|
更新:8月14日 11:30ビジネス:最新ニュース
日本のIT業界は「ガラパゴス」を脱せるか・専門家はこう見た’08夏(4)

日本のIT業界は「ガラパゴス」を脱することができるのか〔共同〕 |
IT PLUS恒例の夏の識者アンケート第4回は「日本のIT業界は『ガラパゴス』を脱せるか」がテーマ。連載コラムニストやIT分野を中心とする専門家らの意見を集めた。米マイクロソフトによるヤフー買収劇が象徴するように、世界のIT企業はグローバル市場のダイナミズムのなかで熾烈な競争を繰り広げている。そのなかで存在感が薄れる一方の日本企業は再び世界のひのき舞台に立てるのか。
ガラパゴス諸島では、外界から遮断された環境で生物が独自の進化を遂げた。これになぞらえて、国内市場に安住して世界に通じる製品やサービスを生み出せなくなった日本のIT業界を「ガラパゴス化」と呼び懸念する声が2007年ごろから広がりだした。ケータイ先進国といわれながら海外市場からの撤退を余儀なくされた携帯端末業界や、国内企業頼みのシステム開発業界などがその例で、最近はIT業界内でも「ガラパゴス化」問題が議論されるようになっている。
【質問4】 海の向こうではマイクロソフトによるヤフー買収提案などネット業界が生き残りをかけた再編劇を展開しています。一方、日本のIT業界は海外進出もままならず、「ガラパゴス化」が取りざたされています。日本のIT業界はどうすればガラパゴス状態を脱し、世界に通じるサービスやそれを実現する人材を育てられるでしょうか。高等教育や企業の人材育成のあり方、産業・ベンチャー支援政策のあり方など、ご自身の視点でお書きください。(識者名のあいうえお順で掲載、敬称略)
■これまでの質問 ・【質問1】 ネット時代の著作権、権利者保護か流通優先か ・【質問2】 「iPhone」上陸で日本のモバイルは変わるか ・【質問3】 ネット規制や閲覧制限は必要か
■関連記事 ・「ガラパゴス諸島」化する情報サービス業界の課題とは・JISA浜口会長に聞く ・日本のNGNはデファクト化を狙え・次世代ネットワーク世界地図(2) ・「iPhone旋風」で日本のケータイ文化はもう一度面白くなる ・サッカーに学ぶ情報通信の国際戦略
 | インテック・ネットコア代表取締役社長荒野 高志
若手と外国人の登用を まさに質問文の中に答えがありますね。鍵は人材なのだと思います。若手と外国人をもっと登用し、実践の中で育てていく10年単位の構想をもつしかないです。日本の多くのIT企業ではグローバル化というと、オフショア開発だの日本企業の海外進出支援のための支店設置というようなニュアンスがありますが、世界一流企業のグローバル化とは種々業務のグローバルな最適配置とそのための世界人材の登用を意味します。 後者は世界どこで採用しようと優秀で実績をあげれば海外支店長ではなく、本社幹部になれるということです。そうなると社内の標準言語が英語ということにもなります。こういうトランジションにチャレンジする覚悟を日本IT企業がもてるか、ということにも行きつきます。 |
 | ジャーナリスト石川 温
ベンチャーの海外進出支援を 日本企業と韓国企業を取材していて感じるのが、日本企業はやはり「まずは日本で成功する」というところからスタートしている。一方の韓国企業は、国内の人口も多くないことから、「いかに海外で成功するか」から発想が始まる。 日本は、市場規模が大きいだけにどうしても、「とりあえず国内から」という考えになりがちだ。「WMC」や「CTIA」などの展示会を見ていると「韓国パビリオン」状態といったものを多く見かけ、ベンチャー企業が積極的に自社の技術を売り込んでいる。「日本パビリオン」などは、影も形もない。政府の外郭団体などが、ベンチャーを海外に進出できるような支援をもっと思うべきだと思う。 |
 | 情報セキュリティ大学院大学教授 兼 横浜市CIO補佐監内田 勝也
ガラパゴス化からの脱出は無理 ガラパゴス化からの脱出は無理。IT業界だけで解決する問題でなく、IT業界、委託先を含めて解決しなければならないが、本当に解決しようという気がない。 高度な技術者を育成する考え方がないため、中小IT業界が更に疲弊する傾向が見られる。資格制度が価格引き下げの道具と化している。 「国内企業の業務を理解できる海外企業なんていないし、日本人の心を理解できるはずがない」と胡坐をかいていると、その考えを大幅に覆される時代がすぐそこに来ているように思われる。 |
 | デジタルメディア コンサルタント江口 靖二
積極的に動くことをよしとすべし ガラパゴスを脱するべきかの議論はあるにせよ、やはり日本においては積極的に動くことがよしとはされません。これは何世代にもわたって変えていかない限り、目先の英語教育がどうしたとかプレゼンテーション能力というだけでは解決できない問題です。あるいは日本人の遺伝子には要求してはいけない事項なのでしょうか。 |
 | 中央大学大学院戦略経営研究科助教折田 明子
