが、「収益化することは困難」と解散を決めた。(勝間和代のITマーケットウォッチ)

 WEB2.0は、具体的にはエンタメ系ソーシャルブックマークサイト「PingKing」を立ち上げ、ブックマークの共有サービスやブログネットワークサイトを運営していた。もともと50万ユーザーの獲得を目標としていたが、おそらく目標数には達しなかった模様である。サービスは8月末で停止する。

 では、ユーザー数を集めれば収益化するかというと、「YouTube(ユーチューブ)」は黒字化する前に米グーグルに売られ、日本ではYouTubeを上回るユーザー数を集めている「ニコニコ動画」もまだ黒字になっていない。

ニコニコ動画の収支。ドワンゴIR資料から

■もうからない3つのポイント

 ウェブ2.0があれほどもてはやされながら、一部の企業をのぞいて収益化されていないのはなぜか。現状のウェブ2.0がもうからない理由を3つのポイントに整理してみよう。

(1)他のメディアに比べたときのコンテンツの質の低さ
(2)ビジネスモデルの成熟度の低さ
(3)参入障壁の低さ

 まず、(1)であるが、例えば食べ放題レストランを想像してほしい。1000円で食べ放題だったとしよう。しかし、そこにある具材は、原価の安い、不健康なジャンクフードばかり。確かに、おなかいっぱいにはなるが、味も質ももの足りず、少なくともお金に余裕がある人は、またそこにリピーターとして来ようとは思わないだろう。

 このレストランと同じく、ウェブ2.0のユーザー生成型コンテンツは玉石混淆であり、同じ無料であるテレビにコンテンツの質として明らかに負けている。これは、動画サイトの主力コンテンツがテレビ番組の違法アップロードであることからもわかるだろう。

 他にも、ブログや掲示板など、無料型のコンテンツに集中してアクセスするのは時間が余っている主に若年層であり、ある程度お金に余裕が出てきた社会人層は、残念ながら時間の方が貴重になるため、無料コンテンツにアクセスしたり、あるいは自身がコンテンツの提供者になったりするような余裕はなくなるのである。

 次の(2)であるが、(1)の結果として、広告モデルがなかなか成り立たないことがある。なぜなら、まずコンテンツの質が低いため、お金はないが時間があるようなタイプのユーザーを引きつけがちで、有料コンテンツである雑誌や新聞に比べ、トラフィックの割に広告効果が低いのである。

 また、著作権違反など、コンプライアンス違反のコンテンツも多々あるため、リスクを嫌う大手企業はウェブ2.0のコンテンツに対して、広告を含めたビジネスモデルに着手しづらい。つまり、同人誌に大手の広告が集まらないのと同じことである。

 (3)はさらなる抜本的な問題である。技術的なハードルが低いうえに、次々に新しいテクノロジーが出てくるため、先行者利益があまり効かないのである。パソコン通信時代に高いシェアを誇っていたニフティがインターネットになってあっという間にシェアを失ったように、せっかくウェブ2.0時代を勝ち抜いても、今をときめくミクシィやモバゲーでさえも、わずか1―2年のうちに大きくシェアを失うようなことが起こりうるのである。

■枯れた頃に見えてくる

 ただ、ここでもう一歩、俯瞰して考えてみよう。ウェブ2.0は確かにもうかっていないが、それでは既存メディアの現状はどうなのか。

 実際、既存メディアもウェブ2.0が登場したことで、さまざまな変化があった。例えば情報提供型の雑誌は、文化を創ったと言われる「Hanako」ですら、「食べログ」などウェブ2.0的なコンテンツの出現で売り上げ部数を大幅に落としている。

 一方、雑誌のなかでも汎用的な情報ではなく、ユーザー自身の新しいライフスタイルを提唱するような雑誌、例えば「DIME」や「PS」などは部数を伸ばしている。したがって、ユーザーもウェブ2.0の出現により、お金を支払っていいコンテンツとそうでないコンテンツの取捨選択を行っているのである。

 ウェブ2.0の出現に合わせて、既存コンテンツ側もさまざまな変化を遂げている。例えば、テレビコマーシャルや雑誌広告で、検索エンジンに入れてほしいキーワードを提示して詳しい情報提供をウェブに誘導するマーケティングは当たり前になってきた。番組や雑誌連動型のブログも多い。

 そして、ウェブ1.0、すなわちインターネットが出始めた頃の議論を思い出してほしい。インターネットなど一過性の技術であり、既存メディアにはかなわない、もうからない、という議論があったと思う。ところが、実際にはヤフーが生まれ、グーグルが生まれ、アマゾンが生まれた。日本でも、この3社はとてもよく、もうかっている。

 また、ビジネス形態でいくと、オンライン証券会社がもっとももうかったビジネスだろう。しかし、そういったものは、多数の試行錯誤とさまざまな実験のなかから、改めて生き残りが出てくるのである。

 今後、ウェブ2.0がウェブ3.0へとバージョンアップする頃に、ウェブ2.0における本格的なビジネスモデルや、勝ち組が決まってくるのかもしれない。現在、ウェブ2.0で収益化できているのはグーグルの検索連動型広告「アドワーズ」やヤフーの「オーバーチュア」くらいである。ウェブ2.0の収益化における弱点である「参入障壁の低さ」は、裏を返せば多数の参加者が新しい実験を始められるということでもある。

 そして、そのとても早い、PDCAサイクルのなかで、私たちが想像もつかないような形のビジネスが生まれてくるだろう。また、既存ビジネスもウェブ2.0とうまく融合し、そうやってウェブ2.0のビジネスが枯れてきた頃にきっと、「ウェブ3.0はなぜもうからないのか」などという記事を私が書いているのかもしれない。

[2008年9月1日]

-筆者紹介-

勝間 和代(かつま かずよ)

経済評論家、公認会計士

略歴

 1968年東京都生まれ。早稲田大学ファイナンスMBA、慶應義塾大学商学部卒。19歳で会計士補の資格を取得、アーサー・アンダーセン、マッキンゼー、JPモルガン証券を経て2007年に独立。女性コミュニティーサイトの草分けの一つである「ムギ畑」の創始者としても知られる。著書はほかに「無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法」(ディスカヴァー・トゥエンティワン )など。

● 記事一覧