英語アレルギーを解消 大変基本的なことですけれど、英語アレルギーの解消が、案外近道ではないかと思っています。 知人に米の人脈SNS「LinkedIn」を勧めたとき、英語で書くことに最初は抵抗感を持っていたようなのですが、経歴程度なら書き込むことができるとわかってからは、案外活用しているようです。 インターネットが利用され始めた初期の頃に近いのですが、全世界的に使われているサービスを体感し、インターネットが日本固有のネットワークではなく、世界中を結ぶコミュニケーションプラットフォームであることを、再び自覚する必要があるのではないかと思います。 |
 | 経済評論家、公認会計士勝間 和代
アントレプレナーの支援を 日本語の壁がある限り、ガラパゴスでしょう。また、新しいことを行うアントレプレナーを応援する姿勢が社会全体にも欠けている。リスクを取った人が報われるしくみをつくらないかぎり、ITはガラパゴスが続くと思います。 |
 | 富士通経営執行役 米州副総代表加藤 幹之
もっと自由化、市場競争を 「日本がガラパゴス」かどうかは別にして、日本がこの10年以上、国際的に通用するビジネスや製品を多く出せなかったのは事実だろう。この理由として、日本市場が適度に大きく、そこでパイを分け合えば、何とか生き延びられるという現実があったのではないか。しかし、グローバル化ができなければいずれは外来種に駆逐される。まずこの危機意識が重要だ。 若者はもっと海外に出て、自分を試してみるべきだ。お隣りの中国や韓国の青年たちはもっと世界を見ているように見える。国を挙げて、もっとグローバル化の流れを作ることが重要であり、それには日本自身がグローバル化すること、つまりもっと自由化、市場競争の促進が必要なのだと思う。 |
 | 早稲田大学大学院国際情報通信研究科客員助教授境 真良
海外市場でマネタイズできない経営能力に問題あり 日本の市場はインフラ事情も消費者のセンスも世界有数の水準で、ガラパゴス化は当然の結果だろう。問題はガラパゴス化そのものではなく、その成果を海外市場でマネタイズできない経営能力にある。その改善は言語や性向の修正を含む長期戦略でしか担えまい。むしろ、日本という巨大な開発実験市場から生まれたスター開発者、商品、技術が企業や国家の枠を超えて活躍することを奨励するところから始めてはどうだろうか。 |
 | 芸団協実演家著作隣接権センター(CPRA)運営委員椎名 和夫
「ガラパゴス」に失礼 「ガラパゴス」には行ったことがありませんが、きっといいところだと思います。こういう言い方を聞くと、他国に劣後するという強迫観念をただあおるだけのとてもさもしい言い方に聞こえて、かつての「エコノミックアニマル」という言葉をつい思い出したりしますが、「ガラパゴス」に失礼だと思います。 |
 | 日興アントファクトリー海外投資グループ・プリンシパル肖 宇生
成功体験を捨てよ IT業界といっても範囲が広いと思うが、大きく「メーカー・SI会社」と「ネット企業」の2つに分けられると思う。メーカーとSI会社はやはりいままでの商慣習や産業構造から脱却しないと世界の企業と戦えない。いままでの成功体験を捨てることに等しいが、それをやらないと後がないということは覚悟してほしい。ユーザー企業が海外ベンダーにいつ切り替えないともいえない状況にある。 ネット企業については、やはり必要なのはベンチャー支援だ。日本にも素晴らしいベンチャー企業があるが、それをバックアップするVCの力量や政府の政策は明らかに不足している。ベンチャー企業を起こして、成功する夢を日本の若者に与えられないでいる。ユーザー側も、大企業中心の視点から脱却しないといけない。 巨大な市場があるのに全くベンチャー企業が育たない現象の背景はそこにある。ITだけではないが、若者にジャパン・ドリームを感じてもらう仕組みを作らないと衰退の一途を辿ることになるだろう。 |
 | ゲームジャーナリスト新 清士
早期に教育システムの改革を 日本の根本的な問題は、この分野の人材不足にある。ITスキルを持った人材の育成システム構築の失敗が大きく影響を与えている。そもそも第2次産業が強かったために、ハード主体の政策が推し進められてきた。まったく異質なタイプの人材やマネジメントを必要とする「知識産業」の育成のための具体的な戦略は、ほとんどうまくいっていない。日本の高度成長期の成功体験が大きく足を引っ張っている。 教育制度は産業の実情にあっていないにも関わらず、具体的な変化が起きていない。例えば、ゲームなどのコンピューター教育では、インターネットを通じた個人レベルの「Eラーニング」の有効性が、すでに欧米諸国で実証されている。集団で一つの教室にまとめて教育することは、この分野では必ずしも成果を上げない。それらを正式な大学の教育課程とすることには、文部科学省からのすさまじい抵抗がある。しかし、教育システムの改革にはすぐに取り組まないといけない。 |
■>>次ページ 趙章恩氏、本荘修二氏、湯川抗氏
<< 前のページへ
1
[ 2 ]
次のページへ >>
● 記事一覧
>> 過去記事一覧


|